第26話 黒幕
──ガキィン!!!
火花と共に、そんな甲高い金属音が弾けた。
それは、少年Aが振り下ろしたアダマンタイト合金製の剣と──
「なにィ……!?」
──俺の“手に握られる”ミスリル合金製の長剣がぶつかる音だった。
「いつの間に……!?」
そんな事を叫ぶと、反動をつけ、後ろへ飛び退く少年A。
そして、その間、およそ0.1秒。
周囲が彼の存在に気が付いたのは、その一秒後だった。
彼の姿を見て、月夜が声を上げた。
「……平島君……?」
ほう、彼は平島と言うのか。
平社員を務めて良そうな名前だ。
「欠陥者ぁ……!」
醜く顔を歪め、そう叫ぶ少年A──基、平島。
その目は充血し、瞳孔が常に開いている。
過度の興奮状態にあるようだし、どうしたのだろうか……。
ん? この状態、見た事あるような──
「死ねえ!!」
──って、考えてる場合じゃなさそうだな。
獣の様に剣を持つ右手は上げ、他の四肢を地につけている平島。
だが、次の瞬間にはその姿は掻き消え、月夜の目の前に現れる。
移動をしたようには見えない……と言うより、移動をする予備動作やモーションを一切含んでいなかった。
だと言うのに、その存在は月夜の目の前にある。
それを可能にするのは魔法かスキルか、将又別の何かか……。
俺はそんな事を考えながらその手に持つミスリル合金製の“槍”を平島に投げつける。
その穂先は平島の身に深々と刺さった。
だが、それは見間違いか、次の瞬間には平島の姿は元の位置にあり、槍も何も刺さってはいない。
俺の槍が突き刺さっていたのは、月夜の奥に起立する岩壁だった。
「チッ!! いつの間に槍なんて取り出しやがった……!」
そう言うと今度は俺目がけてその剣を振るってくる。
だが、その動きはとてもゆっくりだった。
そう、ゆっくりだったのだが、その攻撃をかわす事が出来ない。
俺は一つの魔法を発動し、槍を呼び戻す。
だが、悪い夢の様に、その魔法は発動しなかった。
何故だろうか?
何かが俺の魔法に干渉するような感覚があったが、いったい誰が──
──「死ねえ!!!」
俺の意識を引き戻したその声は、既に振り抜かれたその剣に振動して俺にしっかりと木霊した。
だが、その剣はしっかりとふり抜けておらず、俺の肩に突っかかっていた。
「……何だ、魔剣だったから結構危なそうだと思っていれば、特にだったな……。」
俺はその剣を握り締める。
すると、ミシミシと軋む音。
次の瞬間には、その剣は砕け散っていた。
「なっ!?」
その事に対してか、平島が声を上げる。
そして、それと同時、この症状の正体を思い出す。
「悪いが、色々と解った処で、お前は一旦寝ててくれ。」
俺はそう言うと、平島の鳩尾を強めに殴る。
それと同時、其処に魔力を流し込む。
「カハッ……!!?」
一気に体内の空気を吐き出し、気絶する平島。
そんな彼の体に触れ、俺は【解離】と言う魔法を使う。
「これは……なるほどな……。」
俺はそれだけ呟くと、虚空に向かい、魔法を発動した。
「──【虚空破壊】。」
刹那、空間に亀裂が走った。
それは広がっていき、ガラスが割れるような音を立てて弾ける。
するとそこに、、白い正方形の箱の様な物が現れた。
いや、所々に方眼の様な四角いマス目が描かれているが、とりあえずは箱だ。
「一体、これはなんだ?」
それを見てそう呟いたのは小枝だった。
その正体を俺は知っている。
「【空間魔法・極】。」
俺は小枝の声に答えるようにそう呟いた。
この魔法は、【空間魔法】の最上級、【空間魔法・極】に部類される魔法の一種だ。
見た事が無い術式のため、魔法名は分からないが、この魔法を発動した、そして、平島をあんな風にした奴の正体は既に分かっている。
俺はその白箱に向かってこう投げかけた。
「さっさと出て来いよ、黒幕が出てくるのは早い内の方がいいぞ。爺さん。」
その言葉が届いたのか、白箱のマス目からブロック状に穴が開いていく。
そして、そこから出てきたのは──
「いやはや、気付かれるとはねえ……。どうしてわかったのかなあ?」
──入学式の日、俺達簡潔な演説をしてくれたあの爺さんだった。
俺は金色の魔力の正体を、この事件の黒幕を見ながら横に伸びているミスリル合金製の槍を引き抜く。
そうして呟いた。
「知りたいなら力ずくで聞き出してみろよ。」
それと同時、槍の穂先を地面に叩き付ける。
──こうして、最後の戦いの始まりを告げるゴングが鳴り響いた。
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