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初めてのデート


「お迎えに参りました」


 エントランスで爽やかに挨拶をするジェイ様。ブラウンを主体としていて細身なシルエットがスタイルをよく見せ、ハットには見たことのない生地を使っている。



「ジェイ様、ルビナのことよろしくお願いしますね。成人したとはいえまだ学生の身ですのであまり遅くならない様に帰してくださいませね」


 お母様がジェイ様に挨拶をしていた。


「えぇ。それはお約束しますよ。ルビナ嬢お許しも出ましたから行きましょうか」


 リリもついてきてくれる事になった。ジェイ様にも侍従が付いてきていて、護衛も兼ねているらしい。


「今日は程よい太陽が心地良いですね」


 昨日までは空が曇っていたので久しぶりの晴れ間でした。


「はい、そうですね」


 ちょっと緊張しているようで気の利いた返事は返せません。


「今日のワンピースもとてもお似合いです。ルビナ嬢はグリーンが好きだと聞きましたが、爽やかで良いですね。こういうテイストがお好きなんですね」


「軽い素材が好きです。重たいものは苦手です。動きにくくなってしまうので」


 貴族の令嬢は重くても重くない顔をしてドレスを着なくてはならないのだけど、それだとダンスなんて到底無理です。あの重たいドレスを着こなせる高位貴族の令嬢は本当に凄いと思います。


「今日はお連れしたい場所があったので、歩きやすそうな靴でとお願いしたんです」

 

 ジェイ様にお誘いいただいて返事を返した時に歩きやすい靴でお願いします。と言われたので、ワンピースにブーツと言うスタイルになった。


「はい。どちらへ連れて行ってくださるのですか?」



「植物園です。王都の外れに新たに植物園がオープンするのです。珍しい花が咲いていたり王都ではお目にかかれない鳥などもいますので楽しんでいただけると思います」


 ……植物園!


「それは楽しみです」



 植物園に着くと人の影はなかった。どうして?


「さぁ、行きましょうか?」


 植物園のスタッフ? 数人にジェイ様が手を上げると、スッと皆が頭を下げた。



「あ、あの……、」


「どうしました? お気に召さなかったとか?」


「いえ、そうではなく……どうして人が居ないのかと思って」


 王都の外れとはいえ、鄙びた場所ではなく馬車があれば問題ない立地だった。



「ここはまだオープン前なんですよ。オープンしてしまうと沢山の人が訪れると思うので、静かな内に来たいと思いました」


 ……オープン前? と言う事は?



「……言っていませんでしたね。ここのオーナーも務めさせて貰っています。市民に安らぎの場を作りたいと思いまして実家の侯爵家にも援助してもらいました。留学先で知り合った庭師がとても物知りで皆んなに見てもらえる場所があればと言う話から、植物園を作ろうと思いまして、まだ途中のところはありますが、ほぼ完成しています。至らない点もあるとは思いますが、見所はありますよ」



「ジェイ様は凄いです。お邪魔してもよろしいのですか?」


 


「この植物園は無料で開放します。しかしそうしますと、ここで働いてくれている人たちの給料が出なくなりますので、レストランや簡単に食事できるスペースを設けてあります。レストランは価格が高めですが特別感を出して貴族向けに。簡単に食事をできるところは一般向けにと分けてあります。ここで育てた花を株分けして販売、既に切花としても出荷しています。貴族の邸宅への注文は規模が大きいのでそこでも儲けが出ます。そこに川が流れていて水には困りませんので、簡単に水撒きできるようにポンプがあるんですよ」


 ポンプを使って水を汲み上げている人がいた。


「川から水を汲み上げているんですね、凄いです」



 それから植物園を見て回った。スタッフさんが仕事をしている様子も見られた。裏側を見ているようで少しワクワクしました。



「この先はおススメです。素晴らしいですよ」


 この香りは!



「わぁ……バラのトンネル! なんて素敵なんでしょう」


「バラは好きだけど特別感があると言いましたね?」


「はい。良い香りですね」


 キラキラした目でトンネルを嬉しそうに潜るルビナ。




「このバラは香りが良いので抽出して香水や石鹸、花びらを乾燥させると色んなものに使えます。このバラは品種改良した特別なバラです」


 白とピンクの花びらがフリルのようで可愛い!


「人気が出そうですね。わぁ、噴水まで」


 バラのトンネルを抜けると噴水広場に出る。


 噴水には花が浮かべてある。茎が折れてしまったものや元気が無くなった花は切り落とし花の部分だけを噴水に浮かべてある。


 カラフルな花がぷかぷかと浮く感じは見た目にも美しい。



「バラは特別感があると言っていましたね? 本日は初めの“デート”でしたので特別感を味わって頂きたくて」


「……ハイ」


 “デート”と言われて、急に恥ずかしくなるルビナ。



「今日の装いはこの植物園デートにピッタリのワンピースですね。バラ園のアーチを潜るルビナ嬢はとても幻想的で美しいです」


 バラを手折り棘を処理して一輪髪に差してくれた。



「このバラをプレゼントしたのはルビナ嬢が初めてです。まだここにしか咲いていませんから」




 わぁ……特別って私が思っていたよりもずっと特別でした。

 


 

 

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