終、
……やっと、人になれる。
アリアはそっと瞳を閉じた。
体から、黒く朧げな光りのようなものが出てくる。
同時に、どこからともなくやってきた白く儚げな光が、彼女の体に入っていった。
それらはアリアの心だ。
死神として生きるために‘本物’の心を捨てた、アリアの‘嘘’の心。
瞳を閉じて詠唱しているカオスたちにそれは見えない。
もちろん、アリアにも。
「今、死神‘アリア・レマード’を人にする」
儀式では、この言葉を最後に言う。
アリアはそれを聞いた。
……あぁ、もう姉さまに会う事は無くなるんだ……
閉じた瞳からは、涙が一粒。
頬をつたい、ゆっくりと落ちた。
私は、手元の本から窓の外に瞳を移した。
『気がつけば、もう十一年も前になるなぁ……』
私は人となり、赤ん坊からやり直したのだ。
私には、美音と名付けられた。
三年前、私は自分が死神だったことを思い出す。
当時八歳だった私は、訳が分からず、昔見たアニメか何かだと思っていた。
でも、二年前のある日。
プロの占い師に前世を占ってもらったら、
「あなたの前世は死神でしょう」
と、言われた。
『あの時はびびったなぁ』
「美音!」
たそがれていた時、教室のドアが開いて、私を呼んだ。
「あ、芽衣。おはよ」
「あの噂ってホントなの!?」
「へ?何のこと?」
「美音の前世が‘死神’ってこと!!!」
私は少しだけ驚いた。
そして、微笑んで、
「ホントだよ」
と、前世の死神と似た、長髪をなびかせて言った。
この物語は、フィクションです。