表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】少年王が望むは…  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第6章 寝返りは青薔薇の香り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/96

6-5.埃だらけの空き家は悪党の巣

 悪ガキのような笑みだが、口元がまだ赤く汚れた青年は凄絶な雰囲気を纏っている。


「信じる必要はないさ。オレは痛む身体で、このヒキガエルを背負う気がない。だが取引材料として使えるから持ち帰りたい。お前は勝ち馬の尻に乗りたいんだろ? 利害の一致だ」


「……なるほど」


 利害が一致する間は、互いに争う意味がない。だから背後の心配は不要だと笑える男に興味がわいた。雇い主を裏切れば、次の仕事が()にくくなる。その不利を承知で、シュミレ国の執政ウィリアムという男の本質を知りたくなった。


 大国の執政ならば侯爵以上の爵位を持つ、お坊ちゃん育ちのはず。紫眼だが、今こうして貴族の肩書や職責を持つなら、迫害されたわけじゃなさそうだ。


 肩書や地位に見合わぬぞんざいな口の利き方、柔軟な考え方と差別のない広い視野、他人を魅了する才能と容姿――本人は死神だと口にするが、その悪態すら魅力的だった。


「悪いが、そのヒキガエルを生かしたまま運んでくれ。礼はする」


 シャツを割いて止血した右手に剣を持ち、ウィリアムは己の姿を確認して溜息を吐いた。


「派手すぎて、これじゃ表を歩けないぞ」


 血塗れの全身を嘆きながら、激痛が走る足ですたすた歩きまわる。拷問係として彼を痛めつけたファングにしてみたら、異常な我慢強さだった。


 半分剥いだ足の爪は激痛の温床だし、膝や関節を中心に痛めつけた傷は、泣き喚く痛みを生み続ける。肩や腰の刺し傷も、首の痣も、両手の指は半分ほど青紫に変色していた。助け出されるまで自力で動けないところまで痛めつけたはずだ。


「……よく動けるな」


 眉をひそめたファングの短い物言いに、ウィリアムは肩を竦めた。


「この程度で動けなくなるほど、生温い環境で生きてないのさ」


 もっとひどい環境だったと匂わせ、部屋を出る。地下室の上は、空き家になっていた。その部屋の中から、なんとか着られそうな服を見繕う。


「袖と裾が短い……」


 着替えるか迷いながら文句を言うウィリアムの背後で、空き家の扉が外から開かれた。


 飛び込んだ6人の兵士が剣を抜いて、剣呑な声をあげる。薄暗い空き家の埃が光って見えるほど、外の陽光は眩しかった。現在は昼間のようだ。


「ここだ! 探せ!!」


「おう、こっちだぞ」


 ひらひら手を振って立ち上がるウィリアムの前に、駆け込んだ6人の男が膝をついた。全員がアスター国の兵士服を着ているが、明らかに動きが違う。洗練された正規兵ではなく、柔らかくしなやかな身のこなしだった。


「お迎えご苦労さん」


「ご無事で何よりでございました」


「痛そうですね、ボス」


 口々に話しかける連中の特徴は、『記憶に残る特徴がない』ことだ。拷問係なんて仕事をしてれば、嫌でも上層から下層まで様々な人種を扱う。人の裏を嫌というほど見てきたファングにとって、目の前の男達は異様だった。


 どこにでも居そうな平民なのに、戦闘能力は明らかに上位者のそれだ。ただし、正規兵の堅苦しさはなかった。まるで隠密や暗殺を生業(なりわい)とする輩に似た、どこかピリリとした緊張感を纏う。


「こいつは?」


 先頭にいた黒髪の青年が眉をひそめる。膝をついた彼の頭にぽんと手を置いて、ウィリアムは6人に宣言した。


「新人さんだ、仲良くしろ」


「血の臭いがすごい」


 後ろにいた茶髪の男が探る目を向ける。ぱんっとウィリアムが手を叩いた。すぐに視線を向ける男達へ、この場の支配者は長い髪を手櫛で整えながら笑う。


「今回のオレの拷問係。なかなか的確だったし、使える奴だぞ」

 

 身をもって体験したから間違いないと、とんでもない暴露をしたが、彼らは苦笑いしただけだった。まだ血塗れの執政に濡れたタオルを差し出しながら、1人が「服を調達してくる」と駆け出す。その間に手の空いた3人が手際よくユストゥスを縛り上げた。

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

感想やコメント、評価をいただけると飛び上がって喜びます!

☆・゜:*(人´ω`*)。。☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ