4-9.魔女は応援を手配する
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白い鳩が届けた手紙を開き、ドロシアは言葉を失った。傲慢で自分勝手なあの男が頼みごと、それも素直な文面が並んでいる事実に驚く。
ドロシアも同じだが、ウィリアムは非常にプライドが高い。生まれや育ちではなく、上り詰めた地位や立場を誇るだけの能力を持っているからだ。己の持つ人脈、能力、才能、すべてが他者より優れているという事実に基づいたプライドだった。
それゆえに、他者を頼ることを良しとしない。頭を下げて頼むなど、よほど追い詰められる事態なのだろう。くすくすと淡い金髪を揺らしてドロシアは笑った。
「いいわ、協力してさしあげてよ?」
報酬は後から、目を瞠る程の高額を請求してやろう――文句を言いながらも彼は用意するだろう。互いに貸し借りなど残さぬよう、盛大に吹っかけてやるのがドロシア流の気遣いだった。
魔女の証と罵られた濃い菫色の瞳を伏せ、ドロシアはしばらく考え込む。座っていた猫足の椅子から音もなく立ち上がると、彼女は優雅な足取りで部屋を後にした。
そろそろか。
窓の外の暮れゆく夕日を見送る。ソファの端に腰掛けた膝の上には、頭を乗せて眠るエリヤがいた。
狙われることに慣れてしまった子供は、過ぎた過去に恐怖を感じたりしない。怯えて眠れなくなることもない。それでも密着したがるのは、単に愛されているからだ。
そう言い切れる自分が擽ったくて、ウィリアムは穏やかな笑みを浮かべた。
艶のある黒髪は見た目に反して、猫の毛のようにしっとりした柔らかさだ。指で髪を梳き、伏せた瞼を辿り、まろい頬を撫でた。
規則正しい呼吸を聞きながら、再び窓の外へ目をやる。
「……来たか」
口元が自然と緩んだ。
「ん……ゥィル…?」
名を呼んだ唇がふわぁと欠伸をして閉じられた。何度か瞬いたあと、吸い込まれる蒼の瞳が現れる。
「起こしちゃったか?」
髪を撫でながら小首を傾げると、笑みを浮かべたエリヤが首を横に振った。起きあがろうとする子供を支えてやり、そのまま膝の上に抱き上げる。
降りようとしても、しっかり腰に回した腕がそれを許さない。
「……お前は我が侭だ」
「知ってるよ」
平然と肯定するウィリアムの返答に目を見開くが、すぐに笑いながら背を預けて寄りかかった。無邪気に誘う主の旋毛にキスを落とす。
窓の外から軍馬の足音が聞こえてきた。兵民や貴族の馬車を引く馬とは蹄鉄が違うため、まったく違う音がするのだ。
「誰を呼んだ?」
「エイデンだ」
アレキシス侯爵の嫡男だ。領地は少し離れているが、駆けつけられない距離ではない。普段から仲のよい彼を護衛に呼ぶ理由はわかるが、問題は現在の彼が医者という職業に夢中である現実だった。
戦いに身を投じるよう説得しても、頑固な彼は頷かないだろう。
「……侯爵ではなく?」
「エイデン本人」
「よく承諾したな」
父親が元気な間は医者として過ごすと宣言していた。金髪と水色の瞳、整った外見から戦いに向かないと思われるが、弓に関しては国内屈指の腕を誇る。
周囲が彼を戦場に呼び戻そうとする一番の要素は、エイデンの采配だった。全ての部隊の特性と配置を踏まえて動かす能力は、ウィリアムも一目置く存在なのだ。
先だってのオズボーン戦も参戦しなかった男を、どうやって呼んだのか。
好奇心を浮かべる蒼瞳に、ウィリアムは肩を竦めた。
「簡単さ。『魔女』に頼んだんだ」
「お前が、ドロシアに?」
失礼なくらい驚いてみせる国王へ、執政は苦笑いするしかなかった。




