友達の話?
「それで、その友達の話を聞かせてくれるのかな?」
……友だちの話としてアドバイスをもらえたら良いなと思い話し出した。
「友達には婚約者がいたんですけど、色々あって……えっと、性格の不一致? とかで婚約の解消をしたようなんです」
「そうですか。それは悩ましい話ですね」
相槌を打つジェイ。
「婚約の解消を申し出たのは友達の方(家)からで、婚約は家同士の約束だから家の人に相談してそれを分かってくれたようで、友達のお父様が元婚約者の家に話をしてくれたようなんです」
「家族の同意なしに婚約の解消は出来ませんからルビナ嬢の友達は家族に恵まれていたんですね」
「はいっ。そう思います」
嬉しそうに答えるルビナ。家族を誉められた様に感じた様だ。
「それは良かったですね。それで?」
「えっと……それでその友達が、婚約を解消してから久しぶりに元婚約者の令息に声をかけられたようで、えっと……なんか? 婚約の解消を無かったことにしてやる。とか言われたらしくて」
「……へぇ。それはおかしな話だね。どっちから婚約解消をしたのかな?」
「はい、婚約を解消したのはこっちの方なのにその令息はなぜか自分から解消したように言うんですよ」
「その令息はなぜか……? 勘違い? したのかな、それで?」
ジェイの顔が曇る。言葉を濁している様だ。
「話しかけられて人気のないところに連れて行かれて話をしていると、なんだか子息の様子がおかしかったので、怖くて逃げようとしたらしいのですが、口を塞がれて、」
「はぁっ! 何を何で塞がれたって?」
「……? 手で口を塞がれました」
「……そっか、手か……よく逃げてこられたね、二人きりになるのは良くないことだとその友達に教えてあげた方が良いね」
「急な事で驚いたみたいです。逃げてこられたのは、人に親指をひねる様に力を入れるといいと習ったようで実践したようです。でも友達は足が遅くて追いつかれそうになったんです。もうすぐで追いつかれそうだと思った時に、騎士科の人がその令息の足を引っ掛けて転ばせてくれたので、その間に馬車に乗って帰ったようです」
「……もっと身を護る方法を伝授しなきゃ、力を入れずとも逃げる方法はある事にはあるんだが……ちょっと令嬢に教えるにはなぁ……」
腕を組みぶつぶつと何かを言っているジェイ様。
「ジェイ様? どうかしましたか?」
「あ、あぁ。すみません、つい……どうぞ続きをお願いします」
「その後に令息のご家族にこの事が報告されたようなんです」
「それは、目撃者がいたとかそう言う感じですか? 騎士科と言うワードが出たところによるとそれは学園内での事ですか?」
「はい、学園祭の帰りでの事でした」
「そうか……学園祭の時は人が多いし、いつもと違いお祭り気分になるから、隙が出てしまったのかもしれませんね」
「そうかもしれません。友達と別れたばかりで馬車が見えて安心していたのかもしれません」
「これからは学園内でも気をつけた方が良いね。それで?」
「あ、それでその令息が少し? 常識から逸脱しているようで廃嫡になって領地に行くらしいのです。それを聞いて私……」
そんな事は望んで無かった……だから……
「なるほど……それでルビナ嬢はその友人の為に胸を痛めているという事ですね?」
「廃嫡なんて、望んで無かったんです。確かに傷つけられたりもしましたがちゃんと話し合いもしないままこんな気持ちでもう会う事もないと思ったら、なんだか……」
二度と会うことはない。話し合いになんてならないけれど、このまま終わっていいのか……
「ふむ、話は分かりました。それでは直接会って話をしてみたらどうですか?」
「話し合いになんてならなくて……いつも言い負かされてしまいますし」
「言う時はちゃんと言わないと、誤解されてしまいますよ。発言を控えるのを美徳とする人も中にはいますが、言わない事には伝わりませんからね」
……パトリシアさんの時と同じ言葉だわ。あの時は反論しない方が良かったけれど、今回は違うという事。
「……でもどうやって会えばいいか分かりません。家族は私に事が終わってから話そうと思っていたらしくて……あっ!」
友だちの話をしていたはずだったのに……私ってば!




