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〜子爵〜ジェイ〜


「ルビナはまだ帰らないのか?」


 ルビナの父ローゼン子爵が窓の外を見る。


「そろそろ終わる時間でしょう? ディートじゃあるまいし、ハドソン卿はちゃんと送り届けてくださるわよ」



 ディートと婚約していたことは黒歴史となりつつある。領地が隣同士の為お互いの領民の事も考えて、婚約は解消となった。昔なら婚約解消であっても傷物と見做され次の婚約者など決まらずに、泣く泣く修道院へ行かされるという事になっていたかもしれない。うまく次の婚約者が見つかっても後妻だったり裕福な平民と結婚して等……良い話は聞かなかった。それもひと昔、ふた昔の話となっている。


 相変わらずルビナには釣書が届くしルビナさえその気になればすぐに婚約者が決まるだろう。


 しかしルビナは今は考えられない。と言う。その気持ちを汲んで何も言わない事にしたのだが……



 ハドソン卿は何を思ってルビナに構うのだろう?



 妻とお茶を飲みながらルビナの帰りを待つ。もうそろそろ帰ってきても良い頃だろうに……



「旦那様奥様、ルビナお嬢様のお帰りです」



 やっと帰ってきたか! 帰ってきたルビナはとても楽しかったと舞台の感想を言っていた。こんなにいきいきとしたルビナの顔を見るのは久しぶりだ。元々おとなしい子で今考えればディートに抑えつけられていたのかもしれない……気がついてやれなくてすまない。そんな気持ちになった。


 最近は友達とも楽しく過ごしているようで、ルビナの生活は変わったようだ。学園ではディートとは幸いクラスが違うし、関わりがなく学園生活が送れているようで良かった。そう思う。

 


「楽しかったようだね。良い席だったのか?」


 え? ……ボックス席? あの入手困難と言われる舞台で?



「そうか。それは良かったね。他に何かあったか?」


 スミス伯爵の娘? ……あぁ。金で解決しようとするあの家か。ルビナに逆恨みしているのか? ふーん。これは黙ってはいられないなぁ。

 

 ハドソン卿が出てきて収めてくれた? まぁ侯爵家が出てきたらそうなるだろうな。

 確かあの娘は学園を辞めて結婚するんだったよな? どこかの伯爵家の出戻りの次男だったかと結婚させると言っていたよな? 親ほど歳の離れたと言う。



 それにしてもハドソン卿の話をする時に頬を染めながら話をするとは……



******


「重ね重ね申し訳ございませんでした」


 スミス伯爵が()()謝罪に来た。今度は令嬢の婚約者とかいう男も一緒だ。ちょっとしたメモ程度の手紙を出しただけなのに、大袈裟だよね。



「逆恨みされても困るんですよね……うちの娘は伯爵の娘さんに何かしましたか? してませんよね?」


 語尾が強くあたったかな? 笑顔は絶やさずにしないと一瞬真顔になったかな?



「……も、申し訳ございませんでした。今後はローゼン子爵令嬢の視界に入らないようにお約束します。一緒にいた私がもっと早くパトリシアの行動を止めなければいけなかったのですっ」


 令嬢の婚約者とかいう男が謝罪をしてきた。常識のない令嬢との婚約は大変だろうね。珍獣使いになった気分だろうね。



「ハドソン侯爵のジェイ殿からも手紙が届いたとか?」


 ハドソン卿から()()()()苦言を呈すると聞いた。



「公の社交場で娘が……申し訳ございませんでした」



 それしか言うことがないわけじゃないだろうけど、侯爵家からの苦言となるとそうなるよな。



「二度とこのような事がないようにして欲しいですね。そうじゃないと伯爵も肩身の狭い思いをしてしまいますよね。伯爵は二代目……でしたね?」


 手柄をとって貴族になったわけではない、貴族が複数持っている爵位を継承したわけでもない、金で買った伯爵位というのは知られた話だ。伯爵はそれなりに頑張っていると思っていたのに娘の教育が追いつかなかったんだろう。自分達のことで精一杯だったのか……



「この件について重く受け止め、娘は結婚させ他国へと移住させる事にします。私にはもう一人娘がいますので、伯爵家は下の娘に継がせたいと思います。パトリシアで失敗した分貴族のあり方について身元のしっかりとした教師をつけました」



 なんでも他国で商売をしているからそこで働きながら生活をするんだとか? 貴族ではなくなるということか……もう我が家と関わらないというのならそれでいい。

 あの令嬢が伯爵家を継いだら伯爵家は取り潰しになる可能性もありそうだ。そんな事までは望んでいない。妹とやらが真っ当に育つ事を祈ろう。



「分かりました。令嬢の件は残念ですが、この国で野放しにされると困りますし、ハドソン侯爵家からも睨まれてしまうと商売も……それは伯爵家にとって得策ではないということですね」


「おっしゃる通りです……」



 前回謝罪に来た時よりもやつれた顔をする伯爵。令嬢の夫となる彼も疲れて見えた。それなのに令嬢と結婚して他国に渡るというのか。


「夫となる貴方が令嬢をしっかり見張っていてください。それを約束してくださるならこの件はうちとしてはもう結構です」



「お約束いたします」



 返事をもらったので、お帰り願った。ルビナにはスミス伯爵が謝罪に来たから、今後顔を合わすことはない。とだけ伝えておこう。


 

 


 


 ~ジェイ~

 


「困ったな……」


 ルビナを送り届け屋敷に帰ってきて部屋で寛ぐ。


 ただ可愛い子だな。とは思っていたけれど……可愛いが過ぎると構いたくてしょうがない。


 舞台をキラキラとした目で見ていた。あんな美しい瞳がこの世にあるのだろうか? そこら辺の宝石よりも美しい輝きだ……困った。



 警戒するのにやはり純粋。これは社交界で男にころりと騙されるのではないか……


 心配だ……



 すみれが好きだと彼女は言う。バラや百合は特別感があると言った。それなら……彼女にぴったりのものがある。気に入ってくれると良いけどな。




 あ、ついでにスミス伯爵家に今後一切ルビナに近づくなと一筆書いておこう。あそこの家は商売をしていたな。

 もし次があったら店を畳む準備をしておいた方が良いよ。と書いておこう。


 ここでもハドソンの名前を使った。使えるものは使っておこう……まだジェイ・ハドソンな事に変わりはないのだから。



 あくまでもこれは手紙だ。抗議ではなく忠告? だったのだが……伯爵と令嬢の婚約者が会いにきた。



 後継者はあの令嬢の妹? 令嬢と婚約者は結婚して他所の国へ渡るそうだ。ローゼン子爵にも謝罪に行ってこの件を了承してもらったと言う。それなら私は何も言うまい。


 それにしてもこの二人はやつれていると言うか疲れているな……婚約者殿も二回目の結婚と言うのに、二度目もハズレたようだ。一回目は妻を寝取られ、挙句に家を追い出された? 次は若い嫁さんだと思っていたらアレだもんな。女運がないようだ。


 


 ……合掌。







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