第21話「修行じゃろ」
荒野、黄昏を凝縮したような、暗く深い真紅と濃密な藍の空の下、コロコロと響く鈴の様な声が響く。
「──しっかし、どこ行っちゃったんでしょうねぇー」
その声の主は、永遠と続く無限の夕焼けを眺め呟く。
彼女の声は誰に届く訳もなく、虚空に霧散する。
「いやちょっとぉ!せめて何か一言位は返してくださいよぉ!!」
「……いやだってよお、それ何回目だよ?」
今度は男と女、どちらともとれる中性的な声が、呆れた様にため息交じりそんな何回目とも数える事すらやめる程発したセリフを吐く。
両方とも同じ深紅の羽衣に身を包み、その上から金の装飾が施された白銀色の鎧を纏っている。
一般人には到底理解の追い付かないような複雑な魔法の付与が施され、白紫色の魔力の粒子が漂い常に魔力を纏っているその鎧は、まさに伝説級防具とでもいうべきか。
そんな魔法防具に身を包み彼女たちが先程、否、数か月前から探し求めているのはたった一人の青年だ。
「ししょー、みつかりましたぁー?」
ピンク髪の頭から生えた二つの猫耳を垂れて師と仰ぐその者の方を見る。
「ふむ……もしやすれば見つかるやもしれぬの……」
「まだですよねーそうですよねー……え!みつかったんですか!?」
「話を聞け阿呆め、見つかりそうと言っただけだ」
そう声を上げたのは、赤色の肌に白銀の頭髪、金の瞳に木の葉で編まれたような胸当てとパンツで身を纏った幼女。
彼女の前には無数の探知魔法の術式が浮かんでいる。
「少し前に、時空の割れ目を見つけてな、それが、あ奴の攫われていった魔法の転移先と次元座標が酷似していての」
「まじですか!」
「ああ、だが、既に時間が建ち過ぎていたからか、時空の割れ目が崩壊を始めているせいで詳しい座標が掴めんのだ」
「……その座標を探し当てるにはあとどれくらいかかりそうなんですか?」
魔法をいじるその傍らで、目線だけを送る。
「ふむ、ざっと……三ヶ月程かの」
「三ヶ月……それまで我々はどうすれば?」
「まあ、修行じゃろ」
もはや目線すらくれる事は無く、只々呟く。
その言葉に見る見ると青ざめていく二人だったが、彼が耐え凌いだ時間と修行の過酷さを思い出し己を奮い立たせる。
そうして今まで消極的だった師は呟く。
「早く見つけ出して連れ戻してやるからの、この世界にはまだお前が必要なのじゃ……セクラ」
──熱狂、魔法の飛び交う音が鳴りやむことなく響くその場所で、俺はゆっくりと茶をすする。
嘘。
浴びるように飲みつくした。
「にしても、今日は熱いな」
額に浮かぶ汗をぬぐいながら月夜にそう問いかける。
いつも涼しそうな顔をしている月夜も、流石に今日は少し汗をかいている。
「……こんな日中に空調も壊れてこの熱狂だから、しょうがない」
確かにその通りだ。
未だ熱狂は冷めることなく、ついに第三リーグへと舞台は移った。
まさか、未だヘルパーが目を覚ます事は無い訳が……ある。
あいつ、俺の寝床を奪ったまますやすやと眠りこけている。
「そろそろ寝たいな」
そんな呟きと同時、試合の勝者が決まる。
次の次は確か俺だったな。
対戦相手は確か……月夜を打ち負かした奴だったか、覚えていないが、そんな所だろう。
準備運動も終わらせて、準備万端だ。
さて、それじゃあ、仇でも取りに行こうか。




