10話 勉強会
鉄砲隊の訓練はきつかったけど、つまらなくなかったので、カイトは毎日訓練に行った。フトリンとホソランたちとは仕事場所が別々になったものの仲良く、家で遊んだり食べに行ったりした。勉強についてはスハオイさんと鉄砲隊についておしゃべりしてるだけで、勉強はいっさいしなくなった。そんなこんなでカイトがこの世界に来てからあっという間に2週間の時が流れた。カイトはたまにお母さんとかのことを思い出した。ここでの生活はとても楽しいけれど、もしかしたらもう二度とカイトがいた世界に戻れないかもしれないという不安がカイトの頭の片隅にあった。
ある日、リャカがカイトの頭の悪さにみかねて勉強会をひいた。その日はちょうど鉄砲隊の訓練が午前で終わったので、カイトはペンと紙をもってリャカの家に行った。行く途中にスハオイさんにあったので、スハオイもリャカの家に連れて行った。
「あら、遅かったわね。」
リャカがドアをあけながら言った。
「ああ、スハオイさんに会ったから来てもらったんだ。スハオイさんは勉強担当だから勉強がはかどるかと思って。」
カイトは言った。実際はカイトはリャカと2人きりになるのがなんか緊張するので道でスハオイさんを見かけたから連れてきたのである。
「あら、そういうことね。」
そう言ってリャカはさっさと勉強の準備をし始めた。
「わたしは天才でもないやつがこの国でちやほやされるのが気に入らないの!あなたなんて、ちょっと狙撃が上手いだけで、みんなからすごいっていわれて勉強なんて一問も解けないでしょう!?」
「あ、ごめん」
「あなたがこの国に来る前まではわたしがみんなからすごいって言われてたのよ。まだ子供なのにみんなより勉強ができたからね。それなのにあなたがきてからどうよ!わたしの人気がなくなったわ。ひどいと思わない!?ねぇスハオイさん。」
「あーそりゃかわいそーだねー。」
スハオイさんは急に質問されて困ってしまった。
「つまり、お前は何が言いたいんだよ!」
カイトは言い返した。
「つまり、あなたに天才になってもらうわ!あなたが天才になればわたしの不満も無くなるからね!だから勉強会を開いたのよ!」
ひぃぃぃぃぃぃ!
2時間後
「びっくりするわ!」
リャカは呆れていた。
「ありえない!わたしがこの2時間教えてきた事はどうしたの?」
どうしてリャカがそんなに驚いているかというと、カイトがこの勉強会のまとめテストみたいなやつで0点をとったからである。
「わたしの言ってることをちゃんと聞いてたら嫌でも満点は取れるはずよ!」
実際の所、カイトはリャカの説明をほとんど聞いていなかった。カイトは勉強のこととなると、何かのスイッチが切れて、ぼーっとするのである。
「そんな難しいことよくわかんないよー。」
カイトはつぶやいた。
「それなーわかんないっすよねー」
と、スハオイさんがカイトを慰めてくれた。
「スハオイさんもなんなのよ!勉強担当とかいっといてずっと『わかんないっすー』しか言ってないじゃん!あなたほんとに頭いいの?バカなの?」
リャカが怒った。リャカが怒る理由もカイトにはよく分かった。2時間がんばって教えた相手が簡単なテストで0点をとったなら誰でもイライラするだろう。だったら真面目に話を聞いとけよって話だけれども、カイトは勉強のやる気がゼロなので仕方ないのである。
ピンポーン。
突然、リャカの家のベルがなった。
「何かしら、」
そう言って、リャカがドアを開けた。
ガチャ
「やあ!なんか声が聞こえたから来てみたぜ。」
ドアの前にフトリンとホソランが立っていた。
「うお!みんな!」
カイトはみんなが来て、嬉しかった。
「カイト、お前何やってんだ?」
ホソランが聞いた。
「勉強教わってたんだよ。さっぱりわかんないけど。」
カイトが答えた。
「それなー」
スハオイさんが付け足した。
「なんだよつまんねーなー。なぁ遊ぼーぜ。」
フトリンが言った。
「仕方ないわ。みんな来たなら勉強会はおしまいよ。キュッタでもしようかしら。」
「やったぁー!!!」
フトリンとホソランが喜んだ。カイトもキュッタというのがよく分からなかったが、とりあえずこの勉強から今日は解放されるのでめっちゃ嬉しかった。
フトリンとホソランによるとキュッタというのは、でっかいテーブルの真ん中にネットをつけて、ラケットを使ってボールを打つという感じで、卓球みたいなやつだそうだ。カイトはリャカとペアを組み、フトリンとホソランのペアと戦うことになった。
「よーい、はじめ!」
リャカの合図を聞いて、ホソランがサーブを打つ。ボールはポーンと跳ねてリャカのところに行った。スハオイさんは審判をやってる。
「ふっあまいわね!!!!!」
リャカがラケットを振りかぶった。
「バーニングスマッシュ!!!!」
バゴーン!
すごい勢いでボールはフトリンとホソランの陣地に叩き込まれた。決まった!!とカイトは思った。しかし、リャカのボールの勢いがどんどん弱くなった。
「なに!」
なんと、ホソランがラケットを物凄い勢いで回転させていた。そこから扇風機のように風がでて、リャカのボールのスピードがみるみる落ちていった。だが、ホソランは回転させているだけで、全然ラケットを構えない。ボールはホソランの方に向かっているのに、ホソランはくるくるしてるだけで、フトリンがボールの向かってる所じゃない場所でラケットを構えている。
「なにやってるんだ??」
カイトがつぶやいた。
その瞬間、ホソランがテーブルの横に移動して、横から風を当て始めた。すると、ボールは風を受けて、フトリンのほうに行った。あのすごい勢いのリャカのボールが今はちょーゆっくりのチャンスボールになっていた。
「テクニカルサンシャイン!!!!!」
バコォォォォォォオオオオン!!!!!!!!!!!!!!
フトリンの体の全体重をかけたような思いスマッシュがカイトに向かって飛んできた。
メリィィィ!
ボールはカイトのお腹に直撃して、カイトは壁に吹っ飛んだ。
「はっはっはっ!見たか!これが俺らのコンビネーションだ!!!!!」
その後もカイト達はがんばってフトリンたちに挑んだが、一点も決めることなく負けてしまった。
「この!もういっかいよ!次は勝つから!」
リャカは負けるたびにそう言った。そして気づけばもう辺りは暗くなっていた。
「じゃ、もう暗いから帰るねー」
カイトが言った。
「えーこのままみんなで夜ご飯食べようぜー」
とフトリンが提案した。
「いいわね、お母さんに頼んで見るわ」
とリャカが言って別の部屋に入っていった。
というわけでカイト達はリャカの家で夜ご飯を食べて行くことになった。
30分後、
「はい、できたわよー」
リャカのお母さんが手においしそうな料理を持ってきた。
カイトはいいなぁと思った。なぜなら、カイトはこちらの世界ではお母さんがいないのでお母さんがおいしい料理を作って持ってきてもらうということがなかったからである。(カイトは毎日宮殿までいってよくわかんない料理を渡されて、ひとりで食べていた。他にも、洗濯とかは脱いだ服を宮殿まで持っていけば、宮殿の人がやってくれていた。王様と約束したので。)
「これは、テンサーイの郷土料理、アタマーヨ。さあお食べー」
その料理はめっちゃ美味しくて、なんか頭が良くなりそうな味がした。みんなとご飯を食べれてカイトは楽しかった。
「よーし!明日からも勉強、仕事頑張るぞー!」
リャカが叫んで、みんながこたえた。
「おおおおおおお!!!!!」
「バカバッカ様、新しく入った情報です。」
ある洞窟の奥、バカバッカ軍団のアジトの中で1人の怪しいやつが、そう言いながら紙切れをある男に渡した。
紙を受け取った男はバカバッカ。バカバッカは紙を見た。
「なに!なぜお前がテンサーイにいるのだ。」
バカバッカはその紙を睨みながら言った。
「小場カイト!!!!!」