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さようならもう会う事はありません


「さようならもう会うことはありません」



 ……ディートの顔を見ると怖気付くかと思っていたけどよくよく観察? すると、子供っぽくて癇癪持ちだった。よくこの性格を隠しておけたものだと感心しますね。


 


「婚約解消なんてしたら、たかが子爵家の娘なんてもう結婚できないぞ!」


「はい。そうですね」



「説教くさい面倒な女は嫌われるからな!」


「はい。肝に銘じておきます」



「おまえを相手にしようとする男がいたら、」


「はい、分かりました。話にならないので帰りますね」


「おまえは、騙されているんだっ、」




「お元気で」



 ……最後にカーテシーをして扉を閉じた。

 


 貴族としての最後のお別れ。


 ディートは平民になる。


 もう会うことはない。


 言うことも、ない。



 ******



「さぁ帰りましょう。リリこれ!」


 鉄の扇子をリリに返した。


「使いませんでしたね……残念です」


 そんなに残念そうな顔をして……使うわけないでしょうに。リリは私がディートをこれで殴る所を見たかったのかしら……


「ありがとう、これの(鉄の扇子)おかげで冷静になれたわ」



「ルーク様のおかげですね」


 残念そうな顔しないで……



「ジェイ様、お見苦しいところをお見せしました」




 言いたいことは言ったし話にはならなかったけど心の底からもういい。と思った。


 あんな人でも婚約が決まった時はディートで良かったなんて思っていたのに……なんでこんな事になったんだろう……



 


 


「いいえ、あ……! 先に戻っていて下さい。子爵に挨拶をしてきます」


 


「それなら私も、」


「いいえ、すぐに戻ってきます」


 ……現時点で家同士の交流がなくなっているんだもの。行かない方が良いわね。




 一人では来られなかったと思うけど、冷静に考えるとジェイ様にまたご迷惑をかけました。


 ディートと二度と会えなくなるというのは何となく心残りがあったのは事実。数年間婚約をしていたし幼い頃からお互い知っていたわけだし……


 元々の性格はわからないけれど、優しかった時代もある。学園生活は楽しそうだったのに、パトリシアさんだけのせいではないんじゃないかしら。と思った。




 ******



 ~ジェイ視点~



 扉を開けると意気消沈した男が床に座り込んでいた。




「なぁ、おまえもしかしてルビナ嬢のことが好きだったのか?」


「侍従が何を偉そうに……」


 モリソン子爵の息子が力なく言った。耳を傾けないと聞こえない程の声。


「侍従ではないと言ったら?」



 子爵の息子はこちらを振り返り顔を見てきた。


「どこかで見た顔だ」



「おまえがルビナ嬢を置いて行った店の店主で噂の侯爵家の子息と言えば分かるか?」

     




「……学園祭の時にもルビナと一緒に」


「覚えていたんだな、それは私で間違いない」


「……ダンスを踊ったり舞台に行った、それは僕がするはずだったんだ。ルビナの初めては全部僕が、」


「おまえ()()伝わってないぞ。本当に好きだったのか?」


 ……好きな子に見せる態度ではないだろう。呆れた、バカにも程がある。

 


「嫉妬していると思ったんだ……クラスの令息の婚約者も皆嫉妬してパトリシアから離れて行った。ルビナが他の令嬢のように一言でも言ってくれれば良かったんだ。ランチだって一緒に食べたいと言ってくれれば良かったんだ、そうしたら僕は、」


()()()()()ばかりで話にならないな」


 するとモリソン子息は睨んできた。



「ルビナは僕が守ってあげないと……気弱で大人しくて、僕の事だけ見ていれば、」


「さっきのルビナ嬢を見てもそう思えるか? おまえが思っているよりも彼女はしっかりしている。守るべき相手を攻撃してどうするんだ」



「ルビナが可愛いのは知っていた。だからクラスの奴らに会わせたくなくて……」


「本当にバカだな、そんなルビナ嬢に魅力なんてない。おまえが意見を言えないように抑えていたんだろう。こうあるべきだとか言いながら感謝の気持ちを伝える事もなく、自分が偉いと錯覚していたんだろう。自業自得で同情する気になれん、彼女に言われた事を理解するまでにどれくらいかかるか分からんが、考えろ」


 三年後か五年後か十年後か……人生を振り返るときに己を悔いるといい。



「ルビナ……」



「その名を気安く呼ぶな。おまえがこれ以上粗相すると妹に迷惑が掛かる。おまえの妹セシル嬢は強いな。こんな事があったのに後継として子爵家を継ぐと言う。おまえのせいで子爵家の交流関係は変わった。これから先辛い事もあるだろうがそれも厭わないと言う意志が伝わる」


「……セシルなんかに何が出来るんだ、まだ子供だ。家を継ぐという重大さに気がついてない、また僕が、」


 そう言い項垂れた。




「気がつかなかったおまえが言うのもおかしな話だが、セシル嬢は若い分吸収する力もある。セシル嬢の足を引っ張るな! 子爵家を取り潰すことなんて簡単に出来るんだからな。領地へ帰ったからと言って監視の目がないと思うな」


 長期休暇になるとルビナ嬢も領地に行くと聞いている。年に何度か領地に戻るタイミングを把握しているだろう。諦めが悪く妄想癖まである男だ何かあっては困る。

 


「おまえの負けだ」



 とだけ言ってこの場を去った。突っかかってくるようなら制裁を……と思っていたのに何もなかった。ようやく自分が置かれた立場に気がついたようだ。


 

 

 







 


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