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第20話「無様であった」

お久しぶりです、ゴールデンウィークという事で最近書けていなかったリハビリがてら今週一週間は一日に2話から3話ほど投稿したいと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします。

 ──「生きておったのか、流石は、拙者の本能が警鈴を鳴らすほどの化け物……と言ったところであろうか。」


 もはや満身創痍の昴を見て雷兎が言う。

 だが、それに対しての昴の答えは簡単だった。

 ゆらりと揺れるように立つと、ゆっくりと、はっきりと叫んだ。


 「──【地 獄 炎 却】!!!」


 それはもはや咆哮にも近かった。

 そんな咆哮と同時、魔力が収束していき、昴の背後に大きな魔法陣が展開される。

 複雑なその魔法は昴の笑い声と同時に発動される。

 発光。

 そして轟音。

 大地がうめくような大轟音がけたたましく鳴り響く。

 放たれた熱光線が直撃した大地はぐつぐつと煮立ち、その付近はガラス化し、そのまた付近は煤けて黒くなっている。

 熱で空間は歪み、蜃気楼が出来ている。


 だが、其処に雷兎は既にいない。


 それを確認して、何かに気が付いたように昴が後ろを振り向く。

 刹那、天空に伸びる様に一つの雷が奔る。

 雷が落ちる速度、それに比例するように雷兎が昴の目の前に現れる。


 「ふん!!!!!」


 現れた勢いで雷兎が刀を振り下ろす。

 だが、真正面からそれを受け止めて鷲掴みにすると、魔法を放つ。

 その瞬間に、雷兎の刀が赤熱化し、見る見るうちにドロドロと溶けていく。


 「まさに、化け物……!」


 額に大粒の汗を浮かべて呟く。

 瞳孔は小さく閉ざされ、しかしその瞳は大きく見開かれて爛々と大きく輝いている。

 その表情、言葉を受けて昴が大きく引き攣るように口角を引き上げ、獰猛な笑みを浮かべる。

 その笑みと同時、雷兎の刀を鷲掴みにしている昴の右手が赤色の閃光を放つ。

 途端、発火。

 大気を歪めるほどの魔力が込められたその魔法炎は、その濃密な魔力だけではなく、炎単体が放つ太陽と見まがうその高熱をもが大気を歪めている。

 その熱気に溶けた鉄が蒸発を始める。

 流石に危険を感じたのか、雷兎もその場から勢いよく飛び退く。


 「流石は歴戦の強者……拙者の太刀を自らの一身で受け止めるとは。」

 「……」


 雷兎の言葉を聞いて、冷めたとでも言う様に浮かべていた獰猛な笑みを崩してつまらなそうに溜息を吐く。

 そうして、言い聞かせるように言う。


 「化け物だの歴戦の強者だの言ってるがなぁ、俺如きにそんな事言ってて大丈夫か?」

 「何……?」

 「お前はさっき見なかったのか、鬼川だとかいう先輩の負け方」


 鬼川……きっと昴が言いたいのは、鬼瓦の事だろう。

 それは、圧倒的な力を持つものに容赦も無い程無残に敗退していった三年の先輩だ。


 「……あれは、無様であった。」


 昴の言葉に苦い顔をしながらそう言ったのは、少なくとも鬼瓦の実力を理解しての発言だろう。


 「無様、ねえ……あいつをぶっ倒した奴ぁなあ、俺の友達なんだよ。」

 「ほう……それがどうかしたのか?」

 「まあ、そう急ぐな、ちゃんと教えてやるからよぉ。」


 そう言うと首を鳴らして、右手を持ち上げ顔の前まで持ってくる。

 と、中指と親指の腹同士をくっつける。

 何だろうかと言う様に、雷兎が訝し気に首を傾げる。

 その視線を受けて、昴がまた口を開く。


 「この世界にはな、とんでもねぇ化け物がまだまだ眠ってやがる。だけどな、」


 散々溜めたその言葉を、更に大きく息を吸って溜める。

 そうして、大きく吐き出すように声を出す。


 「あいつよりも強い奴は……いや、バケモンはいねーだろうさ。」

 「……そなたですら、そこまで言う程の化け物が、この学園に……?」

 「ああ、俺なんか足元にも及ばねえ。行ってしまえば、あいつの実力は宇宙よりもでけえ。多分な。」


 そう言い終えると、ゆっくりと指をこすり合わせる。

 火の粉が散り、魔力が溢れ出す。

 それは今までの昴の言動や行動からは考えられないほどに幻想的な魔力だった。

 その魔力に煽ら荒れて雷兎は息をのむ。


 「あばよ」


 昴の声に我に返る雷兎だが、その反射速度は遅かった。

 否、昴の魔法構築から発動まで、何もかもが速すぎたのだ。

 気が付けば、昴の中指は親指の付け根に打ち付けられ、火花が舞っていた。

 昴の輪郭を照らす火花が舞う。

 その刹那に、昴の背後には数えるのには時間がかかる程の魔法陣が展開される。

 その全てが同時に、紅色に発行し、一つの魔法陣の形を作り出す。


 そして、世界に光が灯った。


 目の前の全てを消し去る、滅却の絶光が。


 その轟音はもはや会場には響かなかった。

 音を拾う事も出来ない程のその轟音は、だがしかし、乱れる映像を見て全ての生徒が理解していた。

 音をも消し去る轟音であることを。


 ──「これでやっと、あいつの適当に近付いたか……?」


 そんな呟きを最後に、勝利宣言の声が上がり、昴はゆっくりと転移魔法に飲み込まれていく。


 そうして、彼らの熱狂の裏でまた一つ、何かが動き出したのだった。

何が動き出したのか……。

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