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第22話「……熱い」

 灼熱の待合室に会場の大熱狂、観戦者の激しい叫び声が響き渡る。

 俺の一つ手前の試合が始まったようだ。

 それも、俺の一つ手前は確か、生徒会の人……だった気がする。

 忘れたが、まあいいか。


 あと何分ほど待てばいいのだろうか。


 いくら熱に耐性があるとはいえ、こう、なんかあるだろう。

 場の空気感的にさあ。


 灼熱よりも熱い会場の熱狂に少しの鬱陶しさを感じる。

 熱気の籠った待合室には、やはり俺一人、他にこんな熱い場所に進んで入ってくる愚か者などいないだろう。


 「……熱い」


 と、どこからともなく声が聞こえてくる。

 だが、その声は聞こえた場所の特定が出来ない。

 何故か、それは、頭の中に直接響くような、どこか空虚な声なのだ。

 現実の世界で表現するのであれば、イヤホンで直接耳に音を捻じ込んだような、音を音と認識できるような代物ではないと言うべきか。

 まさに、こいつ、脳内に直接!な声なのだが、そんな声をはする奴は一人しかいないだろう。


 「なんでいるんだよ」


 と、後ろにいる愚か者、棄羅に声をかける。


 「……次があなたの出番だから」


 高熱でも出したかのように真っ赤な顔をしてそんな事を言ってくる。

 それはどうも、とでもいうべきだろうか。

 別に頼んできてもらっている訳でも無いが、わざわざ来てくれたんだ、礼くらいしておいた方がいいだろう。

 俺は魔法で氷と、氷点に近い温度まで冷えた水を出す。


 「ほら、これでも飲んで体冷やせ」


 俺が水を手渡せば、勢いよくその水を喉に流し込む。

 そこまで極限に達していて何故水を持ち歩かない、否、水を出さないのか。


 「ぷはぁ~!!」


 目をぐっと瞑り、ゆっくりと俺にコップを返してくる。

 どうやら、頭が冷えすぎて悶絶をこらえているようだ。


 「で、何でそんな状態になるまでこんな所にいたんだ?」


 コップを受け取り、棄羅の悶絶が収まると同時、俺は問いかけた。

 それを聞いて、棄羅はマフラーで口を隠したまま眼だけでにっこりと笑う。


 「今さっき言った通り、次があなたの出番だから」


 ……そこに偽りはないようだ。

 どうやら、俺は此奴に好かれてしまったようだ。

 まあ、人に好かれるのは別に悪い事ではないだろう。


 「そうか、今の水はそのお礼って事にしておいてくれ」


 そう言うと、タイミングよく試合終了の合図がなり響く。

 そろそろ行かないとって感じか。


 「それじゃあ、次の人が来る前にここから出て置けよ」


 棄羅にそう言い残し、俺は待合室を後にする。

 さて、準備は万端だ、行こうか。


 ゆっくりと光りだした転移陣から前の試合の生徒が出てくるのを確認し、係の合図で俺も転移陣に足を踏み入れる。


 途端、目の前の景色が切り替わる。


 ──ごつごつと魔力を纏った黒紫色の岩盤に岩壁、そして細々と点在する岩柱の間を吹き抜ける風が心地いい。


 既に前々の生徒の戦闘により、周囲の光景は目の当てられるものではない。


 ただ、仮想世界の中でも時は巡るらしく、今回は、三日月の灯る暮夜らしい。

 通りで、風が冷たくて心地い訳だ。


 そうして、夜風に体を晒していると、俺が待ち望んでいた少女が現れる。


 「あなたが今回の試合相手なのね」


 どうやら、俺の事を警戒しているようだ。

 まるで、何か得体のしれない何かを見つけたかのようだ。


 「そうだ、覚えていてくれたのか?」

 「……そりゃあ、ワタシの魔法が一切聞かなかった相手なんて、こっちに来てからは初めてだもしね……」


 そういう事か。

 まあ、とりあえずは、こいつの本気を引き出さないと、俺が知りたいことは一切分からない。

 なのでとりあえず、適当に煽っておこう。


 「お前にハンデをやる」

 「……ハンデ?」


 明らかに怒りをその顔に滲みだして威嚇するように俺の顔を睨んでくる少女。

 どうやらうまくいったようだな。


 「ああ、ハンデだ、俺は──」


 冷たい風が俺と目の前の少女の髪を揺らし、ゆっくりと通り過ぎていく。

 その風を一身に浴び、ゆっくりと言う。


 「──お前が本気を出すまで、魔法を使わない」

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