エピローグ
「色々あったね───」
日和が呟く。
「そうだなぁ・・・」
俺は、空を見上げる。
「日和 良いのか? こんなとこで話してて───」
俺は尋ねる。
「良いの、ちょっとお話ししたいし・・・」
日和が、こちらを向いて微笑む。
「しかし、あいつら・・・」
俺は、頭を抱え、石の柵に手をかけ見下げる。
「勇也! 今年こそ、金魚すくい負けないわよ!」
「ええ、良いでしょう─── 望むところです!」
「ふはりとほ、ふぁんふぁれぇ~」
旅兜が、口に焼きそばを含みながら応援する。
「まあ、良いんじゃない? 楽しそうだしさ」
日和が笑う。
「それはそうと、お前 今日主役だろ? こんなのんびりしてて良いのか? 一夜さんに、跡継ぎ任されちゃったんだし・・・」
俺は、続ける。
「それに・・・ せっかくの似合ってる巫女服が汚れるぞ?」
俺は、照れながら言う。
「大丈夫 私の出番まで、まだ時間あるから それより、似合ってるなんて、嬉しいこといってくれるじゃん───」
「いやまあさ? こんなときぐらいいいじゃんか・・・」
俺は、頭をかく。
「そんなことよりさ、」
俺は、なんだか照れ臭くなって話題をそらす。
「祭り、出来てよかったな・・・ 一時はどうなるかと・・・」
俺は、そう言う。
「柊たちが手伝ってくれたからね・・・ 一週、延期することになったけどね」
日和は、苦笑いする。
「そんなん関係無いって! ほら見ろよ、あの子 たぶん、都会から遊びに来た子供だぜ? あの楽しそうな顔、あれが見れるだけでも、巫女としては嬉しいんじゃないのか?」
「まあ、そうかもね───」
「柊?」
しばらくすると、日和が俺のことを呼ぶ。
「なんだ?」
「好きだよ・・・」
「え? 今なんて?」
俺は、あまりの急展開にもう一度聞き返す。
「私のこと、いっつも考えてくれてる、柊が好き」
少女は、照れながらもう一度言う。
俺は、顔を赤らめる。
「お、俺も こんなに人を信じたことは無かった 辛い時でも、お前が居てくれた 互いに助け合った・・・」
俺は、今まで言えなかった気持ちがあふれでてくる。
「俺からも、改めて・・・ 」
俺は、咳払いをする。
「好きだ───」
その後、互いに言葉を発しなかった。
ただ、抱き締めあった。
「柊~? 日和~?花火、始まるわよ??」
俺は、部長のその声で我に帰る。
「・・・!」
「あんたたち、まさか!」
一番恐れていたことが起こった・・・
「みんな、ニュースよ! ニュース! 柊&日和カップルが、熱い包容を交わしていたいたの!」
あのくそ部長は、俺たちのそれを大声で叫び散らす───
「おい! ばか! やめろ!」
俺は、慌てて止めに走る。それを、日和はただ顔を赤らめて見つめる。
「・・・・・・」
「すみません・・・・・・」
部長が謝る。
「お前、ほんとにつぎやったら許さないからな?」
俺は、念を押す。
「はい・・・・・・」
そんなことをしていると・・・
「ほら、皆さん見てください! 花火ですよ!」
勇也がはしゃぎ出す。
田舎の、神社の祭りの花火なので、そこまで凄いものではない。しかし、俺たちはその夜空を彩る、多種多様な火の花に心を奪われる。
「綺麗だな・・・」
旅兜が、呟く。
そんなこんなで、俺たちは花火を楽しんでいたのだが、思わぬ来客が俺たちのもとに訪れた。
「柊・・・ ご無沙汰じゃな───」
「一夜さん! と、それに・・・」
俺は、その老婆と手を繋ぐ少女に目をやる。
(まさか───!)
すると、その少女が、
「始めまして 神代月和です!」
と、俺に笑いかけた。
その少女は、蒼いリボンをつけていた───
俺たちの背後には、花火が2発打ち上がった。
そんな夏の、物語──────
─完─