4-13.悪魔の恋は弄ばれて
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国王陛下の行列が通る――小さな町に、村に、その噂は広まった。すぐに大きな街でも話が伝わり、あっという間に帰還のルートが露になる。
通常なら、ここまで誘われたら手を出さない。間違いなく何らかの罠を警戒するからだ。しかし、彼らに罠を回避して身を伏せる余裕はなかった。
国王が城まで帰り着けば手を出せなくなる。外にいる今なら、こちらの知る領地内を通る状況だからこそ、討ち取るチャンスが巡ってくるのだ。手をこまねいて首を斬られるのを座して待つか、罠を承知で飛び込み王を討つか。彼らの選択肢は限られていた。
そして、選択肢は2つではない。罠に飛び込み討ち取られるという、最悪のシナリオも存在した。もちろん、これから主人である国王を狙う輩がこの結末を考えるわけがない。
青空の下、朝食後の時間を利用してチェスを始める。話し声が外部にもれにくい庭の木の下は、まだ若い枝が木陰を作っていた。
「準備は?」
カチンと白のナイトを動かす。手元のチェス盤に集中したフリで、ウィリアムは声をかけた。白の駒を数手先まで見通して、黒のルークを2つ先へ動かしたエイデンが笑う。
「完璧だよ、僕が指揮を執ったからね」
昨夜は忙しかったと準備の所為で隈が浮かんだ目元をアピールする。エイデンは水色の瞳を少し充血させていた。どうやら徹夜だったらしい。
「それは重畳、信頼してるぜ」
「当然さ、失敗したら僕も死ぬことになるじゃないか」
自分が生き残る為にも、幾重にも回避策や安全策を講じたと告げるエイデンの前に、白いポーンがたどり着いた。女王と向かい合うポーンを見落としたエイデンが空を仰いだ。
「……王手だ」
「降参しますよ、死神さん」
「おや? 懐柔の悪魔らしくもない」
社交界で付けられた嫌な二つ名を口にされ、エイデンの顔が歪む。だがすぐに黒の女王を拾い上げ、盤の外へ逃がした。
「悪魔で結構、魔女とお似合いでしょう?」
「確かに」
顔を見合わせて笑う彼らの様子は、遠くから見れば友人同士の戯れだった。その内容が恐ろしく物騒なことを除けば、事実関係は間違っていない。
チェス盤の内容は現実と重ねず、ただのゲームとして無意味に消化した。チェスの上で戦術を協議するほど、彼らは互いの戦い方を知らないわけじゃない。肩を並べて他国と戦った経験もあるが故に、どうしたら互いに戦いやすいかを理解していた。
「ウィル、紅茶を淹れてくれ」
「畏まりました」
テラスから手を振る主人に一礼し、ウィリアムはいそいそ戻る。その後姿を見つめ、エイデンは溜め息をついた。
「何年越しの恋だか知らないけど、尻に敷かれすぎ」
自分の恋を棚に上げてぼやくと、手元に残されたチェス盤を斜めに傾けて駒をすべてテーブルに落とした。
「あと、僕に片づけをさせるのは無茶だよね」
片付けなんてしたことないもの。そう嘯くと、散らかした駒の上に盤を裏返しに置いて、エイデンもテラスへ向けて歩き出した。もちろん、ウィリアムが淹れた極上の紅茶のご相伴にあずかるために。




