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30倍の勇者様!  作者: 黒羽烏
一章:サタン襲来
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5話『薬屋とクエスト受注』

 朝、竜人が目を覚ますとそこからはすでにリゼルの姿がない代わりにテーブルの上に一通の書置きが残してあった。

『ギルド管理センターに行ってきます。少ししたら戻る予定です』

 なるほどね……

 マップ上にはセンターはすぐ近くにあるよ表示されている。「…よし。オレも行ってみるとするか」

 荷物を整え、竜人は宿を出た。





 「やぁ、嬢ちゃん。綺麗だね」

「…? はぁ、ありがとうございます……」

 一方、ギルド管理センターではリゼルは一人の初老の男にナンパされていた。

「ここにいるってことはあれじゃろ? 君もクエストに興味があるんじゃろ? どうだい、このワシとパーティーを組まんかね」

 濃い緑のローブを身にまとい、短刀を腰に差したかなり背の低いその男はじりじりと困惑した表情のリゼルに歩み寄った。

 「これでもワシはちょっと前まで国王軍にいてな、今となってはこんな感じじゃが、治療の腕はピカ一なのじゃよ」

 リゼルの目をジッと見上げる彼の目には、下心が満載である。

「えぇ……私パーティーはすでに組んでますから。私のことは放っておいてくださって結構です」

 しかし、そんなことも気にせずにしっかりとした口調で断るリゼル。彼女の目の鋭さは断固として揺るがない決意の現れだろう。

 「ふむ……マスターは? 別の者か?」

「えぇ」

「ヒーラーは?」

「いません」

「じゃあそやつに――」

「ありません!! あなたが入る余地はありません!! 全く、人のことを下品な目で見上げて……」

 リゼルが腰に手を当て小さく嘆息すると同時に、今度は背後から肩に手を置かれた。

「まぁまぁ、お嬢ちゃん。その辺にしてあげたらどうですかい?」

 聞き覚えのある声。否、ここ数日ずっと聞いていた声。そう、竜人の声だ。

「ありゃ、来ちゃったのか。おはよ、竜人くん」

「あぁ、おはようリゼ」

 お互い笑顔で向き合って挨拶する二人。初老の男は一人困惑した表情をしている。

「えっと……パーティーメンバーってその男のことかい、り、リゼちゃん」

「私の名前をその呼び方で気安く呼ばないでください」

「まぁまぁ、リゼ。落ち着けって」

 ツンとして膨れるリゼルにそれをなだめる竜人。そしてやはり取り残されている男。

「とりあえず、おじいさん。名前は?」

「…サダキチじゃ。今は薬屋をやっておる」

 うーん、なるほど。確かにヒーラーはオレたちには足りてない気はするけど……もっとも、リゼがヒール系を使えない場合が前提の話だけどね。

 「どうだ、リゼ。やっぱり嫌か?」

「えぇ。この人だけは嫌です。私のことをやらしい目で見てきますし」

 ぷくりと膨れたリゼル。こりゃとうぶん無理そうだなと悟った竜人はサダキチと名乗った男に言った。

「あぁー……多分早いうちにあきらめた方がいいと思いますよ……」

「いいやワシは諦めんぞ! こんなかわいい子を前にして見なかったことにするなどワシにはできん! さぁ、早く『うん』と一言いうのじゃ!」

「……詰所に連絡しますよ?」

 あまりのしつこさにプルプルと肩を震わせたリゼルは震える声で言った。ちなみに、詰所とはこの世界での交番のような場所だ。

 「わかった。わかった! 頼むからそれだけはやめてくれえええ!!」

 するとその一言で、サダキチは素っ頓狂な音を上げて一目散に逃げて行った。

「全く……竜人くんもあんな奴に優しすぎます」

 そういわれてもなぁ……話も聞かずに相手を追い返すのはさすがに気が引ける。

「それはそうと、なぜここに? すぐ戻るって書いておいたはずですが……」

「あぁー…そう。朝の散歩だよ。そしたらたまたまここの前を通ってだな?」

 特に理由はないが、竜人は必死にごまかした。


 「なるほど……それはとてもいいタイミングであ、ありがとうございました。助かりました」

 少し頬を赤らめてぼそりと呟くリゼル。なんだか竜人も照れ臭くなってきた。

「えーっと……ここにわざわざここに来たってことはクエスト関連のことを見に来たんだろ?」

「あぁ、そうでした! すっかり忘れてました」

 えへへと笑って壁際に立てかけられたクエストボードを見るリゼル。

うん、やっぱりこっちの方がいいな。と思う竜人だった。




 「あ、これとかどうですか? 報酬はかなり少なく30銀貨ですが、ドロップアイテムは全部もらえますし、内容はアルガオオカミ30匹討伐ですね」

「それは…手頃なクエストなのか…?」

「えぇ。私一人でも十分こなせるクエストです。竜人くんの特訓にはちょうどいいレベルでしょう」

「なるほど。じゃあ、受注お願いしますっ」

「はーいっ、そこで少しの間待っててくださいねー」

 そういうとリゼルはクエストボードに張り付けられていたそのクエストの内容が書かれていた紙をはがすと、すぐ横にあったカウンターに持って行った。

 そこには腰にロングソードをぶら下げた青年の兵士が立っていた。

「なるほど……クエストの受注はオレの持ってる知識の通りでいいわけか」

 待っている間独り言をぼやいていると、左手のデバイスがピコんと音が鳴った。

ん…? 見ると『クエスト受注確定』の文字が。

 「へぇ、こうなるのか」

「はい。では、行きましょうか。竜人くん!」


 いつの間にか竜人のそばに戻ってきていたリゼルは嬉しそうに言った――。

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