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第15話「魔力に似た何か、か」

少し遅れましたが、明けましておめでとうございます。

最近、色々とやらなければならない事が増えてきたため、小説の投稿が不定期気味になり始めています。いえ、完全に不定期です。ですが、必ずこの作品を完結まで持って行きたいと思っていますので、どうか、この作品は見捨てないで上げてください。

 ──溢れ出る生徒たちの歓声で闘技場、その付近が揺れる。

 もはや、空間を揺らし、とてつもない熱気が周囲に漏れ出し立ち込める。

 そんな最中、灰の雲が晴れてゆき、“大きさの異なる2つの月”が顔を出す。

 よく知る月が一つ、そして、一回り大きく、蒼白い輝きを放つもう一つの月が闘技場、その外で動く影を照らしていた。


 光を避ける様にして動くその影は、しかし大胆に家々の上を飛び渡り移動する。

 それが最善の移動方法、潜伏方法であるからだ。

 月が輝く夜は、影が目立たない。

 その者達こそが月の光であるように、よってできる影のように。

 帰還勇者達が通う学園のすぐそばに聳える大森林の、月明かりに張られた闇の中に消えていくその者達。

 行く先は魔法で隠蔽された洞窟。

 彼らの拠点である。


 どう見てもただの崖のようにしか見えないその場所に近付くと、彼らの魔力に反応して、切り立った崖のその一点がホログラムのように中心から開かれて行き、見上げる程に巨大な洞窟の入り口が開く。

 その入り口には白紫はくし色の魔力線が入り口を埋める様に張られている。

 その一本一本が髪の毛のように細い魔力の線だが、それが密集し、もはや薄く伸ばした幕が張られているようだ。

 黒い外套を身に纏った人影たちは、そんなモノを気にすることなく洞窟の中へと足を踏み込む。


 全員が洞窟内へと収まると、洞窟の入り口がホログラムで生成されるように閉じていき、洞窟内、その壁面に打ち付けられるようにして設置された灯篭に灯がともる。

 魔力で生成された炎は紫線が混じり、怪しい光を放っている。

 影の外套を纏った者達が、その光を頼りに洞窟の奥へと足を進める。

 まるで洞窟ではないようなその入り組んだ造りの堅道を進んで行き、洞窟の最奥にぽっかりと開いた大穴に辿り着く。

 僅かに風を行き来させ、笛を吹いたような甲高い音を重複させる。

 底の見えないその大穴に、尚も怯むことなく、その人影、その者達は一息に飛び込む。

 足先から落ちて行き、気流を掻き分けて落ち行く際に鳴るその音はもはや悲鳴にも聞こえる。


 ──「《気流操作魔術エア・マジック・エンチャント》、《浮遊フライト》。」


 刹那、木霊するその声に呼応するように風が彼等の体に纏わり付き、その身をその場に止め、ゆっくりと地面に向かって行き着地する。

 そうして、さらに奥へと足を進める。

 数分歩くと、開けた空間に出る。

 そこには、魔力を動力源とする魔導機器、その中でも最先端の《魔導電機マギノ・コンピュータ》が壁面に埋め込まれるようにして設置されている。

 その中心には大きな円柱型水槽の様な怪しげな光を放つ容器が置かれている。

 周辺に置かれた《魔導電機マギノ・コンピュータ》に繋がれ、何やら微調整、監視がされている様だ。

 それは、映画やドラマで見る様な実験施設の様な作りだった。

 その奥から一人の女性が今しがた踏み入った者たちに声をかける。


 「調査部隊か、収穫は、なにかあったか。」


 ゆっくりと歩み寄り、何かの模様を模った仮面で籠った怪しい声でそう質問を投げかける主に、隊列を組む様にして調査部隊と呼ばれた者たちが答える。


 「目ぼしい収穫は得られませんでした。」


 「そうか、」と踵を返そうとした女性に対し、「ただ」と引き留めるように声をかける。

 女性が振り向くとそこには、調査部隊、その中心にいた人物が小さなガラス製の球体状カプセルを掌の上に浮かべて立っていた。

 そのカプセルの中には固まった血のように赤黒い何かが収まっており、風に吹かれているかのように頻りに揺らいでいる。


 「この様な物が、この森の付近で検出されました。」

 「これは?」

 「はい、未だ完全に分かった訳では無いですが、魔力ではない魔力に似た何かであると見解を立てております。」

 「魔力に似た何か?」

 「はい、“ソレ”は、我々の操れるものの範囲を超えておりました。ですが、性質上は、魔力に通ずるものがあるかと。」

 「……そうか、解った、研究対象として、早急に研究を始めておこう。」


 そう言うと、その何かが収まったカプセルを受け取る。

 踵を返して立ち去る女性の後ろ姿を眺め、調査部隊はまたその場を離れるのだった。


 ──「魔力に似た何か、か……。」


 一人、静かにこぼすと、そのカプセルを光に照らすようにして眺める。


 「……どうかなされましたか?」


 側近の女性が心配そうに声をかけてくる。

 それに「何でもない」と返すと、自分の為に作られた大きな椅子に腰を掛ける。

 壁と一体化したパイプやコードでつながれた黒大理の椅子は、魔力の編み込まれた布で作られたクッションが敷かれているため、中々に露出したその肌が冷える事も疲れる事も無い。

 そんな大座に腰を掛けて尚、大きくため息を吐きつつ独り言ちるのだった。


 「何なんだよ、『暗黒駆動財団ダーク・ブレッズ』って……。」


 そうしてまた、大きく息を吐き出して天を仰ぐのだった。

謎の女。そして、謎の組織。世冥の知れぬ場所で何が動き始めているのか……。

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