第28話 支配
先日はすみませんでした……。
真っ白な正方形が群となって降り注ぐ。
途中、正方形は瞬時に武器へと形状を変え、攻撃力を手に入れて次々と迫ってくる。
俺は、それを交わすことなく手元にある剣で全て捌いていく。
カキンッカキンッと、金属同士がぶつかる甲高い音が毎秒響く。
いや、秒を数えるほどの間も無かったかもしれない。
「ハハハハハハハ!!! あれ程の大見得を切っておきながら、その程度か?」
「初対面の歳下によくそんな行儀の悪い言葉をつかえるな!」
俺はそれだけ言うと、間もおかずに迫って来る大量の武器を全て弾いていく。
右へ左へ、飛来する全てを。
その間に、幾十、幾万もの魔法が展開されるのを感じる。
「全部干渉系って、どんだけ干渉するのが好きなんだよ?」
刹那、迫りくる武器が全て空中、その場で固まり、気が付けば手足に、魔法によって作り出された鎖を縛り付けられていた。
これで一体何をしようと言うのだろうか?
武器を全てぶつけるとかか?
「それでは武器をかわせまい!!」
oh BINGO☆
途端、先程の倍の速度で迫る武器達。
勿論身動きが出来ない俺は避ける術もなく、全ての攻撃を諸に食らう。
何故結界を発動しないのか、と言うと、俺の事を縛るこの鎖の魔法術式が結界を発動すると魔法が爆発するように術式が組まれているからだ。
何方をとってもダメージは避けられない。
ならば、自分の魔法を媒体として爆発するこの鎖でダメージを受けるよりも、迫りくる武器からダメージを受けたほうが、軽傷で済むという事だ。
力同士が俺を通して地面に伝わり、地面が罅割れ、ベッコリと凹む。
その瞬間に粉塵が上がり、周囲が白煙に包まれる。
だが、その場に只々飄々とした声が響く。
「ハハハハッ! やはり、自分が強いと思っている英雄様気取りを殺すのは気分がいい。さて、さっさと目的を果たさせてもらおうか。」
そんな声と共に何か魔力を感じた。
ので、俺は声を発する。
「なあ、自分が強いと思ってる最強悪役気取り様? どちらへ行こうとしているのかな?」
刹那、俺が放った言葉に乗った魔力が白煙を掃った。
その光景の後、改田が此方を振り向く。
「な、何故、生きて……!?」
俺は少し力を入れて俺の体に巻き付いた鎖を引き千切る。
引き千切られた鎖は、淡い紫色の粒子になって舞っていく。
それを見ながら俺は、親切に改田の質問に答えを返す。
「簡単な事だ。俺があんな攻撃程度じゃ死なないってだけだろ。」
それと同時、魔力を練り上げ、咄嗟に組んだ拙い出来の初級魔法を改田に放つ。
それも、炎系魔法の中でも特に最弱と呼ばれる火魔法の【フレイ】と呼ばれる魔法だ。
刹那、爆炎と粉塵が上がり、周囲の温度を幾度か上昇させる。
「くっ! 何だ今の魔法は……! こんな威力の魔法、見た事が無い……!!!」
なんてほざいているが、最も弱い初級魔法である!
つまり、改田は俺の適当よりも弱いのである。
適当と呼べる出来でも無かったが。
「今のか? ただの初級魔法だぞ? それも、最弱の、な。」
俺の言葉に対し、眉間に皺を作る。
どうしたのだろうか?
「なるほど、教える気はないと……ああいいさ、どうせはその程度! 今の魔法で魔力の半分は持って行かれただろう!!」
いや、逆に言えば一秒間に回復出来るくらいの魔力量しか使っていないが。
……とは言わないでおこう。
めんどくさそうだし。
「ならば、今度こそ仕留めてやろう!!!」
改田がそう言うと同時、ごく微弱な魔法を感じた。
刹那、空間に亀裂が入りバックリと割れ、口を開く。
そこから出てきたのは、俺がいた世界で、最強と謳われていた邪竜、『ボロメデス』だった。
白い空間だからか、その漆黒の体躯がとても映える。
その眼は赤色に輝き、魔力を帯びている。
そして、放たれる魔力は魔王に勝るとも劣らぬ邪悪かつ膨大な物だった。
とはいえ、こんなモノが来ても特になんとも思わないのだがな。
実際、知能があるこの邪竜は俺を見て引き腰になっているしな。
「行け!! 奴を八つ裂きにするのだ!!!」
そう言うと一種の精神系支配魔法を発動する。
その瞬間、引き腰だった邪竜が俺に咆哮をあげる。
その尾を振り、俺にダメージを与えようとする。
脇腹にその尾が当たり、大きく吹き飛ぶ。
その速度は秒速百メートル。
結界を展開し、それを支えに停止する。
が、服についた埃を掃っていると、直ぐに二の手を向けてくる邪竜。
俺に向けて数十の魔法陣を描き発動する。
【竜炎地獄】。
竜の中でも最上位の個体だけが使える固有魔法である。
発動と同時、目の前が深紅に染まる。
温かい。
「俺、熱いの嫌いなんだ。」
そう言いながら【氷結魔法】を発動する。
刹那、炎が凍る。
本来ならばありえないだろう。
だが、それは起こったのだ。
何故なら、俺が此奴よりも強いからだ。
「何だと!?」
改田が叫ぶ。
だが、それを気にすることなく俺は炎と一緒に凍ってしまった邪竜を殴り飛ばす。
その邪竜、基氷塊は一気に埃の様に塵ぢりに砕けていく。
「よし、始末完了っと。」
俺はそう言いながら改田の方に足を進める。
改田は俺が近付くにつれ、汗を流すようになる。
そして、次の瞬間に一つの魔法を唱えた。
「【時停】!!!!」
それは、一定間、時間を止める魔法だ。
だが、俺はそれを真っ向から破る。
「時間なんて止めても意味ないぞ、ただ時間の理の外を動けばいいだけだからな。」
そう言いながら止まることなく改田に近付く。
「く、来るな!!」
「ヤダね。」
俺はそう言いながら改田をぶん殴る。
そうしてやれば、奇麗な弧を描き、数十メートルを飛んでいく改田。
俺は此奴が足掻き続ける限り攻撃をやめるつもりはない。
そして、此奴もそう簡単にやられるつもりはないみたいだ。
「……クソ……後悔するなよ。この私を、本気にさせたことをっ!!」
刹那、錠前の捻られるような音が響いた。
その次の瞬間に改田の体から魔力が溢れ出す。
ふむ、何をしたのか知らないが、今までの比ではない力を持っているのは確かだ。
「スキル、《時空支配》、発動。」
改田はそう静かに吐き出すと、その手を俺に向けて何かの魔法に魔力を注ぐ。
瞬間、正方形立方体が数万ほど浮かび上がり、それぞれ剣を模した形をとり、穂先を此方へ向け飛んで来る。
「同じのはさっき見たぞ。」
「同じかな?」
同じだろう。
どう見ても。
変わったのなんてその威力位だぞ?
先ほどまではただ物を落としている程度の威力だったのが、スポーツカーが全力疾走で突っ込んでくる程度の威力になっただけだ。
「死ね!!!」
その全てを受け、体がだんだん重くなっている事に気づく。
そう、体に制限がかかっているのだ。
魔力の使える量、思考速度、使える筋力量、全てに。
だが、この程度では意味はない。
「それで貴様の今の実力は蟻も同然だろう。少しもの慈悲だ、楽に殺してやる。」
改田が言いながら剣を振るってくる。
だが──
──「無意味だ。」
俺はその剣を掴み取り、へし折る。
さて、こっちもそろそろ終わらせにかかるとしようか。
「そっちも本気を出したことだし、こっちも少し普通に魔法を使わせてもらうぞ。」
俺はそう言い、指を弾く。
──パチンッ。
はじけるような音が響き、その場に変化が起こる。
剣が全て紙のようになりヒラヒラと舞っていくのだ。
「本物の時空支配ってものを見せてやるよ。」
俺は続けて天に手を伸ばし、魔法陣を描く。
それは時空支配系魔法の中では中級程度の物だが、此奴を死なない程度に殺すには最適な魔法だ。
「──【千羽鶴】。」
静まり返る空間に、ピラピラと小さな音が聞こえ始める。
だがそれは次第に大きくなり、ついには騒音へと変わる。
この空間が紙のように捲れているのだ。
刹那、一羽の折り鶴がひらひらと舞ってくる。
それは二羽、三羽と増えていく。
気が付けばこの空間には穴が開き、外の景色が見え始めている。
そう、この魔法は空間を一つ消してしまうのでこういった状況下でしか使えないのだ。
そして、全ての空間が消え、鶴が全て宙を舞うと俺はそれを全て操り、改田に一撃与える。
「【終間】。」
それは定められた空間、理に終焉を齎す魔法だ。
そう、それは、どんな理に逃げようとその存在がある理を全て、その存在があるその地点だけを完全に終わらせる魔法。
これはうざかった敵用に作った魔法だが、こういうやつには最適だ。
「な、何だ! これは何なのだ!! 体が、崩れていく!!!」
そう、理を壊してしまえば耐えられなくなった体は崩壊する。
さよならだ。
「いやだ!! 消えたくない!!! 私が!! 私がこの世界の神になるために!!!! あがっ、あっ──!!!」
そんな事を叫びながら塵となって舞っていく。
悪いな、お前みたいなのは消さないと終わらないんだ、なにもな。
その断末魔が消えると同時、この戦いは終わった。
主人公、意外と冷血なキャラにしてしまった……。
次回、エピローグです。




