16話 ヨンバカブカ
リャカが山のふもとにたどり着いたとき、木の影から人の姿がふと現れた。
「小場カイトならここに戻ってくることはできないわ。」
赤髪のその女は、いきなりリャカにそう言った。
黒いローブの隙間からは鍛え上げられた腕の筋肉が見える。いかにも強そうだ。彼女の目はいつでも人を見下していそうな目をしていた。
「どういうこと?」
リャカが答える。リャカはその目を見てこいつは味方ではないと確信した。
「そのまんまの意味よ。彼は今頃、アタマワルザルの大群に襲われているわ。私が誘き寄せたからね。」
彼女が言うには、カイトはこいつのせいでアタマワルザルに襲われているらしい。なぜかカイトの位置を知っていた。
「あんた。いったい何者なの?」
「クククク、まだ気づかないかしら。私はバカバッカ軍の四強のヨンバカブカの1人スーよ。」
ぞくっ…!リャカの身体中が震えた。鉄砲隊と戦うはずだったヨンバカブカがなぜかリャカの目の前にいる。リャカの頭の中は真っ白だった。
「私はこれから宮殿の方に向かうわ。あなたの命は興味ないの。王を倒せば私たちはそれでいい。今回は見逃してやるわ。よかったわねお嬢ちゃん。」
リャカの横をスーが通り過ぎる。
「待て」
頭より体が先に動いていた。この先へこいつが行ったら戦場は更に混乱に陥るだろう。しかし、ここでこいつに逆らえば殺される。
そんなことを気にせずこの国のために戦う勇気と覚悟が彼女にはあった。
「ここから先へは行かせない。」
刻同じくして、場所は全然、門の前。そこでは鉄砲隊のリーダー、ドアリーがロボット兵の侵入を防ぐために奮闘していた。そして、宮殿があった場所、今は瓦礫の山になっている場所では、鉄砲隊か恐竜と戦っていた。
「行ってこい。」
バカバッカが周りの兵士に命令を出す。ついにここ50分待機していたバカバッカ軍が動き出した。
「くそ!キリがないぜ。」
ドアリーは数多のロボット兵一台でも侵入を許していなかったが、疲れもあって倒していくペースが下がってきていた。
ザッ
突然ドアリーの視界が真っ黒になる。
ビュウウウンと音とともにものすごいスピードで景色が変わっていく。
「な、なんだ!?」
彼がたっていたのはさっきの門の前の場所ではなく。壊れた宮殿の奥の市街地だった。
「あなたがあまりにも厄介なもんで前線から引きずり出してもらいましたわ。ワタクシ、超足速くて力持ちなんで、あなたくらい抱えてダッシュできるんですわぁ。」
そして、ドアリーの前にはなんかウザい奴が立っていた。
「なるほど。では、すぐにお前を倒して戻るとするか。こっちは人手がたらねぇんだ。」
「フフフ、そんな事態、いままで味わったことないでしょう。我々の新兵器、アタマワザウルスはご覧になったでしょう。びっくりしたでしょ。急に現れたのですから。いやぁ今日の"彼"の働きは素晴らしい。」
「あと私を倒すと良いましたが、それは不可能だと思いますよ。
ワタクシ、ヨンバカブカなのでね。あ、どうも、シヤと申します(笑)」
「勉強を諦めたクズどもに負ける気はねぇよ。」
ドアリーはそう言って銃を構えた。
その頃、番人がいなくなった前線では、この時を待っていたかのように、大量のバカバッカ軍が攻め入ってきた。一瞬にして門の前の広場はバカバッカ軍に占領され、たちまちバカバッカ軍が市街地に流れ込む。
想定外の事態に兵士たちは焦る。バカバッカ軍は王様を探している。王を倒せば、この戦争はバカバッカ軍の勝ちだからだ。
バカバッカ軍による王様一斉捜索が始まった。