第五話 悪には悪の訳がある
それを一言で表すのならば”異常”だった。日常では決して垣間見ることのないあからさまな違和感だった。少しの間表現上のみでなく実際に絶句したのち、何とか言葉を絞り出し、目の前の『壁』に向かって話しかけた。
アッキー:「……なあ、それ多くないか?」
前は見えなかった。だが声は聞こえたようで『壁』から返事が返ってきた
柏木:「…?何のことですか?あ、手が止まってますよ、食べられるときに栄養は取った方がいいんですよ。」
もっきゅもっきゅと口を動かしながらそう言った。そうこれは壁ではなかった。芸術的なまでに積み上げられ、まるで漫画のように盛られた料理の山だった。
ヤベー、確実に減っていってるんだけど。どんな胃袋してんだよもうあれが能力なんじゃねーの?
というかそもそもこいつに能力とかあるのか?主催側の人間であるのはおそらく間違いないだろうが、だとしたらなんでこいつはいつまでも俺と一緒にいてこうして飯なんぞくっているんだ?
そもそもこんなトンデモなことをする主催者って何者だ?個人か?組織か?国家か?そもそも人間か?
とそこまで思考を巡らせたところで考えが止まる。
アッキー:「…何の嫌がらせだ?怒るぞ」
柏木がフォークで今まで食べていた料理をさし、顔に押し付けていた。だんだんフォークが貫通してきているんだが
柏木:「私、白くんのそういう辛気臭い顔嫌いだって前いいましたよね?ですからキレる権利はありませんよー」
言ってねぇし、聞いてねぇ、そんなこと
しかたないので、刺しだされたままの料理をそのまま食べ、ティッシュで頬をふく。その時すでに柏木は料理を完食していた。
アッキー:「はあ、まともな対応を少しでも期待した俺がバカだったよ。」
その日は比較的には少量に見えた自らの夕食に胃もたれしながら眠りについた。
―――翌日―――
柏木:「おはようございます、アッキー!今日も程よい醜さですね!」
アッキー:「はあ、柏木か。お前は朝から憎ったらしいな。」
こいつ、昨日あんなに食ったのに朝から食パン5枚食べているッ!
柏木:「あれ?どこいくんですか?そんな用意して、朝ご飯も食べずに」
アッキー:「ハア?何言ってんだ、今日月曜だぞ、時間考えろ時間、どう考えても遅刻の時間だぞ、俺はお前みたいに高速で朝食なんて食べれないんだよ、そもそも俺は朝食食べない派だしな」
柏木:「いや、だからどこに行くんです?」
アッキー:「学校に決まってんだろ、寝ぼけてんのか」
急に柏木が真顔になった、しかし昨晩の恐ろしい様子ではなく呆然とした感じで、そうしたと思ったら
柏木:「あははは!そういえばそうだったな!私達今は日々学校に通う一学生だったね!」
とか当たり前のことを言いツボにはまっていたので、放置して学校に向かった。
この女を完全に理解することは不可能なのだ
―――学校―――
松井:「悪い悪い、折角お前らのためわざわざ徹夜して作った嫌がらせ課題プリントを職員室に忘れてしまうなんて、不覚だった。全力疾走でとってきたから許してくれ。」
生徒:「ちょっ、先生!話が違うじゃないですか!」
複数人の生徒たちは一様にヒソヒソと話す。
松井:「それは人の話を勝手に鵜呑みにしたお前らが悪い、ってハア?何の話だ?」
生徒たちはその質問に答えず、代わりに視線を送った。
そう、俺 柚木 白へと
まあ、ここまではいつも通りの展開なので気にもしていなかったが、まさかまさか四六時中死んだ目をしていることに定評のある松井教諭がフリーズしているではないか。よくわからないが殺してきた相手が鳩が豆鉄砲を食ったような様子になっているなんて愉快な。
松井:「……あ、あーえっと、このプリントここ置いておくから各自でやっとけよ、これで授業は終わりにするが遅刻した柚木、……あと一応柏木はこの後……喫煙所までこい。」
何故わざわざ人気の少ない場所に呼ぶのか、まさかここでまた殺るつもりか!?
松井:「……お前、なんで呼び出されたか分かってんのか?」
アッキー:「今回は家を借りてた恩もありますし一応呼び出しに応じはしましたけどタダでやられるとは思わないでくださいよ」
松井:「ちっげーよ!はあ、柏木もお前は何がしたいんだか知らんが無駄死にさせるつもりじゃないならしっかり止めろ」
何故怒られねばならぬのか
松井:「俺が言えたことじゃねえと思うがもう少し倫理観と警戒心を持て、俺は金銭面の問題で働かなくちゃンねぇけどお前はそうじゃねぇだろ。」
柏木:「ただのキッズのくせになぜか一人暮らしであるはずの柚木 白 クンが何故生活を送れているかというとそれは彼の家族から生活費が振り込まれているからなのです!ですが家族との連絡は取れませんし、アッキーに会いに来ることもありません!それは何故か!答えは彼が嫌われるようになったとき彼を気味悪がって逃げていったからなのです!」
松井:「……誰に話してるんだ?」
アッキー:「もう今更そんなこと言われてもダメージにすらならんぞ。」
松井:「まあ、ただお前の担任としてただ忠告しようとしただけだ。あと俺もよっぽどのことが起こらん限り学校で殺しなんぞするつもりはないから一応安心しろ。」
アッキー:「……なんで先生は俺のこと嫌ってこないんっすか?」
松井:「あ?嫌いだわ、いっつもあきらめたような辛気臭い顔して」
松井:「けどな、それだけで嫌おうとするほど暇じゃねぇし、お前のことを見たくもないって思うやつもいるかもしれないが俺は他人のことにいちいち気を回すほど余裕がねぇってだけだ。変に期待するな。俺はただのクズ教師だよ」
アッキー:「……。ってまずくね!?」
死なない特性はまだ生かせるとして嫌悪を利用した作戦はまず使えないってことじゃん!いやそんな作戦思いついてないんだけどさ。
松井:「…ひとりで何騒いでるんだ?」
柏木:「さあ?」
松井:「そんじゃ俺まだ仕事あるから、お前らはここにいても特にやることはないだろうし今更学生らしく勉学をとか言ってられる立場じゃねぇんだ、さっさと帰れ」
アッキー:「あ!ちょっと待って下さい!最後に聞きたいことが!先生の能力ってもしかして物質同士のテレポートとかですか?」
松井:「…それで素直に答える奴しかいなければ世界は平和だと思うぜ。」
うっ、痛いところを突きやがって。しょうがないじゃないか確認せずにはいられなかったんだから。
松井:「まあいいぜ、答えてやるよ。答えはいいえだ。俺の能力はそんなかっこいいものじゃねぇよ。あとな、おそらくこの能力ってやつはあくまで人間ができることの延長線程度の能力みたいだぜ。まあ全員の能力知ってるわけじゃねぇし、お前の能力すら知らねぇから確信はないけどな。」
そういって適当に手を振りながら松井は去っていった。その後俺と柏木は忠告通り家へ帰ることにしたのだがその途中我が愛すべきクラスでは歓声が起きていた。アーソーデスカハイ。
柏木:「この後どうするんですか?」
柏木が下から覗き込むようにあざとく聞いてくる
アッキー:「松井先生を探る。あいつの目的が知りたい。」
柏木:「そうですか~じゃあついてきてください。教えてあげます。」
アッキー:「は?お、お前知ってんのか!?」
柏木:「ええはい、神のごとき知能をもった柚子ちゃんの力をもってすれば知れないことなどないのです!」
すごいどや顔だ。何も知らない頃なら惚れてたかもしれない。が、
アッキー:「ホントは?」
柏木:「あ、この前あとつけてったら偶然見つけて。」
やっぱり、なんとなくこいつのことが分かってきた気がする。こいつ適当なことしか言ってねぇ
そうしてついていった先にあったのは大きな大学病院だった。
柏木:「あ、私達201号室の子の親の 松井 雄生のいとこなんですけど、おじさんに言われて様子見て来いって言われたんですけど、面会させてもらってもいいですか?」
こいつ堂々と嘘つきやがる、ばれたらどうするつもりなんだ。証拠とかないんだぞ
看護師:「ああ松井さんね、あの人もたいがい心配性よね。昨日も来たばかりでしょうに。一応身分証とか何か関係とか血縁を証明するものを見せてくれたらうれしんだけど。」
やばっ、どうするんだよ!
柏木:「え!?そういうの必要なんですか!おじさんそんなこと言ってなかったのに!もー」
見方によっては非常にわざとらしく言った。だが看護師はそう取らなかったみたいで
看護師:「あはは、まあ松井さん少々ガサツな面もあるものね、別に大丈夫よ。本来必須ってわけじゃないし一応の確認ってわけだしね」
柏木:「ありがとうございます!さ、いこ!」
そういって手を掴み病室へと向かった。
柏木:「ここですよ、ささっ入ってください。」
こいつまた入念に手を拭いてやがる、そんなに嫌なら何故触る。
アッキー:「おじゃましまーす」
ゆっくりと忍び寄るように動き小声でそう告げながら入るとその少女はいた。
少々やせ細っている小学生程度の体格で、髪の毛がよく手入れのされたそのあどけなさの残る少女はベットに静かに眠ったままだった。
柏木:「先生の奥さんは少し前に亡くなってて、この子ももう余命はあまり残されていないそうですよ。」
正直なんとなく予想出来ていた気がする。あの先生はやればできるとしても大抵のことを面倒くさがり自分のことでさえ適当にする人だ。そんな人が死に物狂いで叶えようとするものなんてのは現実だろうがフィクションだろうが大体こんなもんだ。
柏木:「で、これからどうするんですか?先生に降伏しに行きます?僕の命はいらないから娘さんを助けてやってーって。」
アッキー:「は?誰だそいつは、むしろ安心したよ。お互い何かの命惜しさでやってるってことだろ、俺は俺の命が惜しい。命がけでも俺の命を失いたくねぇ、どんなに嫌われようが生きてりゃ正義で先に死ねばそいつが悪だ。」
柏木:「へぇーじゃ、これからどうするんで?」
アッキー:「ほかの参加者を探す。」
柏木:「どうやって?」
アッキー:「呼ぶんだよ、何のためにに位置情報のシステムがあんだよ。」
柏木:「あれだけ死にたくないって騒いでたくせに結局それ使うんですね、もしかして迷った末に自暴自棄、なるようになれみたいな作戦ではないでしょうね?」
アッキー:「違うわ、そもそも今までとは全く違うんだよ。今までは場所がバレて向こう側から襲い掛かられてきたけど今回は違う。」
柏木:「と、いうと?」
アッキー:「こっちがわざとばらして狙った場所におびき寄せるんだ。力で勝てないなら知略で勝てばいいんだよ」
柏木、そして柚木は怪しく嗤った。
なんかモチベ上がってたので連日投稿です!
出来るだけ文章の無駄がないようにしているつもりなんだけど投稿さぼってたせいでガバってそうで怖いです(笑)
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