8話 気がかり
どすっと音と共にアタマワリュウが地面に落ちた。
「ひゃあーーーー」
フトリンとホソランがクチバシから抜け出して、走って戻ってきた。どうやら無事なようだ。
「ありえない!あなたすごいのね!」
リャカがカイトを大絶賛した。王様も、おぬしすごすぎじゃわっはっはーとか言っている。
「ありがとうな。まさかお前に助けられるとは!」
フトリンとホソランがカイトのところに寄ってきた。
周りにいた街の人たちからは拍手が巻き起こった。
「カイト、俺たちが悪かったよ。これからは仕事押し付けたりしない。今日から友達だ!」
ホソランがカイトに手を出してきた。
「お、おう。」
カイトはその手をがしっとつかんだ。
「あれ?そういえば、なんで王様宮殿の外に出てきていたんですか?」
リャカが聞いた。たしかに、なんでいっつも宮殿の中でのんびり長〜い数式を解いてる王様が外に出てきていたんだろうとカイトも思った。
「ああ、それは、外から物凄い暴言が聞こえたから来てみたんじゃよ。正義の国の住民は暴言なんて滅多に言わないからな。」
カイトは顔を赤くした。
その日を境にカイトはフトリンとホソランと一緒に仕事をするようになった。2人はもうカイトに仕事を押し付けるようなことは、しなくなり、カイトのことを手伝ったりした。
一方、勉強はというと、カイトはまったくついていけていなかった。あの日、フトリンたちにぶっ飛ばすぞとか粉々にするぞとか言ったのを王様に聞かれたので、毎日の勉強時間がさらに1時間増えた。カイトは見たことのないような式とグラフを前にいつもただボケーとしているだけだった。勉強担当の偉そうな人に、もっと簡単な問題はないのかと言ってみたら、馬鹿用の問題などないと言い返された。カイトはバカバッカがこの国を離れていったときの感情がすこしわかったような気がした。
ある日、カイトは王様の部屋に王様用のすっごい問題集を持って行った。
「失礼します。」
カイトは王様の部屋のドアをノックして中に入った。なかにはいると王様が困ったような顔をしていた。
「うーむ、困ったのー」
王様はただじっと机の上を見つめている。
「どうしたんですか?王様」
カイトは王様に話しかけた。
「あー、この問題が解けないんじゃよ。」
そこにはなんか複雑そうな数式が書いてあった。
「この問題は、わしら王族が代々引き継いでいるんじゃが、今までに誰も解けたことがないんじゃよ。どうにかわしの代で解ききりたいんじゃが、もう何年も答えが出せん。」
この国で1番の天才の王様でさえ解けない問題があるのかとカイトは思った。あと戦争前にこんなどうでもいいことしてもいいのかよって思った。
「ああ、そんなことよりもっとわからんことがあるんじゃ」
王様は机の引き出しからなんかに小さい機械みたいなのを取り出した。
「何ですか?これ」
カイトは聞いた。
「わしも知らん」
王様は答えた。知らんのかい。
「これはこないだ現れてカイトが倒したアタマワリュウの頭についていたんじゃ。」
「まず、この時代にとっくに絶滅したアタマワリュウが生きていることが謎なんじゃ。」
「へー謎ですね。」
「気がかりはこれじゃ。この機械にバカバッカ軍団のマークが掘ってあるんじゃ。」
バカバッカ軍団?なんでここにバカバッカが出てくるんだ?
「なんだか分からんが、なんだかすごい怪しいと思わぬかね?」
王様がカイトに問いかけた。
えー?おれに聞かないでー。