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30倍の勇者様!  作者: 黒羽烏
一章:サタン襲来
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15話『裏切者』

 「なぁりゅうと」

 マリアが竜人達が野営地にしている場所へ来た日の夜。今日もいくつかのクエストをこなし、焚火で暖を取っていた時にマリアはやっと口を開いた。

 今日一日、ずっと彼女は口をへの字に曲げてムスッとした表情をしていたのである。それが唐突に声をかけてきたから……多少驚くのは当たり前だ。


 「そんなにビビるでない。何もわらわはお主を取って食ったりはせぬわ」




 なんで考えてることわかるんだ……竜人は困惑した表情でマリアに聞いた。

「それで、どうしたんだマリア」

 実年齢は何倍もマリアのほうが上だが、どうもどこから誰がどう見ても幼女の彼女に敬語で話しかけるのには抵抗がある。

 それ以上に彼のプライドが許さない……方が理由としては大きいかもしれない。

 「わらわ思ったのじゃ。明日、サタンが復活するじゃろ、そしたらとりあえずサタンの手下の軍勢は明日から大量に降り注ぐじゃろ。となるとじゃ。わらわやそこのおっさんはサタンの手下こそ倒せど、大量のそれら相手にお主らのような軟弱な奴らを守りながら戦うことができるとは到底思えん」

 まぁ確かに……

 竜人自身、多少の力の制御と敵を倒すための戦い方を使えるようになったとは言え……到底サタンの手下たちに歯が立つとは思えない……ましてやサタンなんて夢のまた夢だ。


 「そこでじゃ、りゅうと。おまえとりぜるを()()()()()()に飛ばそうと思う」

 ……え?

 「向こうに飛べばまず死ぬことはないだろうし、こちらの数時間で向こうでは何年も時間が経つ。証拠を消せばサタンにばれることもないだろう。どうだ、わらわは別におまえたちに死んでほしいわけじゃない。話に乗ってくれるか……?」

 なるほどね……そんでもって強くなって数時間後の世界に戻って来いと……。そんなチートを使えるのならば早く教えてほしいものだ。

 「そんなにすごいことができるのならば最初から教えてくれたらよかったのに。じゃあそれを試して―――」

 しかし、竜人が言い切る前にどこから聞きつけたのかリゼルが彼らの間に割って入って竜人の言葉を遮った。

 「それはダメよ。そんなことしたらあなたは死ぬわ」

 どうやら彼女はマリアの身を案じて言っているようだ。

 「私にだってわかるわ。それぐらい……時間の流れを捻じ曲げようだなんて……そんなことをすれば自分が死ぬってことぐらいは分かってるのでしょう!?」

 リゼルはすごい剣幕でマリアをまくしたてる。彼女が怒っているところなど今まで見たこともなかった竜人は少し驚いた。ここ一週間……いや、もっとか?

 とにかく彼の中ではかなり長い時間の付き合いの彼女のまだ見ぬ反面を見れたことは嬉しいことなのだが……

 「リゼ、なんでマリアは死ぬんだ? あと、時間の流れを捻じ曲げるってどういうことだ……?」

 すると、バツが悪そうにそっぽを向いたマリアの代わりにリゼルが答えた。

 「この子の言う『向こうの世界』っていうのは、時間を捻じ曲げた世界なの。正確には捻じ曲げるっていうか……対象の時間の流れを極限までゆっくりにするの。そうすることによって対象はそれの人間よ速い流れの世界に見え、結果として元の時間の流れに戻った時には感覚的には何年もたっていたとしても実際には数時間しか経っていないってことが起こるの。これにはとてつもない力を使うから、並みの魔術師でもすぐ魔素切れで死んでしまうわ。そしてそれはマリアも例外じゃない」

 「うーん……精神と時の部屋見たいな現象が起こるってことでいいのか……な? まぁマリアの体に負担がかかるなら使うわけにはいかないな……」

 何となくわかるようなわからないような微妙な感想を抱きつつ、日中からの疲れもありその日はそれ以上聞くこともなく、テントに潜り込んだ――。










 「えぇ……はい―――うです。はい。わか――した……はい……」


 翌朝、冷え込んだ外気がテントの隙間から入り込みまだいつもよりかなり早い時間にもかかわらず竜人は目が覚めた。今朝は濃い霧がかかっている。そんな中から、聞き覚えのある声が何者かと話している声が聞こえてきた。

 初めのうちは何かわからずぼーっと聞き流している程度だったが、洞察力に欠ける竜人でも次第にそれが彼らのことを話していることは分かった。

 この声……やっぱりあの人だよなぁ……


 自分たちのことをいつもとは違う声音で誰かに話す。


 いや、報告のほうが正しいかもしれない。明らかに敬語で、それもただの敬語とかではなくかなり目上というか……逆らったら自分の命が危ぶむかのような話し方だった。

 それってつまりはあれだよな? この世界には魔法やら魔術やらの技術があるから遠隔で誰かと話しをすることだって容易にできるよな?

 そんでもって『サタンを倒す』という目的のある集団のことを事細かく報告している。しかもこんなに霧の濃い日の誰も起きていないはずの時間帯と来た。


 これってばつまり、仲間の中にサタンかその手下の内通者がいるってことで間違いないよな?


 竜人はそう確信した。

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