表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30倍の勇者様!  作者: 黒羽烏
一章:サタン襲来
10/55

10話『熊と女性と怒りの一撃』

 「……フォチャ」

 リゼルが軽く組んだ薪に掌を向け呟くと薪がパチパチと音を上げながら燃え始めた。ここは二人が野営地に決めた森の中。静まり返った森の中に薪が爆ぜる音だけが聞こえている。

「……物を燃やす魔法……?」

「えぇ、そうよ。本当は精霊術が使いたいのだけれど、この時間に炎をつかさどる精霊『サラマンダー』を呼び起こすのも気が引けるし、大したことでもないからね。ちなみにこれは魔法ではなく魔術よ。人間が生み出した魔法のようなもので、使用条件やデメリットが魔法とは全然違うの。あと、基本的に魔法は悪魔や天使、神様か魔法を作ったとされるドラゴンしか使うことはできないわ」

 なるほど。割と細かいルールがあるんだな……

 「ところで……話し方変わった…?」

「あっ……ごめんなさい……そういえば竜人くんにはあの後の記憶はあんまりはっきりと残っていないんだったっけ……話し方が変わったのはあの一件の後からなの」

 困ったような顔をしたリゼルが頭を下げた。

おそらくあの一件とは夜の宿で起こったリゼル殺害未遂事件のことである。

「いやいや、今のままのほうが何となく懐かしい感じがして落ち着くから戻さなくていいよ」

 なんでかなぁ……別に過去にリゼルにあったことがあるってわけでもないと思うし、彼女に似た女の子と過去に交流があったってわけでもおそらくなく。竜人のことを『竜人』と呼ぶ人間は家族を除くと男女問わずいない。過去にいたわけでもない。

 しかし、どこか懐かしい響きが竜人の頭の中をめぐる……





 キャ―――――――――――ッ!!!


 森から大きな悲鳴が聞こえてきたのはその翌朝のことである。とは言ってもまだ日も昇り切っておらず薄暗い森だ。

 「ん……何かあったのか……?」

 しかしその声に竜人とリゼルは反応して、目が覚めた。

 「この声の大きさならここからそう遠くないよ。行く…?……って野暮なこと聞いちゃったね」

 微苦笑を浮かべながらリゼルがテントから出てきてかなり乱れた髪と服を簡単に整えた。

 どんだけ寝相悪いんだこの子……

 一方こちらもテントから這いだした竜人も武器屋で買った刀を背中の腰の高さに横向きにさし、懐にはクナイが数本入っていることを確認し飛び出した。

 「あ、竜人待って!!? 一人で行ったら危険かもしれないでしょ!?」

「人の命がかかってるかもしれないんだぞ!? そんなにゆっくりはしてられない! それに、オレはもうそこまで弱くはないんだ……多分」

 ちなみに、今の彼には30倍の力があるため、もちろん走る速度にも影響してくる。元の世界ではどちらかというと走るのは遅い部類にあった竜人だが、こちらではそこそこのスピードが出る。

 「なかなか、便利な能力だな」

 30倍の走力、30倍の視力、30倍の探知能力。

 おかげで悲鳴の主とその原因はあっけなく見つかった。


 一人の女性とその身体の何倍もの大きさがあるであろう大きな熊。

 「なるほどね……」

 おおよそ森を散歩中だった女性が突如熊に襲われて悲鳴を上げたところだろう。それならまだケガはしていない……は…ず……?

 なんだあの大量の血は。

 それは、おおよそ出血し失った血の量故出血多量で人が死んでもおかしくはないであろう量の血が熊の口を中心に、大きな手、鋭い爪そして女性の足元を真っ赤に染め上げていた。

 「うーん……ここからじゃわからん。とりあえず熊を始末するか」

 走りながら呟いた竜人は走る速度を上げて背面に手を伸ばし刀に手をかけた。


 シャリィィィィィィィィン――


 心地よい音とともに逆手で引き抜いた刀を熊とすれ違い様に熊の横っ腹に一撃。

 しかし、手ごたえはあったもののかえって熊を怒らせてしまったみたいだ。

 仕方なく竜人は刀を身体の前で構えなおし、熊と対峙する。すでに熊の怒りの指針はマックスを振り切り、竜人以外の物は何も目に映らない。

 その間に追いついてきたリゼルは女性を保護し、安全な場所まで身を引いた。血だらけの女性を見た大けがを予想したリゼルであったが、女性の身体には大したケガはしていないように見えた。


 そんな二人を横目に確認すると、竜人は無意味とわかりつつ熊に語り掛けた。

「オレ、本物の刀握るのは初めてだから。お手柔らかに頼みますわ」

 ニヤリと口の端を上げて言う彼の顔は怒りに染まっていた。


 言い終わるや否や熊は竜人にとびかかった。しかし彼はオオカミ相手に鍛えられた瞬発力と動体視力で難なく身を躱し、熊の腕と身体の隙間に入ると両手で刀を握り飛び上がった。

 もちろんすれ違いざまにうなじに一太刀浴びせる。しかしそれで熊は力尽きることなく竜人が飛び上がった方向に腕を力任せに振る。

 「そんなに適当な攻撃、犬っころのほうがよっぽど考えて攻撃してきてたぜ」

 そういいながら熊の攻撃が届かない高さまで飛び上がった竜人はそのままの勢いのまま太く高い木の幹に足をかけた。そしてそのまま思いっきり蹴りだし、今度は刀を逆手に握る。

 重力の影響もあって飛び上がった時より早い速度で地面まで、熊まで急速に落下した竜人はこれまたすれ違い様に一太刀、そのまま着地した彼は振り向く寸前また持ち替えて振り向きざまの強力な一太刀を熊の腹部に浴びせた。


 その10秒足らず。


 そんな彼を遠めに見守っていたリゼルは彼の成長っぷりに開いた口をふさぐことはできなかった。

はい、毎日投稿始めてから10日目!

10話の終了となります!!

予定としては、ここで3分の1。でも、キャラクターはまだ出そろってい無いのが現実……

まぁ特に何話目で終わらせるとかは決めていないので……どれぐらいになるのかなぁ……(笑)


とりあえず、今後ともお付き合いのほどよろしくお願いいたします(*- -)(*_ _)ペコリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ