第9話「これは違くてぇ」
直ぐにかけたので連続投稿という事でお願いします!
──トーナメント表が張り出されてから1週間が過ぎた。
未だヘルパーは目を覚まさず寝息を立てて俺の寝床を占領している。
その間、俺は筆記テストを特に難もなく終え、パーティーテストに向けて月夜の特訓のメニューを考えていた。
明日明後日と休日を経て、来週、月曜から個人テストが3週間ほど行われる。
その後1週間ほどパーティーテストが行われる。
と言った予定らしい。
実際、特訓など必要ない実力は既に持っているのだが、流石に試験中に《破滅の力》が暴走したりすればまずい事になるからな。
だから早めに制御できる世になってくれなければ困る。
とにかくは、次の個人テストを早々に終わらせて月夜の特訓を始めないとな。
──なんて、ちょっと考えていれば直ぐに休日なんて終わってしまう。
ゆっくりと観客席に足を運び沸き立つ生徒たちを眺める。
第1試合目は月夜と3年の生徒会メンバーの試合らしい。
生徒会メンバーとの試合だからこんなに湧いているのだろうな。
まあ、うちのクラスの奴らは月夜目当てだと思うが。
俺は目を瞑ると月夜の元に意識を飛ばす。
「……どうしよう」
と、意識を飛ばした先でそんな事を呟いていたのは見た事も無い少女だった。
少し明るめな焦げ茶のショートヘアを揺らしながら猫耳のフードを被った小柄な少女。
意識を送る先を間違えたか?
「まずいまずい、ひじょーにまずい……」
と焦った様子の少女の足元をのぞき込んでみる。
そこにはなんと、見まがう事のない知った顔、神咲月夜が倒れているではないか!
……え、何で……?
「とりあえず、整理しよう、何が起こったかと言うと……緊張しまくった挙句、曲がり角でいきなり現れた女の子に入眠魔法をかけてしまったと……あれぇ……これ、全面的に私積んでない??」
積みだな。
俺は意識を媒体にした転移魔法を使い、目の前でオロオロと月夜をつついている少女から少し離れた位置に転移する。
そうして、ゆっくりと近づき、少女に声をかける。
「……あの、」
「ふみゃぁ!!!!!! 《永眠之要》!!!」
「うお!?」
結構至近距離まで近づいていたため、突如として後ろを振り向いた少女が突き出した腕にぶつかる所だった。
声と勢いに驚いて声を出してしまったじゃないか。
と、数舜後、俺の姿をしっかりと認識すると、少女の顔が見る見る青ざめていく。
「ま、またやっちゃったぁ!!! 今度は立って寝てるぅう!!!」
「寝とらんわ!!!」
慌て始める少女に対し、少し語気を強めながら安否を伝える。
立って寝る様な変な体質はしてないわい!
俺の声を聴いて一瞬肩を震わせると俺の顔をまじまじと見つめてくる少女。
「ほんとに、寝てない……。」
少し驚いたような声音でそう呟くと思い出したように足元を見ると、更に顔を青ざめさせる。
そして冷や汗をダラダラと垂らしながら引き攣った笑みを浮かべる。
「い、いやぁ、これは違くてぇ……」
「どうせ、今のと同じ魔法かけちゃったとかだろう?」
「ぎくぅ!」
いや、分かりやす過ぎるだろ!
まあ、いいんだけどね?
俺はそんな少女を横目に月夜に近付くと、月夜の中にある破滅の力を少しだけ体内で動かす。
そうすると、月夜にかかった魔法はたちどころに壊れていく。
そんな事をした数秒後、ゆっくりと月夜は目を覚ます。
「……世冥……?」
「おう、おはようさん」
手を差し出して立ち上がらせると、無事を確認し、もう一度、先程の少女の方に振り向く。
が、既にその姿はなく、俺はため息をつきながら怪訝そうな顔をする月夜に向き直る。
「どうかしたの?」
「いんや、何でもない。ちょっと、《破滅の力》の様子を見に来ただけだ。」
「そう、大丈夫だった?」
「ああ、暴走とかの心配はなさそうだ。」
「良かった。」
「ああ。」
俺は、「それじゃあがんばれよ」とだけ残して月夜の元を離れ、先程の観客席に戻る。
なおも熱狂は健在で、まだ始まってもいないのになぜここまで盛り上がれるのかとちょっとした関心を生徒たちに送ってしまう。
そんな事を思っていると、昴と小枝を発見し、此方に呼ぼうと軽く手を振る。
それに気付いたようで、昴と小枝が少し駆け足で此方に近付いて来ては隣席へと腰を下ろして試合映像が流れるはずの投影機へ顔を向ける。
そして数分が経ち、いよいよ、開始のゴングが鳴り響く。
それと同時、会場のその投影機が空中に試合の選手である月夜と──
「……マジかよ……」
──先程の少女の姿を映し出したのだった。
さて、やってまいりました。
少女はどのような戦闘方法を用いるのか……。




