表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】少年王が望むは…  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第5章 魔女は裏切りの花束を好む

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/96

5-6.聖女は薔薇を好み、魔女は棘を嫌う

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

感想やコメント、評価をいただけると飛び上がって喜びます!

☆・゜:*(人´ω`*)。。☆

「こまったこと」


 報告された書類を読み終えると、美しい指が蝋燭の火を紙に移した。一瞬で燃え上がる紙を、暖炉の中に放り込む。まだ火を入れる季節でないため、暖炉の中は薪すら用意されていなかった。


 燃えた紙を灰掻きで崩してから、紙を摘んだ美しい指を唇に押し当てる。綻んでしまう口元を戒めるような指は、やがて喉を滑って胸元のロザリオを握り締めた。


「私は馬鹿が嫌いなのにね」


 呟いただけだ。だが命令を受けたように、書類を届けた黒尽くめの男は一礼して去った。後姿が見えなくなった頃、彼女は部屋のカーテンを開く。蝋燭ひとつしかなく暗かった室内に、月光が差し込んだ。


「道化師が踊るのは本人の勝手だわ」


 それがピエロ自身の破滅に繋がっていても……判断して手を出すのは本人なのだ。責任転嫁するような言葉は、鈴を転がすような笑いと共に響いた。







 教会の奥庭は、新たな薔薇が花開こうとしていた。四季咲き、いつでも気温にあわせて気まぐれに花を咲かせる薔薇が、白い蕾を緩めていた。蕾の上部だけ紅色を滲ませており、開けば花びらの縁が赤く染まっているだろう。


「美しく咲きそうですわね、リリーアリス様」


 かつて魔女と呼ばれた(すみれ)色の瞳を微笑みに細めた美女が歩み寄る。薔薇の棘を器用に避けて、優雅な仕草でドレスの裾を(さば)く彼女の仕草は、王侯貴族のようだった。


「これはエリヤから頂いた私の名を持つ薔薇ですもの」


 淡い金髪を持つドロシアが近づいた先で、聖女であるリリーアリスは薔薇の蕾に手を添えていた。その手に小さな切り傷があることに気付き、ドロシアは眉を顰める。


「リリーアリス様、お怪我をなさっているわ」


「さっき棘に触れてしまったから」


 苦笑いした栗毛の美女の手を掬いあげ、傷をよく確認した。確かに棘に寄るひっかき傷であり、中に棘が残っている様子は無い。その事実にほっとしたドロシアは、傷の血に唇を寄せた。


 外の血を舐めてから唇をすぼめて血を吸い出す。わずかに苦い味の血を外に吐き捨てた。


「薔薇の棘は毒がありますのよ、リリーアリス様。もう少し御身を大切になさって下さいませ」


「ありがとう」


 頬を染めながら応じた姫は、エリヤの姉であり唯一の肉親だった。両親と上の姉を奪われた少年王の弱点であると同時に、この国の宗教上の聖女として崇められる存在なのだ。


 代わりがいないという意味では、エリヤと変わらない。美しい薄紫の瞳が瞬き、ドロシアへ微笑んだ。強い風が吹いて、ドロシアの長いストレートの髪を乱す。編みこんでいるリリーアリスも、軽く己の髪を押さえた。


 強い風はどこか生ぬるく、不吉な感じがした。


「……始まるのですか?」


「ええ、戦ですわ」


 政治と切り離された聖域の奥庭で、美女2人は誰よりも政治に近い言葉をかわす。乱れた髪をそのままに、ドロシアは胸元のロザリオを握り締めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ