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ディート言い分2

【エピソードタイトル、ディート言い分→ディートの言い分】「……お前は自分の都合がいい様に解釈しているだけだ」


 子爵は頭に血が上った事を反省した。息子には届かない。



「婚約者を躾けることがですか?」


「ディート……あなたは幼い頃からルビナちゃんといる事が当たり前だと思っていたからそうなってしまったの? 私は犬以下だと旦那様に言われたらもう立ち直れないわ……そんな事を言われて夫婦として過ごすなんて無理よ。躾と言ったわね? 私達があなたの躾を間違ったの。ルビナちゃんは悪くない」


 涙ながらにディートの母が言う。



「はぁ? 母上は何を言ってるのです? 僕に黙って勝手に帰る様な我儘な女ですよ。確かにルビナとは()()()()離れましたが、」



「ディートの言う少しとは三時間の事を指すの? ルビナちゃんはどれだけ心細かった事でしょう。その時点ですぐに謝罪に行く為に相談して欲しかったわ。なぜ私達に内緒にしたの? もうあの時点でローゼン子爵家からはこのままではディートとの婚約は考えさせてもらうと言われていたのに」



 手紙の内容までは言わないが、あの時点でディートという人間に信頼はない。



「シアとは本当に友人です!」



 そういう問題ではないと何度も両親に言われても“パトリシアとは何もない”の一点張りだ。



「……もういい。帰るぞ。後日私達がローゼン子爵と話をする。お前はもう二度とルビナ嬢と関わり合いを持つな。婚約の解消を受け入れたからには今後は他人だ」


 子爵は席を立ち扉の方へ向かう。



「婚約の解消? ルビナは僕と結婚しなかったら一生独身ですよ? 良いんですか?」



「……そんな事はありません。ローゼン子爵家の令嬢と縁を繋ぎたい家は沢山あります。ディートなんかには勿体ないのよっ!」


 ディートの母は息子を睨みつける。



「……もしかしてあの書類のサインは? 父上っ」



 ******



 もう既に子爵の姿はこの部屋にない。書類を持って扉の外で待つルークに頭を下げて書類を渡した。



「本日もうちの息子がご迷惑をおかけしてしまいました。二度とローゼン子爵家に息子が足を運ぶことはありません。騒ぎを起こす前に会場から出してくださりありがとうございました」


 書類を受け取りルビナの兄ルークはサインの確認をする。



「確かに確認いたしました。これでルビナとディートリヒ殿との婚約は解消されました。しかし領地の件はこの事とは関係なく手を取り合って今後もお互い発展させていきましょう」



 ここで争うのは違うと思う。今は親の代だからまだマシだが当主が代わった時、ルークはディートリヒと協力しなくてはならないと思うと反吐が出る……


 それまでにディートが改心する事を願うまで。いや、もしかしたら当主は……とルークは思う。




「申し訳ありませんでした。後日妻と改めて謝罪に参ります。今日のようなめでたい日にこんなことをするとは……私たちはこれで失礼します。子爵夫妻にお伝えください」



 そして子爵は息子と妻を連れて帰った。

 

 ディートは外出禁止を言い渡され、学園と家との往復のみが許された。何時に家を出て学園を何時に迎えに行くかと言う時間も細かく報告される。授業が終わり次第馬車に乗せられ、強制的に帰宅させられる。放課後に友人達との気軽な時間を過ごすことも許されない。



 そして校舎が違えばルビナと会うことはない。いつも友人とランチを取っていた中庭にルビナがいる事もなく姿を見ることもない。



 パトリシアともランチを取ることは無くなった。しかしパトリシアはクラスの女子と過ごすわけではなくランチの時間はすっといなくなる。友人として気になりディートは声をかけた。




「どうした? 最近は一人なのか? 良かったら一緒にランチ、」


 良かれと思って声をかけたのだが……


「友人面しないで! あのパーティーの後にお父様に罵声を浴びせられ、学園内では毒女と呼ばれているんだから! それが噂を呼び社交界からも煙たがられているわ!」


 毒女?


「私は悪名がついたから、うんと年上のおっさんと結婚しなきゃいけないんだから! あんたのせいよ」


「僕のせい? 何でだよ」



「あんたがあの子を置いてけぼりにしたり、暴言を吐いたからよ! あんたとパーティーに行ったことも黒幕は私になっているからよっ! あんたが婚約者より私を選んだからこんな事になったのよ! 何で置いてけぼりにしたのよ! 一言あの子に言えばすむことだったのに放置したからこんな事になったの! あんたに人生狂わされたわっ」



 周りはシーンとして、二人の話に耳を傾けている。



「ルビナのせいだな。僕だって婚約を解消して人生を狂わされた。家での扱いはひどい。外出禁止だし家族からは冷たくされているし、妹からは無視されゴミと呼ばれている」


 まともな貴族なら反省するだろうが、どうやらこの二人は違う様だ。自分勝手な言い分で似たモノ同士なのだと周りは思った。



「復讐よ!」

「そうだ、」


 パトリシアとディートが興奮して復讐と言葉が出てきた時にクラスメイトの伯爵子息イアンは口を挟んだ。



「やめとけよっ! 悪いのはお前らだ、反省しろっ! 変な考えを持つな! 行動に移すな! 彼女は被害者だぞ! お前達とは友人だと思っていたがどうやら違う様だ」


 


 イアンは二人と絶縁をした。ディートに何度も忠告してきたからこそ我慢の限界が訪れた。



 それからしばらくしてディートの勝手さに嫌気がさしてディートはクラスで浮くこととなった。


 


 

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