陽奈と八千代の町
翌朝、紅夜は旅館の食堂で朝食を食べていると陽奈に声をかけられる。
「隣、いいですか?」
謙虚に尋ねてきた陽奈に対し紅夜は無言のまま頷くと、隣に座った陽奈から今日一日、町を案内させてほしいと提案される。
「昨日はあまり町を紹介できなかったので、勿論、高桐さんの都合がよければなんですが?」
「むしろこっちから頼みたいぐらいだったからな、そう言ってくれると助かる」
「余計なお節介かもと思っていましたから、そう言ってもらえて嬉しいです、それでは――」
「おう! 陽奈と紅夜、二人そろって仲良く朝食か?」
茶化すような笑みを浮かべた灯火は大胆に着崩した浴衣姿で二人に声をかける。
「お、お姉ちゃん、浴衣はだけていますよ!」
「あ? 何言ってんだい陽奈? これはこういう風に着てるんだよ、どうだい、粋だろ?」
着崩した浴衣姿で得意げに回ってみせる灯火を見て陽奈は顔を紅潮させ、紅夜は呆れながらも顔を逸らす。
「や、止めてください、恥ずかしいです!」
「なんで陽奈が恥ずかしがるんだい? それよりどうだ紅夜、あたしのこの姿、粋だろ?」
「――正直、目のやり場に困るんだが」
豊満な胸元も大胆にはだけ、裾は膝が隠れる程度の長さしかないないのでちらちらと肉付きのいい太腿が見えてしまっていた。
「おや? 生意気な口を利く紅夜にしては意外な反応だね、意外と初なのかい?」
「ほっとけ」
「ははっ、これじゃあ、紅夜じゃなくて『坊や』だな!」
得意げな顔でそう言うと豪快に笑い始める灯火に、二人は小さくため息を漏らす。
「年甲斐もない、格好をして、若者を、からかわない」
灯火に遅れて食堂へやって来た泉千は昨日と同じように黒色を基調とした巫女服をきっちり着こなしていた。
「なっ! お前、年甲斐もないって言いやがったな、あたしはそこまで歳をとってるつもりはねえんだ、あたしは永遠の少女なんだよ!」
「よくそんなこと言える、高桐とは九つ、陽奈とは十三も、離れてるのに」
「あー、聞こえない、全くもって聞こえないね~」
「若いね、精神年齢だけは」
「このっ、黙って聞いてれば、そう言うお前だってあたしと変わらないだろ!」
「困る、同じにされても、五つも若いのに」
「五つなんて誤差だ、誤差、こいつらからみればお前も立派な年増だ」
「寒い、五つ差だけに、誤差なんて」
「おっ、本当だ、気づかなかった。泉千、いいところに目をつけるね」
「うん」
豪快に笑う灯火とお淑やかに笑う泉千は対照的ではあったが、二人は同じような笑顔を浮かべ楽しそう話している隙に、紅夜は付き合いきれないと言わんばかりの表情を浮かべ一人食堂から逃げ出そうとする。
「ちょっと待て、あたしらはあんたに用があるんだよ」
「ある、大事な話」
灯火に後方から肩を捉まれ、泉千には正面に回り込まれる。
「俺に大事な話? それって――」
「あー、詳しい話は後々、とにかくあたしらに付いて来い。それじゃあ陽奈、坊やは借りるよ」
灯火に無理やり腕を引っ張られた紅夜が驚きの声を上げている間に陽奈と別れてしまい、連れてこられたのは昨日の評定の間だった。
「それで大事な話ってのは?」
昨日と同じ位置に三人が座り最初に口を開けたのは紅夜だった。
「まぁ、なんだ、少しだけ真面目な話なんだが、坊やにも今の鳳凰旗団の戦況と言うか、現状を知ってもらったほうがいいと思ってね」
灯火の言葉に正面にいる泉千も『うん、うん』と頷く。
「まぁ、たしかに俺は鳳凰旗団の状況も七條家の軍のこともよく知らないからな、そこら辺も教えてくれると助かる」
「それじゃあ、簡単にだが、式兵一体を兵力一として戦力差を説明するが、七條家五千に対してあたしら鳳凰旗団は一万」
「それじゃあ、これで――」
真剣な顔をしている灯火に対し、紅夜は呆れたように席を立とうとする。
「待ちなって、別に冗談ってわけじゃないさ、あたしと泉千がいれば一万の式兵に匹敵するから、なっ、泉千?」
「一万でもいい、一人」
「おっ、いいねっ! そしたらあたしらの兵力は二万越えだね」
二人は楽しそうに笑い、紅夜は一つため息をつく。
「いくら強い武将でも式兵を一万も斬れるわけがないだろ、霊力が無くなれば武将と言ってもただの人、仮にこの大陸最強の武将なんてのがいたとして、その武将が霊力を極力温存しながら式兵を相手にしても精々二百斬ればいいところ、まぁ、それでも十分すごいんだが」
「二百ねえ、紅夜はその大陸最強の武将ってのに会ったことがあるのかい?」
「『仮に』って言ったはずだ、俺はそれなりに武将を見てきたがどんな強者でも百体斬ったところから霊力が落ち始める、つまりはそこら辺が一人の武の限界のはずだ」
「そんなもんかねえ? でも、坊やはあたしらの力を見てないだろ?」
「見なくても強いことはわかる、だが、一人で一万の式兵を斬れるのならとっくに七條家は滅んでるはずだ、違うか?」
「はっはは、違いない! それじゃあ、おふざけなしで単純に式兵の数だけを比べるとな、五千対三百だ。勿論、あたしらが三百な」
「……近々で大敗でもしたのか? それで大量に式兵が削られたとか?」
「たしかに兵力は削られているが、あたしらと七條家の兵力差は大体こんなもんだ」
「聞いた話じゃ、鳳凰旗団は七條家とそれなりに戦ってるって話だが、こんな兵力差でよく今まで――」
十倍以上の兵力差でただの一揆衆がここまで主家と渡り合うことは普通ではない、それでも鳳凰旗団は一年近く七條家と争いこうして生き残り民に希望を与え続けている。
それを不思議に思った紅夜だったが二人の表情を見てまさかと思い言葉を止める。
「たしかに坊やの言う通り、一万の式兵を一度に相手するのはいくらあたしらでも無理だ、だがね、間隔を開けて休み休み戦えばどうだい? 例えば百体の式兵を百回の戦場で斬り捨てていたとしたら? それは一万の式兵に値するんじゃないかい?」
「――なっ!!」
僅かに口角を上げながら堂々とそう言った灯火を見て紅夜は瞬間的に『そんなことはありえない』と思ったのだが、それは口から出て来なかった。それしか思いつかなかったと言うのもあるがこの二人ならあながち冗談だと思えなくなったからだ。
それほどまでにこの二人の纏っている空気は今まで見た他の武将と一線を画している。
「なんてね、いくらあたしらが戦に明け暮れてるとは言え、百回も戦場に立ってなんかないんだけど、ねえ、泉千?」
「半分、くらい?」
このやり取りを見て紅夜は確信する。鳳凰旗団と威勢のいい名を付けようが所詮は一揆衆、それがここまで主家の軍を苦しめているのは紛れもなくこの二人の武によるものだと。
「解せないな、それほどの力があるなら七條家の家臣にでもしてもらえば、一生安泰で暮らせるのに、どうして――」
「『どうして主家に反乱する革命軍なんてしてるのかって?』随分くだらない質問だね、それじゃあ聞くが、坊やはどうして名高い皇家の部隊長なんて地位を捨てたんだい? そのまま部隊長でいれば、金や食いもんに困って賊相手の用心棒なんてすることもなければ、今にも崩れそうなお堂で寝ることもない、ましてや他国の革命軍に参加するなんて羽目にもならなくて済んだんじゃないのかい?」
「…………」
「まっ、そういうことだ。あたしらにはあたしらのやりたいことがあるし、目的がある。そのために命懸けで七條家と戦ってるってわけよ」
「陽奈から聞いた話によれば七條家の圧政は随分酷いらしいな」
「……その酷い圧政から民を助けるのがあたしらの役目ってことよ」
「――そうだね、うん」
灯火の言葉も泉千の言葉もどこか歯切れが悪いことに疑問を抱きながらもその後も二人からこの辺りの戦況や七條家の戦力について軽く教えてもらい、この場はお開きになった。
灯火と泉千は評定の間で少し談笑をするらしく、紅夜は先に部屋を出ると廊下で陽奈に声をかけられる。
「あっ、高桐さん! ようやく終わったんですね」
「ああ、まぁな、それよりその口ぶりだとずっと待ってたみたいに聞こえるんだが?」
「ん? はい、待っていましたよ、そこで」
少し首を傾げながら陽奈は廊下の脇に立っている柱を指差す。
「はっ? なんで? 鳳ヶ崎に用でもあったのか?」
「いえ、高桐さんと町を回る約束をしていましたので」
「……たしかにしたが、あれから一刻は経ってるぞ?」
「はい、一刻の間、廊下でただ立っているのは意外と大変なんですね」
紅夜はため息を漏らし、額に手を添える。
「わざわざ、こんなところで立ってなくても、誰か代わりにここで待たせておくとか――」
「それだと代わりの人が大変だと思います」
「だったら、せめて座ってるとか――」
「この廊下に座るところはありませんよ?」
紅夜と陽奈とでは考え方も常識も違う。そしてそれは互いに一理ありどっちが正しいというわけではない。故に紅夜はため息をつく。
「……(ある意味、鬼島より陽奈のほうが相手にしづらい)」
天真爛漫で何を考えているのかわからないように見えるが、しっかりと自分の考えを持っていてそのために動くことが出来る。それは今の紅夜には無い、つまり反りが合わない。
「顔を逸らしてどうかしたんですか?」
「お前って変わった奴だとかよく言われないか?」
「はい、よく言われます! でも、どうしてわかったんですか? もしかしてそれも赤眼の力なんですか!?」
「俺は呪い師じゃない、ほら、くだらないこと言ってないでさっさと町に行くぞ」
「あっ、ちょっと、待ってください。置いてかないでください~」
廊下を先に歩き出した紅夜の背中を追って陽奈は駆けだす。
「この町、昨日も思ったが随分活気に満ちてるよな」
澄んだ青空の下で町の中心街を陽奈と隣り合って歩く紅夜は、道を行き交う人の多さとその活気に満ちた声に感心する。
「これも七條家じゃなくて鳳凰旗団が町の政を取り仕切ってるからなのか?」
「いえ、わたしたちはあくまでこの町を本拠としているだけですから統治のようなものはしていません、どちらかと言えば居候のようなものですね」
「それじゃあ、鳳凰旗団がやったことって言うのは――」
「はい、わたしたちはただ七條家の圧政からこの町を守っただけです」
「それだけでこの活気か……、確認するまでもないが七條家の傘下に入ってる町はこうはいかないんだろ?」
「そうですね、この町もわたしたちが来たときは酷い有様でした。表通りでさえ閑散として裏通りは……」
「飢餓に苦しむ人や病持ちばかり、挙句は処理されてない腐敗した遺体の山か?」
「――この町に来たことがあるんですか?」
「いや、ただ、どこの国だろうが、無能が王になれば町や村の惨状は大体同じになるんじゃないかと思ってな」
「それじゃあ皇家の治める町も? ……もしかして、高桐さんが皇家に対して一揆を起こしたのは――」
「どんなに崇高な理由があったとしてもそれを成し遂げる力がなければ何の意味もない、いや、無能が分を弁えずに行動すれば、その分だけ周りを不幸にする」
期待を込めた眼差しを向けられた紅夜は口が滑ったことを後悔しながら顔を逸らす。
「ん? あれは――」
逸らした顔の先には人気の少ない路地で四人の男が一人の青年を囲んでいた。
青年が抵抗する素振りを見せるとごろつきたちは一斉に青年に殴りかかる。
「(まっ、いくら良い雰囲気の町とは言え、ああいうのはどこにでもいるからな)あっ」
そんなことを悠長に考えていると、紅夜の視線を追って陽奈が路地に目を向けると、一瞬も躊躇せずにごろつきたちに向かって行ってしまう。
「何をしているんですか!?」
全く怯える様子もなく毅然とごろつきたちに尋ねる。
「あ? 女には関係ねえだろ! すっこんでろ!」
「そうはいきません、大した理由もなく四人がかりで――」
「ごちゃごちゃうっせえ女だな!」
ごろつきの一人が陽奈に向かってそう言いながら詰め寄り、陽奈の顔面を殴った。
「うっ!」
男の拳は陽奈の鼻辺りに当たり、身軽な陽奈は後方に倒れ、尻餅を着く。
「(ったく、余計なことに首を突っ込むから、まぁ、これで諦めて――)」
「わたしは、その人を助けます!」
その淡い考えを否定するかのような揺るぎないその言葉を聞き、紅夜はまた額に手を当てため息を漏らす。
「はっ、いいぜ、それじゃあ代わりにあんたに遊んでもらうとするか、たっぷりとな」
男たちは青年を逃がすと、下卑た笑みを浮かべながら陽奈に向かって距離を詰める。
「まぁ、どうせこうなるとは思ったけどな」
お節介の癖に向こう見ずで、見た目通り弱い癖に見た目によらず頑固で、自分の身よりも他人の身を案じる。陽奈に出会ってまだ数日だったが、すでに紅夜はそんな陽奈のことをある程度理解し、その危うい性格に付き合うのがどれほど大変なのかをこの町への道中で理解している。だからこそ、こういったところである程度痛い目を見ればあるいは――と紅夜は一瞬考え手助けせずにいたが、殴られても揺るがない陽奈のその強い信念に紅夜のほうが根負けし、陽奈とごろつきたちの間に入り背中越しの陽奈に向かって諦め気味にそう呟いた。
この町に鳳凰旗団の本拠があることはこの町の人間ならほとんど知っている。そしてその鳳凰旗団筆頭の妹である陽奈の顔を知らない町人のほうが珍しい。故に陽奈のことを知らずに絡んできたこのごろつきたちは活気のあるこの町に狙いを付けた余所者だった。
そんな奴らが紅夜に勝てるはずもなく、ごろつきたちは一蹴され全力で逃げて行った。
「う~、まだ痛いです」
「(まさか、その治癒術が術者には効果が薄いなんてな)」
陽奈の治癒術は自身に対しては効力が弱いので傷はまだ癒えておらず、鼻は少し赤く腫れていたままだった。
「痛い思いをしたくないなら、霊力を纏って戦えばよかっただろ?」
少し腫れて鼻血が出ていた鼻を布で抑えている陽奈の隣で紅夜が呆れながらそうぼやく。
陽奈と紅夜は日が暮れた頃、近くの飯屋に入っていた。二人掛け用の席で机を挟み向かい合う陽奈と紅夜は料理がまだ運ばれてこないのでそんな他愛もない話をしていた。
「それは、そうなんですけど、わたしたちは居候のようなものですからあまり街中で霊力を使うのは――」
「(そんな事情があるなら先に言えよ)だったら、関わらなければよかっただろ?」
普通に霊力を使ってしまった紅夜は若干の後ろめたさを感じながらもそう問いかける。
「で、でも見てしまった以上知らない振りはできません」
「はぁ、結局あのあとも商店の手伝いに迷子探し、あげく町中の掃除まで請け負って、その結果、ゆっくりと町を見て回れなかったんだが?」
「そ、それはそうですけど、でも、その御詫びにこうして御夕飯はご馳走すると――」
「俺は何もお前に詫びてほしいと思ってるわけじゃなくてだな……はぁ、もういい(そもそもなんで俺がこいつの身を案じないといけないんだ)馬鹿らしくなってきた」
「すみません」
「……最後に一つだけ忠告しておく、目先の人助けも大事かもしれないが出来ることと出来ないことはしっかり分けろ」
「それは――」
陽奈がそこまで言うと言葉を遮るように店員が料理を持って現れ、机の上に手早く並べ、一礼をすると去っていく。
「うわぁ!」
「うわぁ」
机の上に置かれた一枚の大皿を見て二人の口から出た言葉は全く同じだったが、目を輝かせている陽奈に対し、紅夜は冷ややかな目で大皿を見ていた。
「すごく美味しそうですね!」
「どこがだ!?」
真っ黒に焼かれ蜷局を巻いている大蛇がそのままぶつ切りになって大皿の上に置かれているのを見て陽奈は少し興奮気味だったが、紅夜は至って冷静だった。
「えっ? 美味しそうに見えないですか? この料理はわたしの一押しですよ」
「……一押しってことは『これ』を食べたことがあるってことか?」
「はい、勿論です。すごく美味しいんです」
その笑顔には一切の曇りもない。紅夜は一瞬口うるさい自分に対して復讐のつもりでこれを注文したのかと思ったのだが、陽奈のいつも通りの天真爛漫な笑顔を見て、本気でこれを美味しいと思っているのだと思い、軽く引いている。
「成実にも何度か食べさせましたが、いつも嬉しさに体を震わせながら美味しそうに食べてくれますよ?」
「(あいつも大変だな)あいつはお前に甘い――だ、け……」
そこでようやく紅夜は成実と約束を交わしていたことを思いだしたのだが、特に取り乱すことも無く、「(まぁ、いいか、どうせ道場に行ったところでろくなことにならないし)」と思うだけだったが、その頃道場で律儀にも正座をしながら紅夜を待っていた成実は『あの男ぉぉぉ、絶対許さん!』と怒りに震えていた。
「たしかに見た目はよくありませんが美味しいですよ、食べてみてください」
「い、いや、俺は――」
「食べてくれないんですか?」
目を潤ませながら首を傾げる陽奈を見て若干の心苦しさが芽生え始めていたのだが、それをぐっと堪える。
「わかった、先に陽奈が食べてから食べる」
「先に食べてもいいんですか! それではお言葉に甘えて、いただきます」
手を合わせた陽奈は躊躇なく切られた蛇に箸を伸ばしそのまま口へ入れてしまう。
「うぅぅん! 美味しいです!」
嫌がる素振りは全くなく、本当に幸せそうな顔で蛇の丸焼きを食べている姿を見た紅夜は引きつった顔で「(嘘だろ!?)」と驚いていた。
「さぁ、次は高桐さん、どうぞ、この大きいのとかが美味しいと思います」
大きく切られている身を勧めてくる陽奈に対して紅夜はため息が出てしまう。
「(こんなことならあいつとの約束、忘れずに行けばよかったな、いや、これがその罰なのかもしれないな)――わかった、食えばいいんだろ」
約束を忘れていたことを後悔しながらも自分で食べると言った責任をとるために紅夜は覚悟を決めて陽奈に勧められるまま一番大きな蛇の身を食べたのだった。
蛇の丸焼きは想像よりも食べやすく美味しいと思った紅夜だったが食べ終わったあと気分が悪くなり「もう二度と蛇は食わない」と宣言し、陽奈はえらく落ち込んだのだった。