表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】少年王が望むは…  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第6章 寝返りは青薔薇の香り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/96

6-23.龍は夜空に吠える

 漆黒の闇の先、小さな灯りが見えた。通常なら用心すべき状況だ。敗走しているわけではないが、敵の包囲網を抜けるショーン達の一行は追われる立場だった。


 何かの合図のように明滅したトーチの火に、ラユダが声を張り上げた。


「援軍だ! 反転攻勢、一気に叩け!!」


 その掛け声を待っていた正面の集団が立ち上がる。火を灯した松明を手に、兵士達が動き出した。馬で駆け込んだショーンは、手前でくるりと馬首の向きを変える。手を伸ばして松明を1本受け取ると、頭上で回して合図を送った。


「シュミレの名誉にかけて!!」


「「「龍の申し子に勝利を」」」


 言わなくてもわかる。互いの呼吸のタイミングを知る援軍は、近衛師団から派遣された精鋭だ。悪魔のような冴えを見せるウィリアムの配慮に感謝しながら、ショーンは再び声を張り上げた。


「敵を押し戻せ、つぶせ! 我が後に続け」


 そのまま馬の腹を蹴る。駆け戻るショーンの隣に、馬首を揃えたラユダは調達した槍を構えていた。騎馬戦こそ、彼の本領発揮だ。滅びたラユダの一族は、砂漠近くの草原で騎馬を得意とする民族だった。誰より巧みに馬を操るラユダは、自由な両手に武器を構えて敵を払う。


「嘘だろ! 大軍が増援に来たぞ」


「どこからだ?!」


「急げ、逃げるぞ」


 駆け戻るショーン達は、元の傭兵部隊に多少の増援はあったが、さほど数自体は増えていない。しかし敵軍は彼らの背後を見るなり、騒いで逃げ始めた。


「なるほど……死神らしいペテンだ」


 ただ精鋭部隊を送るだけの男とは思わなかったが、騎士を兼ねる執政は(いく)()での機転も優秀だった。複数の松明をつけた家畜を走らせ、数を誤魔化したのだ。家畜は周辺の村で買い上げたのだろう。


 牛だけではなく、羊や山羊も混じっていた。どうやら数さえ揃えば関係ない、とばかり現地調達したらしい。松明をつけた一軍は暗い道をひた走った。種類の違う足音が混じり合い、さらに数が多く錯覚させる。


 パニックになった集団は止まらない。敗走し始めたアスター国の兵士を蹴散らし、敵の戦線は崩壊した。敗走する敵の深追いは避け、ショーンは兵を休ませるキャンプを作らせる。


 せっかくの差し入れだと、数頭の牛を労ってから焼いて食べる。腹が満ちた兵士は、見張りを残して休息を取った。


 家畜は現地調達することで、役割がいくつも与えられている。まずは敵を蹴散らす大軍を連想させるため、次はショーン達への食料として。最後に敵から貴重な食料を奪い、アスター国民の逃亡資金となった。逃げ込んだ難民はシュミレ国で金を使うので、使った金は戻ってくる。


「本当にあの男は優秀だ」


 自らのテントでごろんと横たわるショーンが呟く。手回しが良すぎて、未来を予見しているのではないかと疑いたくなった。政治的な話ならばともかく、戦場では自分の読みが優れていると自負してきた。しかし戦場を読んだようにピンチに手を差し伸べたウィリアムに、初めて恐れに似た感情を覚える。


「ショーンの動きを予測したのだろう」


 親しいからこそ、動きや考え方を読まれやすい。


 行儀悪くマントを敷いて寝転ぶショーンを起こしながら、ラユダは手早く寝具を用意した。薄い生地だが温かく、多少の湿気は防いでくれる優れものだ。元はラユダの国で作られていた布だった。


 遊牧民に近い生活を好んだ民族は、移動にかさばらない寝具やテントの技術が優れている。それをシュミレ国に持ち込むことで、ラユダ達の一族は保護されてきた。


「ふん……俺が間抜けではないか」


「今回に関しては感謝しかないはずだ」


 差し出されたお茶を口に含み、渋い味に顔をしかめる。ショーンの不満をお茶に溶かし、ラユダはからりと笑った。


「好敵手に恵まれるは人生の彩りを豊かにする――次に返せばいいさ」

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

感想やコメント、評価をいただけると飛び上がって喜びます!

☆・゜:*(人´ω`*)。。☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ