プロローグ
少女は、結び直したリボンを解く。すると、その幼き党首の髪は風にたなびく。
まるで、水のように。形を有して、でも自由に。空をめぐる。
見よう見まねの少女は、首飾りを首にかける。そして、彼女のお祖母さんのように、その首飾りを握りしめる。
「お願いです、力を貸してください 私たちは、今大きな物を成し遂げたいんです ただ、日常を取り戻すために───」
そして、少女は未熟ながらに、両目を瞑り、手を組んで、神木に祈りを込める。
蒼の砦
蒼い光と共に目が覚めた。
緑の光も混ざって綺麗だ。前なんて、灰色の光だけだったのに・・・
一階の叔父の所に下ると、叔父が朝食を作ってくれていた。
「柊 今日から新しい生活が始まるんだぞ? 起きるのが遅い 俺はもう出掛けるから、皿だけ洗っといてくれ───」
そう言って、叔父は出掛けていった。
(新しい生活か・・・・・・)
俺は口に歯ブラシを突っ込み、窓を開ける。外からは涼しい風が吹き込んでくる。
「田舎だな───」
そう田舎である。俺はとある事情で、このとてつもない田舎に引っ越してきた。正確に言えば、叔父の家に住まわせてもらっている。叔父が言うには、ここは水縁村。本当に聞いたことがない村だ。
そう、今日から新しい生活が始まると言うのも、学校にいかねばならない。学校だ。ただ高校生の俺が行く学校は、高校であって高校でないらしい・・・のだが・・・・・・
「は~い!今日は神奈川から転校生が来ていまーす!」
(なんだこのテンプレな展開はぁぁぁぁぁ!)
先生の声に、いちいち突っ込みを入れる。
ただ俺は転校してくる方だ。差別化は出来ている。
謎理論を展開しつつも、俺は案内された部屋の前にスタンバイしている。
(プレハブじゃん・・・ 台風でつぶれるぞこれ)
俺が案内されたのは、職員室らしき部屋の隣・・・の教室─
と言うかここしか教室はない・・・みたいだ。
と俺が一人で、この学校を紹介していると───
「都会の人だから、みんないっぱい質問するんだぞぉぉぉ! 元宮柊君でぇぇぇぇす!」
とこの村では経験することがないであろう、転校生に興奮した先生の声が耳に入り、俺は慌てて
ガラガラ───
と音をたてて、教室に入る。
1・・・2・・・3・・・4・・・
「四人か─── まあそんなもんか」
そう俺が呟くと、不思議そうに先生が俺を見つめる。
「あ、いや、なんにもないです・・・」
何もないとごまかしつつも、教室内の人数の少なさに俺は驚いたが、田舎だからと納得する───
しかもそのうちの一人は、中学生・・・いや小学生のようだ。どうやら、この学校はひとつの教室で違う学年の生徒を一緒に教えるシステムのようだ。確かに高校ではないな。
そんなことを考えつつも、
「改めまして 神奈川県から来ました 元宮柊です」
と、簡単な自己紹介をする。
「えー こんな道具も、都会には有るんですよ! これ! 板見たいな携帯電話!」
と俺はスマホを取りだし見せる。
何それ! と、話を盛り上げる。そういう算段だった。
しかし、
「お前・・・ 田舎なめすぎな さすがにスマホは分かるぜ?」
思わぬ反撃だった。そういや、叔父も使っていた気がする。転校初日からやらかした俺は、先生に案内されるまま、席についた。