9話 鉄砲隊
「あーわかんねー」
カイトはというと、この国にきてから問題を一問も解けていなかった。そんなカイトに唯一優しくしてくれる勉強担当の人がいた。
「それなー、わかんないっすよねー。」
その人はカイトをいつもを励ましてくれた。名前はスハオイ。スハオイさんはいつもこの問題自分もわかんねーとか言っているが、本当はわかっているんだとカイトは思っていた。
「僕もねー、カイトくんと同じ歳くらいのとき一問もわかんなかったんだよー。」
スハオイさんはいつもそう言っていた。
「ていうか、あと数週間で戦争がはじまるっていうのに勉強なんてします?普通。」
「しょうがないよ。王様が決めた事なんだから。」
という感じで、スハオイさんと仲良くなってからカイトは勉強時間をスハオイさんと世間話をして過ごすようになった。
一方仕事はというと、カイトはアタマワリュウを撃ち抜いてから3日後、戦争の用具運ぶ係から外されて、大人の人たちと一緒に戦争の訓練に混ざることになった。カイトのあの狙撃の技術が目に止まったらしい。
「今日から新しくこの鉄砲隊に入ることになった、カイトだ。みんなよろしく頼む。」
カイトは鉄砲隊のリーダーみたいな人にみんなに紹介された。
「よ、よろしくお願いします。」
カイトはあいさつをしておいた。そこにいる人たちはみんなピリピリしていて、前のただ武器を運ぶ仕事の100倍は緊張感があった。
「それじゃみんな訓練にうつるぞ!」
リーダーが叫ぶとみんな一斉に動き出した。カイトはどこに行けばいいのか分からず、ただその辺をうろうろしていたら、リーダーの人が話しかけてきた。
「そうか、おまえに説明をまだ何も教えていなかったな。
おれはこの鉄砲隊のリーダーをやってるドアリーだ。よろしく。」
「よろしくおねがいします。」
「鉄砲隊は、戦争のときに最前線で戦う隊だ。」
え?最前線?あぶな、こわ
「大丈夫死にはしないさ。なんせバカバッカ軍団は人がそんないないから兵士の量が少ないし。そいつらはあまり強くないからだいじょうぶだ。この前の戦争の時は俺たちが一瞬でやっつけちまったよ。」
「この前の戦争?」
「ああ、テンサーイとバカバッカはずいぶん長いあいだ戦争状態なんだ。3年に1回くらいバカバッカ軍団が宣戦布告の手紙を送ってきて、テンサーイ王国は迎え撃つんだ。いっつもこっちがボコボコにして終わりさ。バカバッカ軍団もいいかげん諦めればいいのにな。はっはっはっ」
カイトはなんだか安心した。
「だが、この数年間テンサーイ王国が勝利を挙げてきたのは我ら鉄砲隊のお陰だ。我々が訓練を怠れば、バカバッカに負かされることになる。だから我らは日々緊張感を持って訓練をしているのだ。」
かっこいいーとカイトは思った。
「よし、武器の説明だ。戦争で使うのはこの鉄砲だ。」
ドアリーがカイトに鉄砲をみせた。それはこの前カイトがアタマワリュウを倒したときに使った普通の鉄砲とはすこし違う感じだった。
「これの名前は、スマートピストルだ。略してスマピ。これは対バカ用の武器だ。」
ドアリーの説明によるとこのスマートピストルという武器は弾の中に数式が埋め込まれているので、バカに向かって打つとすごく凄いことになるそうだ。要するに、リャカとかがやってるペンを構えて頭良さげな事を言ったらビーム出るやつの鉄砲バージョンで頭良さげな事を言う時間を省略できる優れものらしい。
「それじゃさっそく訓練だ。」
「はい」
「あそこの的に向かって打て!」
ピュンピュン!
銃口から青白い光が飛び出した。その光は的を命中し、パリンと音と共に消えた。
「すごいぞ!カイト!こんな事できるようになるには普通の人なら半年はかかるぞ!やっぱりお前は俺の目に止まっただけあるな!はっはっはっ!」
カイトは半年の間くだらない射的のゲームをやっていて良かったと思った。
「よし、どんどん特訓するぞ!」
カイトはなんだか楽しくなって結局その日カイトは夜までずっと訓練をしていた。
その様子を窓から見つめる影。
「どうやら、わしらは物凄い戦力を手に入れたようだな。」
王様がにっこりしながらつぶやいた。