17話 リャカVSスー
「リャカはどこに行ったんだ!?」
フトリンが列に並びながら言った。
「知らないよ。トイレじゃない?」
ホソランが答える。
「こんな時に行くわけないでしょ。結構やばい状況なんだから。」
そう彼が言う通り、この国は結構やばい状況なのである。
役所に移動している市民たちの背後では、バカバッカ軍が大量に攻め込んできていた。いままでの戦争で聞いたことのない爆発音も聴こえてくる。そのような事態に、市民の子どもたちの中には、泣いている人もいる。
「ゆっくりしているとバカバッカ軍がここまで来る。ペースを上げるぞ。」
先頭の兵士が言った。その直後、グサっと音がしてその兵士が倒れた。
「残念もう来ちゃいました。」
倒れた兵士のまえに、怪しげな男が立っていた。
「バカバッカ軍…!?」
☆
「ここから先へは行かせないだと?」
「ええ、あなたはここで倒れてもらうわ」
そう言って、リャカはポケットからペンを取り出した。
ここは山のふもと、リャカの後ろには市街地への道が続いている。
「知ってるだろうが、ヨンバカブカはバカバッカ軍、最高戦力だ。こんな子どもなんか、瞬殺してやるわ。」
「知らないだろうけど、私はこの国の子どもの中で1番頭いいのよ。バカは黙ってて。」
そう言ってリャカはペンを持った右手を前に突き出した。
「y=ax²!!!!!!」
そう叫ぶと、リャカのペンからビームのような魔法が繰り出された。
その光はヨンバカブカ、スーに命中した。
「私たちはね。ペン持って頭良さげなことを言えば魔法で攻撃できるのよ。バカのあんたにはできないだろうね。
攻撃を受けたスーは、一瞬よろけたが、すぐに体制を整えた。
「確かになんか頭良さげだが、あまり痛くないじゃない。もしかして、叫ぶ言葉の頭の良さ具合で攻撃力が変わるのね。」
スーがニヤリと笑みを浮かべながらリャカを睨んだ。
「ククククこれならナイフで攻撃した方が、楽でいいじゃない!!」
「…!!!!!!」
スーがリャカにナイフで斬りかかる。
「うわぁあ!!!!!!!!!!」
ナイフの刃がリャカの肩をかする。そこからぽたぽたと血が溢れてくる。
痛い
痛い
痛い 痛い
痛い 痛い 痛い
痛い
痛い
リャカは恐怖で頭が真っ白になった。こんなに出血をしたのは人生で初めてだった。これが命をかけた闘いなんだとリャカはその時ようやく理解した。
「次はかするだけですむと思うなよ!!!!!!」
たちまち次の攻撃がくる。
逃げなきゃ
スーに背中を向けて、リャカは走り出した。
ズバッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
リャカの背中に激痛が走る。斬られた。背中を、右から左に。
幸い傷は浅かった。だがそれは、彼女から戦意を喪失させるのに十分な痛みだった。
リャカは草むらに転がり込んで、身を隠した。
目から涙が溢れてくる。あの時「待て」と言わなければよかった。
「あれえ、なんなにかっこつけといて隠れちゃうの?根性ないわねぇ」
そうだ。ここで私が諦めたら、皆がやられちゃうんだ。私はこの国一の天才なんだ!情けないぞ!!
ガサっ!
痛みを堪え、リャカは草むらから立ち上がった。
「あら、やっぱり根性あったわね、あんた。安心して、もうすぐ楽にしてあげる。」
スーがナイフを持ってこちらに迫る。
「 いちぃぃ!!!!! 」
リャカが震えた声で叫ぶ。
リャカのペンから弱そうな光が出る。
その光は、スーにたどり着く前に、よれよれと地面に落ちてしまった。
「はっはは、今なんて言ったぁ?『1』だって? パニクってアホになっちまったかぁ、1なんて、全く頭良さげな言葉じゃないわ!」
振り落としてくるナイフを、リャカは全速力で走り左にかわした。
だっ!!
リャカはスーの横に回り込んだ。
「 5ぉ!! 」
またしてもリャカのペンは弱い光を放出し、そしてそれもまた地面に落ちて言った。
「ガハハ、笑いが止まらないよ。悪いが、あんたに勝ち目はないよ。」
スーの笑い声も無視してリャカはスーの周りをぐるぐる走る。
そして叫んだ。
「 9ぅ!!」
「13!」
「じゅうななぁぁ!!」
どの攻撃もスーに届くことなく地面に吸収されていく。
がし!
ついにリャカはスーに左手に捕まった。
胸ぐらを掴まれながらリャカはまだ叫ぶ
「21!」「25!」「29!!」「33!!」……「193!!」
「悪いねぇお嬢ちゃん。さっきまで面白かったけどもう飽きちゃった。数字だけ言ってんのもバカみたいだからやめなよ。もう鬱陶しいからそろそろ殺しちゃうね。」
スーは右手でナイフを振りがざす。
「バカみたいなのはそっちでしょ!!」
「はあ?」
「今の数列はね4ずつ増えてるの。分かる?さっきまでの数字ビームは最初からあんたを狙ってなんかいないわ。さっきまでの数字たちはね!地面で合図を待ってるの!!強力な攻撃のためのね!」
リャカがペンを構える。
「地下の数字たちは!この数列の一般項を待っている!!
初項は1!!項差は4!!それを公式に当てはめれば………!」
「ちょっと…!さっきからなにを言っている…!!」
「理解できなくて当然!!バカにはね!!
A n=4n -3!!!!!!!!!!」
掲げられたリャカのペンは大きな音とともに眩い光を放出した。
同時に地面から鋭く、太いビームがスーの体めがけて飛び出した。
「なるほど…た、確かに、あたま、良さげだわ…」
ぼっかぁダァぉどぉワンワンンンンンンン!!!!!!!!!!!
バカバッカ軍にはバカみたいと言われたくないですね