屋台で食事をしました
その後も街を散策して少し疲れた頃……
「今日は屋台で食事をしませんか? お疲れでしたらホテルに帰ってゆっくり食事を、」
え? 屋台?!
「はいっ、屋台の食事がいいです」
ジェイ様は嬉しそうに笑って「そうしましょう」と言ってくれた。
香辛料たっぷりの魚に、少し味の濃い焦げ目がついたお肉、油で揚げてあるポテトなど普段では食べられない物を堪能した。少し辛かったり味が濃いものがあったけれど屋台で食べる食事は特別だった。
「お口に合いましたか?」
「初めて食べるものばかりでしたが、良いですね。美味しかったです」
「満足してもらえて良かったです。明日の出発は早いのでそろそろホテルに戻りましょうか? お疲れのところ連れ回してしまいまして申し訳ありません」
「気を遣っていただいてありがとうございます。楽しかったです」
私が屋台を興味深く見ていたことがバレているようでした。屋台で食事をするとなると護衛の方も大変だった事でしょう……
「いいえ。とんでもありません。喜んで貰えて良かったです。それに私も楽しく過ごすことが出来ました。後はゆっくり休んでください」
……ジェイ様は本当に優しい方だわ。今日も楽しかった……屋台での食事も買い物も!
部屋に戻ってリリとおしゃべりをして眠りについた。
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『わぁ。露店ですか?』
ここは首都からも観光客からも人気のエリアで女性達が活躍する街でもある。港から首都へ行くまでに通る町で、いつもはもう一つ先の街で宿泊をするが、ルビナ嬢が好きそうだと思いこの町に宿を取った。
『わぁ、この髪飾りも可愛いです』
喜んでくれているな。種類も豊富で目移りしているのだろう。購入を迷っているようにも思えた。
『この辺りはビーズのアクセサリーを作っている女性が多くいるのですよ。迷っているのなら購入をお勧めしますよ』
『そうなんですね! 友達のお土産に購入したいと思います』
友達への土産か……それならルビナ嬢が自ら買った方がいいだろう。ルビナ嬢に支払いをさせたくないが、高い買い物ではないし私が友人の分を支払おうとすると拒否されそうだ。ここは黙っておこう。
髪飾りを選んだようでご機嫌な様子だった。ビーズ産業が進んでいるから土産にはちょうどいいと思う。
せっかくだからこの街の雰囲気を味わってもらいたいなぁ。夕暮れ間近だった。
『今日は屋台で食事をしませんか? お疲れでしたらホテルに帰ってゆっくり食事を、』
『はいっ、屋台の食事がいいです』
貴族の令嬢は屋台での食事を躊躇するかと思ったんだけど、ルビナ嬢は喜んでくれた。
学生時代は屋台で何度も食べたことがあった。美味い店もあればそうではない店ももちろんある。それも楽しみの一つだった。
買ったものをまずは護衛が味見をしていた。ルビナ嬢の身に何かあっては困るし、露天での食事は外れもある。
香辛料たっぷりの魚に、少し味の濃い焦げ目がついた肉、油で揚げてあるポテトなど。少し辛かったり味付けが濃いものもある。
ルビナ嬢は喉が渇いていたのか、侍従が買ってきた飲み物をこくこくと飲んでいた。首都の屋台では甘いものも売っていて令嬢達に人気だったよな? 首都に着いたらそこへも行こう。
それにしても大きな男達が相変わらず多いな……ルビナ嬢は驚いていた。男が飾るものは筋肉で良いという様な国だからな。何かあったらすぐに脱ぎたがる……力比べだ! と言って上半身裸で力比べをしていたな……
服を脱がないと破けるから。令嬢達もきゃーきゃーと嬉しそうにその様子を見ていた。流石にそれは学生のノリの様なものだったけれど、あの時は若かったなぁ。
いよいよ明日は首都へと到着する。レオナルドの結婚式には学生時代の友人がたくさん来るだろう。ルビナ嬢は大丈夫だろうか……もうあいつらも大人なんだ。下手なことはしないだろう。
ホテルで一泊して首都へと向かう。天候に恵まれていたから道もよく思っていたより早く首都へと着いた。留学時代の友人が“家に滞在しろよ”と言ってくれたが、他国の貴族の家なんてルビナ嬢を疲れさせるだけだし付き合いも面倒だ。
ホテルへの滞在としたがレオナルドが準備をしてくれた様だ。首都の中でも一、二を争う高級ホテルだった。教会からもパーティー会場となるレオナルド達の邸からも近い。立地条件はバッチリだった。
結婚式は二日後だからそれまではのんびりと過ごそう。




