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モリソン子爵(ディート父)



「……ハドソン卿とお会いするのは初めてですが、どの様なご用件でしょうか?」


 モリソン子爵はパニックだ。侯爵家の子息が何故私に? と。

 会ったことはないが、ディートがルビナ嬢を置き去りにした店のオーナーである事しかわからない。



「初めまして。私はジェイ・ハドソンと申します。突然手紙を送ってこのように時間を割いていただき心より感謝いたします」


 ここは王都の街にあるホテルの一室だった。主に会合で使われる応接室のような部屋でジェイが用意した部屋だった。ジェイはこの部屋を仕事で活用していた。


「いいえ。とんでもない、お会いできて光栄です……」


 何故呼ばれたか未だにわからないモリソン子爵。



「私はローゼン子爵と懇意にさせていただいております。そこでルビナ嬢ともよく話をするのですよ」



 あぁ。ルビナ嬢が夜会でダンスをしていた相手はハドソン卿だったのか! 兄のルーク殿以外でそんな姿を見たのは初めてだった。


「そうでしたか。我が家はローゼン子爵に顔向け出来る立場ではありませんので、懇意にされていると言う事を初めて知りました」



「えぇ、ローゼン子爵と懇意にさせていただくきっかけを作ってくれたのは子爵のご子息のおかげです」


「息子の?」


「えぇ。ルビナ嬢を置き去りにした店は私がオーナーをしている店で、ルビナ嬢を送って行くようにと指示したのは私ですから、その時にルビナ嬢と知り合いました。店の前で姿勢良く健気に待っている姿に心を打たれてしまいましたよ」


 長い足を組みにこりと微笑むジェイ。それを聞いてたらりと汗が流れるモリソン子爵。


「その節はうちの息子が失礼しました。ご迷惑をおかけいたしました事をお詫び申し上げます」


 抗議なのだろうか……ルビナ嬢に何もなくて本当によかった。



「? 私に詫びられても困りますよ。子爵はローゼン子爵と話をしたのでしょう? それで話がついたと思っていませんか?」


「それは……どういった? 申し訳ありません、見当が付きません」



「ルビナ嬢は子爵の息子さんとの婚約を解消する事を願った。それに()()()()偽りはないのですが、学園での付き纏いで、子爵の息子さんが学園を去り領地に篭る事になったという事を聞いて彼女は胸を痛めているのです。婚約解消後は家同士の話し合いで、彼女は後日談として聞かされるだけでした。件のスミス伯爵()()()の事、そして今回の事もそうです」


「……それに関してはなんとお答えしていいものか分かりかねます」


 ……うちの息子は少し考え方が人と違うようで、反省したかと思いきやまた騒ぎを起こしてしまった。息子をローゼン子爵に会わせる事など出来なかった。反省しているのなら土下座の一つでもさせてやりたかったが、そんなパフォーマンスをして許してもらえるわけではない。



「えぇ、おっしゃる通りです。聞くところによるとモリソン子爵家の後継は娘さんになったと聞きました。モリソン子爵も夫人も心を痛めている事でしょう。娘さんも急な事で驚いた事でしょう。心中お察し申し上げます」


「それはうちの愚息のせいで娘も納得してくれましたから……」


「それでは本題に入らせていただきます」

 

 ……ようやく本題か。普通に話し込んでしまってつい忘れそうになっていた!


「はい、何でしょうか」


「息子さんが領地に行く前にルビナ嬢と話す時間が欲しいのです」


「え! いや……それはちょっと……うちの愚息は親の私でも理解に苦しむような事を言い出すような問題児でして、これ以上ルビナ嬢との関わりは持たない方がいいと思います……もう何かあって責任を取るとなると私が当主を降りるしか、娘に迷惑が……」



 無理だ、無理だ、無理なんですよ! うちの息子は言葉が通じないんですよ……モリソン家の恥をこれ以上晒すわけにはいけないんですよ……



「はい。それは話に聞いていました。しかしルビナ嬢が望んでいるのですから、多少の事は目を瞑りますよ。ローゼン子爵は同席しませんので、私が代わりにルビナ嬢に付いています。現在は自宅で謹慎中だと聞きましたのでモリソン子爵の屋敷へ伺いたいと思います」


「いや、うちの息子はこう言っちゃなんですが、精神の病かと思うほど思い込みが激しかったり、考えが斜め上と言うか、」


 侯爵家の方がいるのに何か粗相でもしたら最悪お家取り潰しになりかねん! それくらいうちの愚息はバカなんです!


 

「まぁそう言わずに、どうかよろしくお願いします」


 と言い頭を下げるハドソン卿……


「おやめくださいっ! どうか頭をあげて下さい」



 何でこう簡単に他人のために頭を下げられるのか……ルビナ嬢との関係が気になるが、聞いてはいけない。私には関係のない事……そしてルビナ嬢には幸せになって貰いたい。


「いいと仰るまで頭を上げるつもりはありません」



 ディートに失礼のないようにしろ。と言うしかない。



  ……降参だ。



「……分かりました。十日後に領地へ出発しますので、それまでにご連絡をください」



「ありがとうございます。それでは改めてご連絡を致します」



 ディートよ。これ以上恥を晒してくれるなよ……

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