第1話「また会えたね♡」
二章始まりました!!
今回は少し早めに進められるよう頑張ります!!
──彼女と出会ったのは何年前のことだったろうか、もはや思い出せない。
ただ、覚えている事は一つ。
こいつ、めんどくせえ。
──134年前。
行けども行けども果てのない荒野に、一人の少年と、四人の少女がいた。
いや、少女と言うには少し歳の行き過ぎた老婆がいるが……。
それは置いておこう。
「……師匠、今日は何をすればいいんですか?」
この空間でたった一人の少年、セクラが歳行く少女に問いかける。
その問いに答えるのは、師匠と呼ばれた老女。
名をメイ・ロデオ―ド。
「そーじゃのぉー……あ、じゃあ、今日の課題は天使を倒す事っ!!!」
天使、それは生物の頂点と呼ばれる存在であり、神の使いとして恐れられている存在だ。
そんな物を倒す事は、人間に出来るものではない。
ただ、彼女からすれば違うのかもしれない。
そのため、セクラの言葉にも真面な答えは返さない。
「天使って、流石に無理ですよ。」
「無理ではない、やるのじゃ、それでないと出来るモノも出来んのじゃからなっ!!」
「出来ない事やってもできる訳ないんですよ!!!」
だがそんな訴えを彼女が聞くはずもない。
すぐさま自室に籠ってしまう。
セクラもそのことは理解している。
そのため、文句を言いつつも実行する。
無理でもやらなければ自分が殺られて終わりだからだ。
深いため息をつきつつ【訓練用模擬世界】へと入っていく。
中には魔法陣が描かれた壇があり、階段を上ってその上に立つ。
それと同時に、セクラは起動用の魔力を魔法陣に流し込む。
刹那、聖の魔力が溢れてくる。
「おお、凄い量だな。」
セクラは冷静にそんな事を呟き、いつの間にやら現れた、細長い白銀の剣を構える。
途端、魔力の放出が収まる。
否、放出が収まったのではなく、放出されていた魔力が圧縮され、膨張を始めたのだ。
その膨張は収まる気配はなく、セクラの中で焦りが見え始める。
(これ……魔力込め過ぎたか……?)
冷や汗を流し、苦笑いを浮かべて膨張する魔力の行く先を見守る。
そんな切迫する状況が数分。
突如として膨張した魔力が弾け、小規模な爆発を起こす。
霧散した魔力が一か所に集まり、人の形を形成していく。
現れたのは見目麗しい少女だった。
だが、異なるものが一つ。
その純白の翼である。
そこに現れた少女はその背に、自分の背の丈以上の全長を持つ翼を携えていた。
それはその少女が天使である証拠である。
「……私を呼び出したのは、貴方?」
抑揚のない淡々とした、無機質な声が響く。
そんな彼女の言葉に静かに頷くセクラ。
少女が一歩、足を踏み出す。
それと同時に、周囲の景色が岩肌の荒野へと変わり、少女の姿が消えた。
「何の用かは知らないけど、私を呼び出していいのは、《全能神》様だけ。」
そんな声がするのはセクラの背後だ。
だが、移動したことに気づかないセクラでもない。
その声と同時に振り向き、刹那の内に振り下ろされた拳をその剣で受け止める。
セクラの足元がベッコリと凹み、小規模のクレーターが出来る。
とはいえ、この程度ではセクラも膝は付かない。
「……結構登場まで焦らしてくれるもんだから、もうちょい強いのかと思って焦ったが、この程度か。」
「……?」
最初は、拳を交えた事も無い天使と言う存在に畏怖していたセクラだったが、その力を知った今、特に引き腰で行く必要もないと悟る。
なればこそ、今出せる最低レベルで戦う。
何故か?
それは、彼が今、師匠である老婆に出されている課題内容がそれだからである。
「悪いが、俺の身の為に少しやられてくれ。」
その瞬間、天使の上半身が抉れ、突風が吹き荒れる。
それは、セクラがその拳を天使へぶつけたためだ。
その際に起こった後ろ風に飛ばされた天使の下半身は、数十メートル離れた位置に落ちる。
「……マジかよ……もうちょい抑えられるようにならんとな……。」
頭の後ろをポリポリとかきながらそう呟くセクラ。
胸の前で掌同士を合わせ、数秒目を瞑る。
そして、出入り口の扉の前まで行くと【訓練用模擬世界】の魔法陣に流れていた魔力を遮断する。
空間拡張の魔法と、幻影魔法が解け、元の質素な空間に戻る。
地面に出来上がったクレーターは、自動修復の魔法が発動して、後で奇麗さっぱり元に戻っている。
「さて、今日もアレの制作の続きだ。」
セクラが呟き、【訓練用模擬世界】から出て行く。
【訓練用模擬世界】の中で蠢く、その存在を確認しないまま──。
そんな日の夜。
彼の枕元に一人の少女が現れる。
少女は枕もとで呟いた。
──「また会えたね♡」
そうして、今に至る訳なんだが……。
結論から言おう。
こいつは、途轍もないMだった。
後から神様に聞いた話だけど、いっつも此奴の事殺しまくってやみかけてたから、他にこいつを殺せる奴が現れたのがうれしかったらしい。
押し付けんな!!!
って、叫んだけど「てへっ」って言って帰るし。
俺はそれから毎日此奴のお世話で……。
もうヤダ。
なんでいるんだよ!!
帰れよ!!!
そんな風に言ってやりたいが、この世界で暴れられても迷惑だ。
適当に殺して過ごそう。
……適当に……ねえ。
適当に過ごせりゃあいいけど……無理なんだろうな。
そんな事を心中呟きながら、窓の外から送られてくる視線に目を向ける。
……無理、だよなあ……。
こうして、また新しい歯車が嚙み合い、回り始めたのだった。
謎の視線、その正体は一体……。




