第15話 初日
──高機動車に揺られる事、早2時間。
徐々に太陽も空高くへと昇っている。
そんな陽気に当てられて、眠気が襲ってくることも。
「……あー……お眠りになるのは構わないのですが、私に凭れ掛かるのはやめていただけますか? 背が縮みます。」
そんな声でハッと目を開く。
その声の主は、黒縁眼鏡のおかっぱ少年、出雲だった。
背丈は俺の胸元に天辺が来るかどうかと言う程に小さく、幼げな見た目がとても愛らしい。
とはいえ、既に3年と言うのだから人の成長速度と言うのは千差万別だ。
「貴方、今私に対し失礼な事を考えていますね?」
おっと、考えが読まれたようだ。
愛らしい顔に似つかわしくない、険しい形相。
怖い怖い。
「ソンナコトアリマセンヨ?」
「カタコトですが……?」
眉間に皺を寄せて詰め寄って来る出雲。
ごめんて。
「ま、まあ、それは置いといて……これから何を行うんです? このバス(?)には魔物除けの魔法もかかっているみたいですし、いきなり現れた魔物と戦闘、という事ではないですよね?」
俺は強引ながらも、話を変える。
「置いとける話ではないですが……まあ、そうですね。察しの通り、“いきなり現れた魔物との戦闘ではありません”ね。」
「……もしかして、元々仕込まれてる魔物と……何て言いませんよね?」
「ご名答。良い勘ですね。」
「……マジですか?」
仕込みという事は、本来現れる魔物よりもはるかに強いという事だろう。
それを相手にどうするかと言うのが今回の授業の肝なのだろう。
この遠征は1年だけなのだろうか?
「これは、1年だけなんですか?」
「……と言うと?」
「この遠征が1年の生徒だけなのかという質問です。」
「ああ、いや、時期をずらして2,3合同の遠征と4,5,6合同の遠征がありますよ。」
そういえば、ここは六年制だったか。
だとしたら、普通は三年四年あたりから徐々に始める方がいいのではと思うが。
「まあ、本来なら3,4年から始めるのが通という物なんでしょうけど、この学園は特殊だからね。」
ふむ、特殊……か。
確かにそうだ。
いろいろ問題があるからな。
それに、もっと早く力をつけてもらわなくてはならないと言うのも事実か。
いろいろ考えられてはいるようだが、その詳細を教えないのは、その一つなのだろうか?
「あと、貴方が何も知らなかったのは担任が何も話さなかったからですよ。」
担任ッ!!
ここまで担任に殺意を覚えた事は無いかもしれないな。
──「ヘックチッ! ズズ……スヤァ。」
俺は一つ溜息をついて、これからの流れを聞く。
「まあ、大体は解った。それで、これからの流れはどうなるんだ?」
「む、いきなりタメ語ですか。生意気ですね。まあいいです、答えてあげましょう。」
まず、明日の準備のために、付近に設けた宿泊施設に一泊し、本格的な授業は明日かららしい。
つまり、今日は自由であるという訳だ!!
よーし!!
ゴロゴロするぞお!!
「なお、即座に睡眠などは許しませんからね。私は貴方に付き添いますよ。」
ゴロゴロは無理みたい。
と言うか、なぜ俺に付き添うんだよ。
「貴方がサボらないか確認するためですよ。」
俺って信用されてないの?
何だろう、悲しいな。
──こうして、長い一日はまだ続くようだ。
次回はとある真実が露呈します。




