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そして出発へ 長いプロローグ

今回は出発までなので少し短いです。

本編まで読まないと思ってても、試しに読んでいただけたら嬉しいです。

「お前がヤバくて、俺が・・・そのアレだ」

「カンストかいな」

「そうそれ・・・何処の言葉か知らんがしっくりきた」


 確かに他の連中とは違うと思ってたけど、悪い方向で来ちゃったか・・・。

 

「もうこの際だ。事実を受け止めよう」

「せ、せやな!考え方を変えればワイらは強い部類に入るんや」


 その通りだ。

 魔族でも俺たちに勝てる者は実質少ないと思う。


 まあ、誇れないけどな・・・てか、バレたら処刑だ。


「神官候補は諦めるしかないか」


 ・・・待てよ、果たしてそれだけでいいのだろうか?人間社会で生活する以上、感情の測定がないと言い切れるか?



 実力を見せる

  ↓

 ちやほやされる

  ↓

 測定してみろよ(興味本位)

  ↓

 バイバイ


 いや・・・危険と隣りあわせじゃん。


「・・・名誉ある職には就けない」


 俺のつぶやきを聞いてマガミも気が付いたようだ。


「違うでコード。ハーレムを形成すればいいんや」


 久しぶりに俺を名前で呼んだかと思えば、返答に困る謎理論を展開させた。


「形成してどうすんの・・・・てか、どうやって作るの?俺たちには誇れる容姿もカリスマ性もないだろ」


「能力を見せて、なんなのコイツって感じでどうや?」



 まさかコイツ・・・・。


 能力見せる

  ↓

 なんなのコイツ!?

  ↓

 凄い!!惚れた

  ↓

 バレても私たちがいるわ!!

  ↓

 どうにかなる


「いや、まさかな・・・」

 とマガミを見たら、俺に肯定のウインクをしていた。


「いいかマガミ、お前は思い違いをしている」


 能力見せる

  ↓

 チクられる

  ↓

 バイバイ


「なんなのコイツは百歩譲って入ったとして続くのは、チクられからのバイバイだ」


「女性はそんなに薄情じゃないで!!」


「今まで出会った女を思い浮かべてみろ」


「出会ってきた・・・・女性・・・・あ、ああああああ!!!」



 今回の場合、マガミが捕まったら俺もヤバイ。

 アイツの性格上からして・・・。


「なあ、マガミ。俺たちってどういう関係だ?」

 そう訊くと、歪にニッコリと嗤った。


「トモダチ」


 初めてコイツに殺意が沸いた。



 ともあれ、このまま王都で暮らしていたらバイバイの階段を上ってるみたいなものだ。

 逃亡は確定事項なのだが・・・。

 問題は逃亡の理由を悟られない事だ。


 今、何も言わずに逃げたら不審に思われる。アリアさんを含めた神官の奴らはどう思うのか知らんけど両親は血眼になって探すだろう。

 俺たちの居場所だけではなく、失踪理由も。


「結局は適当な理由をこいてトンズラすりゃあいいんやな」

 おお、マガミ・・・頭の切れが良くなってきたな。


 俺が感心しているとマガミは凛々しい顔で一言「任せな」と言った。



 マガミと俺は教会に行って、アリアさんが書類仕事をしている部屋へと向かう。


「それで急にどうかしたの?」


 アリアさんが困ったように笑う。

 この人の笑顔にどれだけ救われてきたのか、と考えると寂しい気持ちになる。


 違う。だからこそだ!このままだったら確実に迷惑をかける。多少なりとも惚れてはいたのだ、それならクールに去ってやろうではないか。頼むぞマガミ!


 マガミはすぅと息を吸い込んでハッキリと言った。


「アリアはん・・・ワイら、修業が足らんと思ったさかい。勝手やとは思うけど辞めさせてくれ!堪忍やで」


 マガミ、任せろと言った割に普通じゃないか・・・。

 いや、こういう普通さが意外に効くのかもしれんな。


 そう考えていると、アリアの目が驚愕に見開く。

 ダメだったか!?


「・・・本当に・・・・・本当に辞めてくれるの?」



「え?」

「は?」

 マガミと俺は同時に声を出す。


 まさか、理解してないんじゃと今度は俺が補足して説明する。


「あの、修行が足りないと自覚し・・・・」

「うんいいの。理由は必要ないのよ。辞めてくれるなら引き止めないわ。ええ!貴方たちが決断した事だものね」


 なんか酷くね?

 マガミの方を見ると、目に涙を浮かべていた。


 おい!やめろ!俺もつられて泣きそうになる。


「じゃあ、あの失礼します・・・」

 と俺が背を向けるがマガミは動かない。

 ずっと、アリアさんの方を向いて黙っている。


「マガミ、何やってんだ」

 小声で言うが、通じないようで微動だにしない。



「ん?どうしたのマガミ君」

 憑き物が落ちたようなスッキリした表情でアリアさんは微笑みかける。


「・・・・本当にいいのかいな?」

「なになに?」

「ワイらの本当の力を知らずに辞めさせても構わんのかいな?」


 マガミ!!口を閉じろ!!!


「本当の力って?」

 首をかしげるアリアさん。


「ワイらは、あの感情が・・・・ぐはぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 俺は魔力を込めた拳でボディーブローを叩き込む。


 ピクピクしているマガミを抱えて「失礼しました」と部屋を出てきた。



 路地裏


「マガミィ!!なんで初っ端からチンコロしてやがるんだ!!」


 勢いよく往復ビンタを食らわせる。


「だっでぇ・・・あんなに淡白・・・」


「年増に興味ないって言ってたじゃねえか」


「嫌われるのは、辛いんや・・・愛がほしいで」


「気持ちの悪いこと言ってんじゃねえ!!」


 マガミの顔に膝蹴りを入れる。

 

 だけど、コイツの気持ちもわからんでもない。あんなに冷淡に接されるのは心外もいいところだ。

 

「待てよ。今回でどうせ会わなくなるんだし・・・」

 邪悪でよこしまな考えがよぎる。


 神官でも、こちとら最高値とカンスト?のコンビ、負ける可能性は低い。

 

 マガミも俺の考えを察したのか、上を向ききった白目で笑う。


「男の怖さは義務教育や!アハハハハハハハハ!!!」


 抜き足忍び足で部屋の前まで行く。

 彼女は誰かと話しているようで声が聞こえてくる。


 ドアに耳を近づけて様子を探ると、なんとも甘い雰囲気なのだ。

 アリアも普段は出さない猫なで声をこれでもかとばかりに連発している。


「ケヒヒヒ・・・彼氏の前でやったるで~」

 鬼よりも怖いコイツを制止して、より詳しく状況を探ろうとドアを静かにゆっくりと開ける。



 アリアが頬を染めて、誰かに抱き着いている。

 誰だ・・・・?

 見えるのは神官の・・・いや、神父???


 神父は彼女の父親だったはず。


「パパ~もっとぎゅってして!!」

「ハイハイ。アリアはかわいいな~」


 三十路真っ只中の美女と御年60のオッサンの抱擁をそこに見た。


「パパ!じゅて~む、じゅて~む」

「アリアッ!!ワシ、もう・・・!!」


 見るに堪えなかった。

 マガミが今度は青ざめて震えて此方を向いている。


「ねえ、あれどういうこと・・・?」

 方言、忘れてるぞ。


 さっきよりもショックな気分で教会から出る。

 傷ついたはずなのに、何故か溜飲が下がり晴れ晴れした気分になった。



「これから王都を出て、身の振り方でも考えるか」


「せやな」


 情報をできるだけそろえて、自分が納得できる道を模索していく。

 謂わば、落としどころを見つけなければならない。



「これから準備だ。出発は今日の深夜、それからは腰を落ち着かせるまで王都には帰らない。いいな?」


「いいもなにも・・・それしかないやん」



 目的は自尊心がそこそこ満たせてる安全な職を探す事。

 妥協点を探る旅と言っては身も蓋もないけど、近い意味合いをもつ旅が始まった。





 



どうでしたか?

それでは、アデュー

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