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ルビナの思い


 今日も夜会に来ていた。家族で招待されたから行くしかない。デビューした年には家族での招待が多くなる。

 家族でと言われたらお兄様は私のエスコートをしてくれる。シンシアさんはデビューの年はそういうものだから気にしないで。と言ってくれた。



「ルビナは知らないだろうが、釣書を送ってきた家の子息が何人かいる。気をつけるように」


 そうなんだ……結婚は親の了承がなくては出来ないし、家同士の決め事とか、釣り合いとか色々あるので、勝手に決める事は出来ません。釣書を送って来た時点で相手の親は了承しているという事にはなるのでしょうけど。気をつけるといっても、挨拶されたら返さなきゃ失礼だからそれくらいはいいよね。



「分かりました、気をつけます」



 知らない人について行かないこと。

 知らない人から渡された飲み物は口にしないこと。

 知らない人と二人きりにならないこと。



 目立ちたくないので大人しくしていよう。とルビナは思った。今回もお兄様と挨拶回りをしていると、金髪の男性を見かけた。


「あっ!」



 ルビナが思わず声を上げるとルビナの兄ルークも視線の先に目をやる。ルークの友人と話をしている時だったので、その友人も金髪の男性に目を遣る。


「ルビナ嬢彼とは知り合い? ヘルム伯爵の子息だよ」


 お兄様の友人は金髪の男性を知っているようでした。


「知り合いという訳ではありませんが学園が同じです」



 ディートから逃げた時に助けてくれたのはあの人だった。なんとかしてお礼を言わなくてはいけませんね。

 ヘルム伯爵子息は(今名前知った)学園で人気なので声をかける事は出来ないし、私の生活の範囲で会う事はなかったのであれ以来、顔を見る事はなかった。



 考え事をしていたらヘルム伯爵子息と目が合った。ペコっと頭を下げると子息も気がつき、話をしていた恰幅のいい男の人と別れこちらに向かって来た。



「やぁ、学園で一緒の子だよね?」


「はい。先日はありがとうございました。私はルビナ・ローゼンと言います。こちらは兄です」


 お兄様には話をしていたので、彼が助けてくれた人か? と言われて返事をした。


「先日は妹の助けになっていただきありがとうございました。私はルーク・ローゼンです」


「とんでもありませんよ。私の足が長かったのかちょっと足を伸ばしたら急に男子生徒が出てきてあろうことか躓いてしまったんです。申し遅れましたが私はランス・ヘルムと言います」


 戯けたように足が長いと言ってきたのでつい笑ってしまった。



「ふふっ。本当にそのようですわ。あの時は助かりました、お礼が遅くなってしまって申し訳ございませんでした」


 ドレスの裾を持って頭を下げた。


「そんなに気にしなくても結構ですよ。当然の事ですからね。あの時の彼は学園を辞める事になったらしいね。あの後教師に連れて行かれた」

 


 え? ディートが学園を辞める? そんな話は誰からも聞いていません。どうしてヘルム子息はご存知なのに私は知らないんだろうか……お兄様を見ると視線を外された。明らかに知っている!



「お兄様、後でお話を聞かせて下さいませね」


 にこりと笑うと目を逸らされた。



「……余計なことを言ったようですね。怯えるように逃げていたので、知っているかと思っていました。どうかお許し下さい。それでは私はこれで失礼しますね」



 ヘルム子息は知り合いのところへ戻っていった。申し訳なさそうに言われたけれど、教えてくれてよかった。




「お兄様? どういう事ですか?」



 観念したようにお兄様は話し始めた。


「ディートリヒ殿は学園を辞める事になった。モリソン子爵はディートリヒ殿を領地に住まわせる事にしたようだ。モリソン子爵を継ぐのは妹のセシル嬢になるようでセシル嬢も了承したようだ。ディートリヒ殿は少しばかり? 常識を逸脱する行為があり、頭を悩ませているようだった。ルビナに隠していたのは事が終わってから話そうとしていたからなんだ。元とはいえ婚約者同士だったのだから心を痛めるんじゃないかと思ってな……内緒にしていた事は悪かった」



 ディートが廃嫡に? 後継はセシルさんに……セシルさんはしっかりしているから問題ないとは思うけれど、ディートはこの先どうするんだろうか……



 どこであんなに変わってしまったのだろうか。ディートの事を分かっているつもりで、ちゃんと見ていなかったのかもしれない。


 そう思いながらもあまりこの事を考えているとお兄様に心配をかけてしまうので、普通通りに挨拶してパーティーを過ごした。


 そしてすぐに戻ると言って手洗いに行きライトアップされている庭をぼぉーっと見た。会場に戻らなきゃいけないのに今日はもう疲れてしまいました。



「はぁっ……」


 ため息が口から吐かれた時に声をかけられました。



「ルビナ嬢、どうしたのですこんな人気(ひとけ)のないところで」


 相手はジェイ様だった。ジェイ様も招かれていたようだった。


「ジェイ様、こんばんは」


「こんばんは、素敵な夜ですね。今日のドレスもよくお似合いですね」


 さりげなく褒めるところはさすがジェイ様です。


「ありがとうございます。ジェイ様は今来られたのですか? 会場ではお見かけしませんでしたので」


「えぇ、今来たところです。ルビナ嬢何か悩んでいるようですが、何かありましたか? 良かったら私が相談相手になりますよ」






 相談相手……ジェイ様にディートの事を言うのはなんだか気が引けますね。






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