第11話 何故
今回は殆ど月夜目線です!
月夜の過去が少しだけ見えるかも……?
──「……あっ……!」
と言う月夜の声と共に、今日通算95回目の破裂音が聞こえてきた。
とは言うが、80回あたりからかなり減っては来ている。
もう少し上達しないと、次の段階へは進めない。
俺はまた新しく【魔鉱水】を取り出して月夜に渡す。
月夜はまだまだ魔力が溢れるほど余っている。
日が完全に落ち切る、もしくは月夜の魔力が完全になくなるまで今日の特訓は続けるつもりだ。
まあ、今日で全部が終わる筈もないんだが。
既に茜色に染まり始めている空を見て、俺はそう思った。
減ってきているとはいえ、短時間に15回も【魔力暴走】を引き起こしている時点で今日中に終わらせるのは無理だ。
つまり、明日から更に猛特訓を続けなければいけないという事だ。
これは月夜のためにやっている事なので、悪く思わないで欲しい。
──まだまだ魔力の量には余裕がある。
だけど……彼──三簾 世冥の眼光に威圧されて集中しきれない。
さっきから変な水を破裂させてばかりだし。
本当にこんな事で魔力操作が上達するのだろうか?
あ、また……。
「……はあ、まあ、一応は破裂も少なくなってきたし、帰るか。日も暮れてきたしな。」
「……わかった。」
私は世冥に従って、魔力の放出を止める。
やっぱり、私には才能が無いのだろうか。
自分の掌を見つめて心の中で独り言ちる。
赤く腫れあがった掌、さっきから起こっていた破裂の所為だろう。
握るだけでじんわりと痛みが広がっていく。
開けば風にあおられて冷めていく表面の温度。
私の頬を伝う一滴の雫。
涙……?
何故だろうか。
この程度の痛みで泣くような私では無かった筈だ。
なのに……。
──「はっ! 無能が! あっち行けよ!!」
昔の、
──「ふん、欠陥者などこの国に必要ありません。俺達だけでなんとかして見せます。」
昔の、
──「いやあ! 死にたくない!! つくちゃ──
昔の記憶が、今もずっと、私を苦しめる。
魔法が使えなかった、何もできなかった、無力な私の、守られるだけの、逃げるだけの記憶が。
大切な人が次々死んでいく、悪夢が。
力を付けた今でも、延々と私の首を鎖の様に、縄の様に、絞めてくる。
何かを守る事も出来ず、『破滅を導く』事しかできない私が、全てこの私が悪い。
だから、涙を流すなんて、この程度の痛みで涙を流す事なんて、ありえない──いや、赦されない。
でも、そう思っていても、私の眼からは雫が、頬には雫が、垂れて、伝っていく。
「あ、悪い! 手、痛むか?」
世冥が声をかけてくる。
私は考えた。
本当に、手が痛くて泣いているのだろうか?
いいや、本当に痛いのは、心だ。
何もできない自分に、心が泣いているのだ。
だから、本当は何も痛くない。
何も、痛くはない……。
「……私に、才能は無いの?」
気が付けば、私は世冥に問いかけていた。
才能が無いのは知っていた。
だけど、誰かにそれを否定してほしくて、でも、肯定しか返ってこないのは解っていて、微かな望みを持って、聞いてしまう。
そこには希望なんてなくて、望みなんてなくて、私にはいやな現実しかなくて。
零れる涙で、堪えようとしても自然と出てくる、大量の涙で、地面を湿らせてただ一つも希望なんてなくても、目の前にいる世冥に縋り付いてしまう。
腫れた目を、みっともない自分の顔を、世冥に向けて、縋り付いてしまう。
「私に……才能は無いの……?」
同じ問いかけ。
黙り込んでいるのだから、それは肯定以外の何でもない。
なのに、何でここまで繰り返してしまうのか。
こんな問いかけを、何故ここまで繰り返してしまうのか。
それの理由を、次の世冥の一言で理解した。
「あるさ。と言うか、才能がない奴にこんな魔力がある訳ないだろ? これで才能ないとか、どんだけ見る目無いんだよって話だ。言っておくがな、お前は才能がないんじゃなくて、才能をしっかり扱えてないだけだ。」
ああ、そっか。
こうやって、私の問いかけに、否定してくれるって思ったからか。
世冥は其の儘続けて言ってくれた。
「お前は勇者だ。まだ、聖剣の引き抜けていないだけの、立派な勇者だ。」
私の手に【治癒】の魔法をかけながらそう言ってくれる。
ここで私は思った、これから私はこの人に、一生使えようと。
何があっても、この人のそばに居ようと。
だから、もっと頑張らないと。
私は、次の日も、その次の日も、毎日特訓に励んだ。
そうする事2か月。
特訓は次のステップへと進んだのだった。
さて、次の特訓メニューはどうしましょうかねえ……。




