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第16話「が、頑張って」

少し短めの話になります。

 ──俺の試合が先送りになってから二日が経った。

 ようやく第1リーグが終わったようで、第2リーグが始まるようだ。

 俺は一度ヘルパーの様子を見に行くために会場から立ち去ったが、他の生徒達も、一度家に帰る者が何人かいるようだ。

 生徒の数と試合の量の所為で二十四時間ぶっ通しで開催している試験試合だが、体調を整えるために自分の出番まで家に帰る、などの行為が許されているため、俺も周りに習って一度帰らせてもらった。

 が、特に変わった様子もなく未だ眠り更けたヘルパーと、魔法瓶の中で暴れるフィラがいるだけだったので、その様子を見て、今しがた戻ってきたところだ。

 そろそろ月夜も回復している頃だろう。

 と言うか、そんな何日も眠っている方がおかしいのだが、最近は破滅の力で疲れていた事もあって少し回復に時間がかかったのだろう。

 俺は月夜の魔力を探して月夜の元に足を運ぶ。


 どうやら、俺が元々座っていた椅子に腰掛けているらしい。

 きっと、俺がまた戻って来ることを予想して座って待っていたのだろう。

 俺はゆっくりと月夜の背後に近付き、少し勢いをつけて肩を叩く。

 そうすると、びくりと肩を上げてゆっくりと此方を振り向く。


 「せ、世冥……びっくり、した。」


 少し涙目になってそう訴えてくる月夜にちょっとした罪悪感を覚えて咄嗟に謝る。

 やり過ぎたか。

 いやー、昔だったら横にいるだけで泣かれるなんて日常茶飯事だったんだけどな、今じゃ、こんな事が出来てしまう。

 いや、だからと言って女の子を脅かして楽しむ趣味は無いのだが。


 コホンッ。


 「それで、第2リーグに入ったという事は、もうそろそろ俺の出番かな。」

 「うん。確か、次の次の次くらい。」

 「そうか、本当にもうそろそろだったな。」


 自分の二つ前の試合の間に移動を済ませておかないといけないんだったか。

 じゃあ、次の試合の内に移動か。

 面倒くさいが、しょうがないか。

 今の試合はまだかかりそうだから少しは休めそうだ。

 コンビニで買ってきたおにぎりでも頬張って待つとしようか。


 おにぎりの包装を剥きながら、俺はふと、次の試合の相手の事を思い出す。

 どんな相手なのかを把握しておいた方がいいだろうと思ったのだが、特に知る術も持たないので、只々独り言ちる


 「……相手はどんな奴なんだろうな。」


 俺の呟きに気が付いたのか、月夜が俺の方を見て答えてくれる。


 「確か、世冥の相手は三年生の先輩。Aクラスの中でも特出した実力の持ち主で、Sクラスに進級するのも近いと聞いた。でも、世冥には届かない。」


 ほう、中々強そうだが、月夜は俺の事を信頼してくれているのだな。

 俺は小さく笑うと、試合終了の合図を聞いて席を立つ。

 そろそろ移動した方がいいだろう。


 「それじゃあ、控えるとするよ。」

 「うん……が、頑張って。」

 「ああ。」


 月夜が妙に頬を赤らめて言ってくるのでこちらも少し照れてしまう。

 が、次の試合のスタート合図で湧き上がる歓声によって意識を戻すと、ゆっくりと控室に向かう。


 ──振り子時計の音が響く静かな控室の中、世冥の名前が呼ばれる。

 彼の実力を知るには良い機会だ。

 と、ワタシは思う。

 彼はワタシの事を唯一……。

 彼は希望だ。

 ワタシの希望。

 世冥がゆっくりと会場の中に入っていくのが見える。

 ……ワタシが満足できる力を、戦いを望んでいる。





 だから──







 ──だから──







 ──蹂躙……して……♡

謎の観戦者の正体とは……。


次回、世冥の戦闘(蹂躙)回です。

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