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第11話「僕が、二度も」

またも戦闘回かと思われるかもしれませんがまた戦闘回です!

ここ数話ほどは戦闘回が続きます!

そして、今回は小枝の試合です!

 ──「何とぉ! 第一回戦からとんでもない盛り上がりだぁ!!!」


 と、会場に響き渡ったのは司会役の放送局員の声だ。

 俺は、陳腐なWINの文字を表示するモニターに未だ映り続ける少女に目を凝らす。

 先ほどの髪の輝きは《特殊条件魔法》の中でも位の高い《神降魔法》と呼ばれるものだ。

 《神降魔法》とは、特定の神と契約を交わすことにより発動できる魔法だ。

 だが、その魔法の威力は契約した神の位に左右されるため、あまりお勧めは出来ない。

 が、先程の魔法からは《神降魔法》特有の魔力と、ごく僅かながら、何か他の魔力が干渉しているようだった。

 それと、もう一つが《神降魔法》では発現しないはずの魔法症状が現れていたことがとても気がかりだ。


 「あれは……ヘルパーと同じ状態……。」


 俺はそこまで考えた所で隣にいた筈の小枝が消えている事に気が付く。

 周囲を見渡すがどこにも見当たらず、捜索は諦めて昴に尋ねる事にする。


 「小枝はどこに行ったんだ?」

 「ん? あいつ、次の次らしいぜ。」


 と、自販機で買ったのだろう缶ジュースを口に含みながら答えてくれる。

 ふむ。

 確か、昴は俺の一つ前だったのを覚えている。

 が、小枝がどの位置順だったかをしっかりと覚えていなかったな。


 と、そんな話をしていると、会場の生徒たちが一気に沸き立つ。

 俺はその異様さにモニターへ顔を向ける。

 そこに映し出されていたのは、開始の合図がなってから数十秒ほどしかたっていないと言うのに、既に荒れ果てた荒野。

 そして、右端から勢いよく飛び出してくる陳腐なWINの文字。


 そんな文字に隠れているのは、制服の上から少し裾の破れた漆黒の外套を羽織り、少し青みがかったプラチナのショートボブを揺らす名も顔も知らぬ少女だった。

 だが、外套の襟で隠れた口元を見て、少し前に聞いた噂を思い出す。

 学園ランクの第二位の実力を持つ生徒が二年の先輩にいると聞いた。

 そんな噂を思い出していると、モニター越しにその少女の髪とは少し違った色味の瞳が此方を向く。

 その視線は、モニターを通していると言うのに的確に俺を貫いていた。

 《媒体経由千里眼》と呼ばれる魔法と同じ気配がする。

 面倒くさい事になりそうだな……。

 要注意人物に設定しておこう。


 と、五分ほどの間を開け、ついに小枝の出番が来る。

 会場のモニターには、二年の先輩と小枝が映し出され、司会の鼓膜を激しく揺らす謳い文句が開始の合図となり、試合が始まる。


 ──「やあ、一年生と当たるなんてな。」


 そう声を発したのは二年の生徒だった。

 小枝は静かにその声に耳を傾ける。


 「ぼくは二年のBクラスの生徒だ。けど、流石に一年生よりは実力はあるからね、少し申し訳なく感じちゃうな。」


 にこやかな顔で少し困ったように眉根を寄せ、そう言葉を紡ぐ。

 そんな言葉を耳に入れた途端、小枝は大きなため息をつく。

 溜息を吐くさなか、思い出されるのは世冥との一戦だった。


 あの時、世冥が与えたのは絶望でも圧倒的実力差による屈辱でも無かった。


 彼が世冥に与えられたものは、一種の焦燥感だった。

 世冥は自身のもつ最高の魔法技術をいとも容易く凌いで見せたのだ。

 実力に差があり過ぎる。

 そんな絶望が彼を襲った次の瞬間に、彼の中に募ったのは、他の物にも引き離されてしまうのではないかと言う恐れ、焦りだった。

 だが、そんな焦りのさなか、彼は気が付いた。


 自分がかけ離れていたのではなく、世冥がかけ離れ過ぎていただけであると。

 だが、そんな物で自分が納得できるはずもなく、焦りは一向に消えてはくれなかった。

 消えない焦りの中、彼はまた新たな感情に揺さぶられた。


 「……僕が、二度も敗北する訳が無かろう。それも、高々一年しか離れていない実力不足のなりそこない風情に」


 その顔は、いつも通りの無表情。

 だが、その瞳にはしっかりと滲み出た一つの感情。


 その《覇気オーラ》に晒されて二年の生徒が背中に冷や汗をかく。


 《覇気オーラ》に込められた、否、混じった感情は──


 「なんでそんなに怒って……」


 ──静かなる怒り。

 澄み切ったその瞳の中には、沈黙が表す圧倒的な威圧感を持った沈静的な怒りだった。

 その怒りはあらゆるものを飲み込んだ。


 そして、あらゆるものを飲み込むその怒りは、小枝の圧倒的な理性に制御されてこそ、その真価を発揮する。


 その怒りは既に一種の大罪、『憤怒』とも紛う程の威だった。

 そんな憤怒を纏った腕をゆっくりと擡げると、その掌に一つの魔法を構築する。

 そして、囁きにも似た静かな声で魔法名を口にする。


 「【憤慨蜥蜴地獄炎イフリート・ヘルフレム】」


 刹那、漆黒に染まった魔法陣が数十程展開される。

 と、全ての魔法陣から同時に漆黒の業火が竜巻を描く様に放射され、二年の生徒を飲み込んだ。


 「君は弱い、僕如きにやられる位に。」


 そうして、小枝の一言が静かに響き渡り、数舜遅れて司会の試合終了の合図が響き渡ったのだった。

怒りは制御するからこそ強い──。


小枝も着々と力を付けております……!

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