5-24.秘密は薔薇の下で
くすぐったいと肩を竦めるエリヤの唇を最後に塞ぐ。すぐに離れた唇は、触れるギリギリの距離で言葉を紡いだ。
「すべて排除するまで、あと少しだね」
「そうしたら、俺は自由になれる」
「……オレは置いてかれるのかな?」
不安そうに呟いた、いつもは自信家の男に伸び上がってキスをする。触れるだけの唇が離れて、笑みを浮かべた。
「お前は俺の半身だ。置いていけるはずがない」
きっぱりした断言に、ウィリアムは嬉しそうに表情を緩めた。
晴れた庭に美しい白い薔薇が広がる。白を好む少年王のため丹精込めて育てた中庭に、6人の男女は集っていた。庭の薔薇を楽しむ麗しい姉弟を微笑ましく見つめる東屋の面々は、それぞれに報告を始める。
「オレの方は戦後処理はほぼ終わりだ。今回は新たな自治領が増えたが管理は女王に任せるし、オズボーンは支配下に置いたが王族が健在。予定通りだな」
機嫌のいいウィリアムに対し、頭を抱えているのはエイデンだった。城の守りを担当した騎士団が、裏から攻め込まれたことで大幅に戦力を削られていたのだ。死者は少ないが、その分重傷者が多くて復帰に時間がかかりそうだった。
新たな騎士を育成するチャンスと、平民から新規の騎士を募集したところ……応募が多すぎて手が回らない。騎士は準貴族として扱われるため、若者にとって出世に一番近いが危険な職場として認識されている。ある意味食いっぱぐれはない職場だ。
今回、王城に攻め込まれたことで愛国精神豊かな国民は奮起した。城門の中に多くの民間人がいたのは、彼らも平鍋や鎌、鍬といった武器を手に戦うつもりで駆けつけたからだ。その愛国心は、無事だった国王によって労われた。
かつてないほど国民の士気が高まっている。今までは数を抑えて募集していたが、この際だから平民を多めに雇ったらどうかと案を出して承認したウィリアムは肩を竦めて他人事だった。
「僕は大変だったよ。まだ終わってないけどね。騎士団の立て直しに手が足りない。近衛から数人借りられない?」
「しかたない。俺の私兵を貸そう」
泣きついたエイデンに助けの手を差し伸べたのは、チャンリー公爵であるショーンだった。独自に私兵による部隊を作った彼の、今回の戦での損害は少ない。猫の手も借りたいエイデンへ貸す人数は都合できるようだった。
「すぐ貸して! 今日から!!」
「明日行かせる」
すぐに飛びついたエイデンに苦笑いし、ショーンは手配を約束する。おそらくラユダあたりも派遣されるだろう。
「私はほとんど片付いたわ。あとは調整だけね。オズボーンの将軍と国王の不仲を弄った証拠は消したし、ラシエラの女王は口を噤むよう言い聞かせたわ。オズボーンの貴族階級の半分は爵位と領地の剥奪が決まりそうよ」
他国の王室や貴族を脅した結果をさらりと報告するドロシアは、紅茶を口に運んだ。
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