第25話 成果
今回、長いです……!
もう少し短く済ませるはずだったのですが……。
ですが、これで最早後は主人公が無双するだけです!
少し不定期気味ですが、楽しんでいただけると幸いです……!
──【魔導制浮遊低空機】が樹海を猛スピードで進んでいく。
そのために起こる向かい風を一身に受けながら、俺は【千里眼】を使ってその先を見据えていた。
魔族の数は凡そ十万程。
そして、交戦中の【異能騎士】は14人程。
死傷者はまだいないみたいだが、少し押されているようだ。
「もう少し急げるか?」
「ああ。だが、これ以上スピードを出すと君たちの体が吹き飛ぶぞ。」
そんな事を言うあんたはどうなんだ。
なんて事を言うほど野暮でもない。
確かに、普通なら現在速度の140キロですら死につながるレベルだが、俺達が異世界帰還者という事もあり、耐えられる事を知っていてこの速度を出しているのだろう。
だが、これ以上となると生死以前に体が吹き飛ぶのが先になるという事か。
うむ。
「大丈夫だ。もっと速度を上げてくれ。」
「本気か? ……どうなっても知らないぞ。」
俺の方を見てそんな事を言ってくる筋肉。
きっと俺の顔を見て平気そうだと悟ったのだろう。
筋肉はゆっくりとハンドルを握り締め、アクセルペダルが平らになるほど強く踏み込む。
俺はそれを見て、月夜に結界魔法をかける。
さすがに月夜には少しきついだろう。
……人体の構造的に。
景色が途轍もない速度で通り過ぎていく。
そして、出口がどんどんと迫ってくる。
それは、此方が向かっているという感覚よりも、出口の方が此方へ向かって来ているという感覚に近い、いや、そう錯覚するレベルだ。
木々が俺達を避けていく。
そんな錯覚も気が付けば終わり、俺達は樹海を抜けていた。
勢い良くがけから飛び降りた【魔導制浮遊低空機】の腹を荒野が触れる。
ガリガリと音を鳴らし、その緩まったスピードを再度取り戻し魔族の元へ一気に走り抜ける。
「もうそろそろだ! 攻撃の準備はできてるな!」
「ああ! このまま突っ込んでくれ!!」
俺の声を聞いて筋肉は口角を上げると、更にスピードを上げる。
そして、次の一瞬だった。
気が付けば俺達は魔族の群れの中心に放り込まれていた。
否、そう錯覚するほど、気が付けば周りには魔族しかいなかった。
そう、【魔導制浮遊低空機】のスピードもあるが、一番は魔族の群れが俺達を一気に囲んだのが原因だ。
何故だろうか?
「貴様は人間か?」
と、突如そんな声を発したのは、相手側。
つまり、魔族の方だった。
更に、気が付けば、【魔導制浮遊低空機】が空中で固まっている。
魔族が【魔導制浮遊低空機】を掴み持ち上げたままなのだ。
俺はそんな魔族の眼を見て、質問への答えを返す。
「ああ。勿論な。」
それと同時、俺は右手に魔力を溜めて勢い良く振る。
刹那、目の前に大穴が開く様に、俺の攻撃を与えた方向だけ魔族が消え失せていた。
その隙に【魔導制浮遊低空機】はそのスピードを取り戻し、魔族の群れを抜ける。
だが、直ぐに追いつかれて御仕舞だろう。
何せ、魔族の体は人間なんかとは比べ物にはならないほど頑丈に出来ているのだから。
この【魔導制浮遊低空機】なんかよりもさらに速い速度で迫ってくることだろう。
俺は次の攻撃に備えて魔族の方向へ体を向ける。
──刹那、魔族の群れが一気に吹き飛んだ。
俺は頭の上に疑問符を浮かべてその方を見続ける。
すると、下の方に見覚えのある魔力反応を感じた。
その魔力を感じた方へ目を向けると、やはりと言うべきか、其処には昴と小枝が立っていた。
「おい世冥!! こんなおもしれ―事すんなら俺達も呼べよ!!」
俺と目が合うと前傾姿勢を立て直し楽しそうにそう声をかけてくる昴。
小枝は呆れた様にそれを見ているが、存外楽しそうだった。
それと、昴と小枝の後ろから更に援軍、出雲やヘルパー少女、教師陣がわんさかと迫っていた。
いいな、この感じ。
久しぶりの一致団結感。
緊迫感……!
「おいおい、何だ今の!? 魔族の群れが一気に消し飛んだうえに、魔族を一撃で討伐だと!? Aクラスってのはこんな化け物揃いだったのかよ!!」
俺の前でそう叫ぶのは、ここまで運んでくれた筋肉だ。
よし、ここまでありがとう。
帰っていいぞー。
俺は月夜を連れ、【魔導制浮遊低空機】を飛び降りる。
「おう! で、何か作戦はあんのか?」
そんな事を問うのは昴だ。
勿論そんな物はない。
ないが──こう答えておこう。
「ある。」
「どんな作戦だ?」
次は小枝の言葉だ。
それに俺は、にっこりと悪党の様な笑顔で答える。
「『とりあえずぶっ飛ばす』だ!」
そう言うと、俺は間族の方へ向き直り、魔力を込めた拳を振り抜く。
刹那、魔族の大群が半分程ごっそりと消え失せる。
それが……かは分からないが、きっとそれが合図となり、『魔族殲滅作戦:通称・とりあえずぶっ飛ばす作戦』が決行された。
魔法、剣術、スキルなどが飛び交い、其処は轟音で包まれる。
だが、そんな物は構わず俺は月夜に告げた。
「これで時間稼ぎにはなるだろ。それじゃあ、始めるぞ。」
「……うん。特訓の成果を、見せる!」
俺の言葉を聞いて、いつもは小首をかしげる月夜が即座に頷く。
俺は少し驚き、月夜の方を見てしまう。
すると、何やら魔力を練り始めている。
何だろうかと思っていると、月夜が口を開く。
「昔は扱いきれなかったこの能力……今こそ、扱いきってみせる!!」
そう叫ぶと同時、紫白色の魔法陣が十個ほど展開される。
だが、そのどれもが歪に歪み、乱雑な魔法構築になっていた。
「……【破滅魔法】か。」
【破滅魔法】、それはコントロールをすることは出来ないが、威力だけはどんな魔法も敵わず、ただ魔力を流すだけで使える魔法だ。
更に、その使用者の魔力を良質にし、扱いやすく、尚且つ扱いづらくする
これだけ聞けば、使い方を考えれば、使い勝手の良い魔法の様に思えるだろう。
だが、それは違う。
【破滅魔法】は発動したら最後、全てを破壊するまで、もしくは魔法が何かの干渉により破壊されない限り止まらない。
さらに、魔法の構成が歪であり乱雑な作りの魔法、まさに【破滅魔法】は、他の魔法の干渉を受けづらい。
つまり、止める事が難しい魔法なのだ。
だが、そんな魔法を月夜は制御しようとしている。
無理なことは確かだ。
だが、その可能性の一つを確かめてみてもいいだろう。
「【極式破滅魔導砲】!!」
刹那、紫電が迸り、紫電が駆け抜けた先には紫白色の火炎が噴き出す。
その様はまさに地獄絵図。
だが、勿論制御は出来ず、いたるところで被害が出ている様子。
「【静止】」
俺はそんな魔法に他の魔法を干渉させ、破壊した。
「……やっぱり、駄目だった……。」
俺が魔法を破壊すると、月夜が膝から崩れ落ちる。
「やっぱり……私には無理だった。ただ壊す事しかできないこの能力で、何かを救ってみたかった……。でも……!」
「言っておくが、それは殆どの奴がコントロールできないから今のお前じゃ到底無理だぞ? 諦めろ。」
「……へ?」
俺の言葉に、その潤みかけた瞳を向けてくる月夜。
その瞳を見て、俺は続ける。
「でも、お前がお前の力で救う方法がある。やるか?」
俺は最後にそう問いかけた。
その瞬間、目を大きく見開き、此方に体を寄せる月夜。
「やる!」
「わかった。じゃあ、魔法の術式をお前の頭に直接送り込む。一瞬頭が痛むかもしれんが、我慢してくれ。」
俺はそう言うと、一つの魔法術式を月夜の頭に送った。
すると、月夜が頭を抱えて屈む。
だが、次の瞬間にはゆっくりと立ち上がり、俺の方を見て口を開いた。
「こんな複雑な魔法、私にはできない……。」
そんな一言だった。
だが俺はそれを強く否定した。
「いや、出来る。絶対にな。」
「……無理、こんな複雑な魔法が私に使えるはずない。」
それでも食って掛かってくる月夜に俺は言った。
「やりもせず決めつけるなよ、そんなだからお前はその能力もうまく扱えないんだろ? なら、俺が出来るって言った事を、人がお前に出来ると思った事をやって見せろよ。」
それは、師匠から昔受けた叱咤の言葉だった。
だが、俺はそれを受けて自分が決めつけて諦めたら、そこで終わってしまうと、そんなのは嫌だと諦めるのをやめた。
いわば、諦めるのを諦めた、やめる事をやめたのだ。
「確かに、昔のお前にはできなかったかもしれない。だけど、今のお前は変わったんだろ? 俺との特訓の成果を見せてみろよ。今度は自分の世界救って見せろよ。」
俺が続けてそう言うと、月夜は何かに気付いたように、決意を固めた様に俺を見た。
そして、次の瞬間こんな事を言ってきた。
「……私に、才能は無いの?」
そう、あの日、俺に向かって縋る様に吐いてきた言葉。
だが、今はただ、その言葉で自分を肯定してほしい様に、ただ俺にそんな一言を呟いたのだ。
だから、俺は一つ、ただ一つの答えを返す。
「勿論な。じゃなきゃお前にこんな魔法使わせたりしねーよ。」
俺はただその背中を押すように、励ますようにそう言った。
その言葉を聞いて、月夜はにこやかに笑い、その目尻に溜まった雫を払った。
そして次の瞬間、目の前の魔族の群れにその瞳を向ける。
そして、魔力を練り始める。
刹那、一つの魔法陣が浮かび上がった。
自転車のタイヤほどの大きさの、一つの魔法陣が。
だが次の瞬間には二つに、三つにと、次々と増えていく。
それは、どれもが違う術式の物で、徐々に周辺を包み込み始める。
気が付けば、大地はびっしりと魔法陣で埋め尽くされていた。
それも、月夜を中心として。
「な、何だ? この魔法の同時展開数は? 見た事が無いぞ……?!」
そんな事を呟いたのは筋肉の一人だった。
それに便乗し、魔族も人間も問わず、月夜の方を見始める。
魔族達は取るに足りないと思ったのか、目の前の相手に攻撃を繰り返している。
それが、彼らの敗因だった。
気が付けば、魔法陣は天をも埋め尽くし、最後に月夜の背後にこの一帯を埋め尽くすかのごとき巨大な魔法陣が構築され始める。
それを見て俺は昴達や、筋肉たちに声をかけた。
「ここを墓場にしたくない奴は今すぐに引け!!! 今から、地獄が降るぞ……!!!」
俺が忠告した瞬間、魔族以外、つまり、昴達、筋肉たちが一気に引いて行ったのだ。
そして、最後の魔法構築が終わり、それを告げるように月夜が目をカッと見開き叫んだ。
「【地獄門落星】!!!!!」
その瞬間だった。
天地を埋め尽くしていた魔法が、月夜の背後の巨大な魔法が、魔族の群れの中心へと収縮していく。
魔法が自動的に圧縮されているのだ。
そして次の瞬間には、完全に球体と化した魔法陣の塊が弾けた。
──そこには静寂が走った。
それを打ち破ったのは月夜だった。
汗で体中をべしょべしょにし、膝から崩れ落ちると息も絶え絶えに呟いた。
「不発……。」
そう、何も起こっていない。
この場には一切の風すら起こっていない。
だが──
「いいや、成功だぞ。」
──次の瞬間、俺達は何かに引き寄せられるように後ろから吹く風に押された。
その風が向かう方を見れば、それは魔族の中心、月夜が魔法を放った場所だったのだ。
その吸い込みは徐々に大きくなり、気が付けば、其処には黒い惑星があった。
すべてを飲み込み、終わりへと導くその惑星──ブラックホールが。
必死に足掻く魔族達は、それでも次々と吸い込まれていく。
だが、逃げ延びた魔族もいるようだった。
「打ち漏らした……!」
「いいや、未だ次がある。」
俺が月夜の一言にそう答えると、天が降って来るような、けたたましい音が聞こえ始めた。
その正体は、残った魔族を優に超える大量の隕石だった。
その一つ一つは深紅に燃え盛り、当たる物を全て蒸発させる。
クレータを山ほど作り、魔族も気が付けば全滅していた。
そして静寂が包む。
次の瞬間、誰かが声を発した。
「勝った……勝ったぞ!!」
この声は筋肉の物だろうか?
だが、そう甘く行かないのがこの世界だ。
俺は遠くで揺れ動く“金色の魔力”を睨みつけて、その拳へと魔力を注いだ。
刹那、目の前に一人の青年が姿を現す。
そして、その手に持つアダマンタイト合金製の剣を振り下ろしてくる。
そんな青年の正体、それは、あの日、鍛錬の帰りに絡んできた男子生徒だった。
此処からは……誰のターン?
【ご報告】
この作品、『顔がセクハラだと言われ続けて本当にセクハラをしたら異世界に転生したので最強になったら異世界のようになった出身地(地球)に召喚されたんだが!?』を、カクヨム様にも投稿させていただきました。
そちらの方では、閑話などもあげたいと思っていますので、ご確認いただけると幸いです。




