4話 正義の心
「さあ!あなたの家を探しましょう」
リャカが言った。
「もともとこの国の人なら家があるはずよ。家族もいるはずよ。一件ずつあたって探しましょう。」
「え、いや、多分ないと思うんですけどーー」
と、カイトは心の中で言ったが、リャカがめっちゃ張り切っているので、言い出せなかった。
2時間後、もう外は暗くなった。
「どこにもなぁぁぁぁぁぁぁあいぃぃ!!!」
王都のなかの全ての家を周りきったところでリャカが叫んだ。
「だからないんですって」
カイトは言った。
「何!?あなた家がないことを知っててわたしに2時間も家を探させたの!!?」
「いや、そういうつもりじゃ」
「あなたこの国の人じゃないんじゃない!?だったら家がないのは当然でしょう。さあ出てって!!」
「あのここで寝させてもらうっていうのは、」
「できないわ!!!」
ガーン。カイトはもうへとへとだった。7時間王都まで歩いて、2時間家を探し回った。王都までくれば、ここはどこなのか、とか何が起こっているのかとかを聞こうと思っていたのに。なにも成果がなく、しかも王都に入れてもらえなくなった。
「じゃ、お邪魔しましたー」
リャカを背に、カイトは王都の門をくぐった。
その時だった。カイトの後ろから大きな音が聞こえた。
バリーン!
「きゃーぁぁ!」
うしろを見るとリャカが猿みたいなやつに襲われていた。カイトは急いで猿のところに行って、リャカを助けようと手を伸ばした。なんでカイトがリャカを助けようと思ったのかというと、それはリャカがクラスのあかりちゃんに似ていたからである。
がぶっ
「いたぁぁぁ!!」
こんどはカイトの手に猿が噛み付いた。
「覚悟しなさい。アタマワルザル!」
そう言って、リャカは服のポケットからペンみたいのを取り出した。
「カイトくん。あなたの助けなんていらないわ。」
リャカはペンをサルに向けてなんか言った。
「y=ax²+bx+c!!!!!」
すると、ペンの先から赤くひかるビームがでてサルに直撃した。
ぎゃぁぁぁ
サルは突然顔色が悪くなってどっかに逃げて行った。
カイトはいま目の前で起こったことに未だ信じられずにいた。
「今のは、野生のアタマワルザル。しょっちゅう人間を襲うのよ。襲われた時は筆記用具をもってなんか頭良さそうなことを叫べば逃げて行くわ。あいつらバカだから頭の良いかんじの言葉を聞くと気持ち悪くなるらしいの。あなたもそこらへんで野宿するなら気をつけたほうがいいわ。んじゃさようなら。」
「結局帰らさせるんかいっ」
ああどうしよう王都でいいかんじのベットで休憩できなかったのはいいとして、外で寝るとしてもあんなやつがいるのかよ。怖すぎだろ。どうなってんだよ。カイトのに心の中に次々と弱音が生まれてきた。頭良さげな言葉を叫ぶと言っても授業をろくにきいていないカイトの全知識のなかの頭良さげな言葉は「四捨五入」だった。
なんてついてないんだと思いながら再び門をくぐろうとした時、また後ろで声がした。
???「しかと見たぞ今のおぬしの正義の心。」
「えぇ!王様?!」
リャカが叫んだ。