第13話「ワタシの名前は」
今回は戦闘回では無いです。
──次は昴の番だ。
俺は会場の控室で備え付けの大型モニターに映った試合の様子を眺めて昴の番が来るのを待つ。
昴の試合の後は俺の試合のため、控室で手前の試合を閲覧できる。
俺は昴の試合を待ちながらトーナメント表に目線を巡らせる。
この試合は第一リーグが650試合で構成されているため、1週間で第一リーグを終わらせなくてはいけないため、夜間までぶっ通しで試合を執り行っているのだとか。
それが出来るのも、一度異世界で魔王を倒した猛者たちが通う学園だからだろう。
俺はそんな事を考えながら、第二リーグに進むことになっている選手の名前を確認する。
まず、目を付けなければいけないのは月夜の仇である少女。
名前は……大廻と言うのか。
なんというか、読みずらい名前なうえにどちらも苗字として成立するからわかりづらいな。
そして、第2試合で数秒と時を待たずに勝利を収めた少女は何という名前なのだろうか?
──「ワタシ?」
と、トーナメント表に目を凝らしていると横からスッと知らぬ顔が視界に入って来る。
「どわっ!?」
俺は突然現れた顔に驚き椅子ごと体勢を崩してその場に倒れてしまう。
その様子をじっと見つめてくる少女。
どこか見覚えのある見た目をしている。
少し青みがかったプラチナのショートボブ。
髪と少し色味の違う竜胆色の瞳。
そして、とても整っているのであろうその顔の下半分を羽織った外套の襟で隠している。
あ。
此奴俺が探してた奴じゃん。
「どうしたの? ワタシの名前が知りたいんじゃないの?」
無機質な声でそんな事を俺に問いかけてくる少女。
俺はよっこいしょと起き上がるとその問いに答える。
「ああ、そうだ。」
俺は少し不愛想な感じに答える。
ここで食いついてしまえば単純に変態にしか見えないだろうからな。
俺はれっきとした一般男子だ。
ん? じゃあもっと食いついた方がよかったか?
「やっぱり、私の名前探してたんだ。」
そのセリフを聞いてふと思う。
こいつ、本当に話しているのか?
こいつの声はそこまで張り詰めている訳では無い。
だと言うのに、耳元で話されているかのような不自然さがある。
言ってしまえば、頭の中に直接声が響いているような感じだ。
と、少し考えこんでいると、不意にその掌を差し出される。
その手の方、少女を見ると、特に表情も変えずに此方を見たまま言葉を紡ぎだす。
「ワタシの名前は、終末 棄羅。よろしく。」
と、突き出した右手を少しだけ揺らしながらそんな事を言ってくる。
俺は少し間を開けてその手を取る。
と、同時にまたも少女──棄羅が声を発する。
「あなたは?」
「俺は、世冥だ。三簾世冥。」
俺がそう自己紹介を終えると、少し目を細めてその手を放す。
そしてそのまま少し間を開けて「それじゃあ」と声を発して扉の前に立つとノブに手を置いて俺の方に顔を向ける。
そうして──
「またね、ワタシの──」
──と、別れの言葉を残し、控室を出て行く。
最後に聞き取れない部分があったが、さして問題は無いだろう。
俺は何だったのかとため息をつきながら席に着く。
同時、モニターに着いたスピーカーから司会の試合開始の声が響いた。
「ワタシの──」
彼女は、何と言い残したのでしょうか。




