日常パラメーター
技術発展著しい昨今、とある技術者により「日常パラーメーター」が開発された。
それは文字通り、普段の日常生活を数値化したもので、それぞれ何をしたかでレベルが上がっていくシステムになっており、一目みればその人物がどういう事に長けているのかがわかるという優れ物だ。
若い世代を中心に普及し始め、今では企業での採用試験時にも活用されるなど、その需要は年々高まっている。
使用法として一般的には、腕に専用の装置をつけるのが基本だ。
「よっしゃ! 家事レベルアップ!!」
マサルは日常パラメーターを見て一人歓喜の声を上げる。
家政夫を目指している彼は、目下、家事の特訓中だったのだ。
「うーん、でも数値はまだ中の上くらいか……。もう少し上げてかないとなぁ…。よし! 買い出しにでもいきますか!」
そう決めると、身支度をして家を出た。
****
「まじかよ…」
意気揚々と最寄りのスーパーに行ったマサルの目前では、今まさに強盗が押し入っていた。
黒い覆面に、手には包丁。
小さな店舗のため、防犯設備が手薄なのを狙ったのだろう。
店員に強盗が金を出せと要求している。
その犯人のパラメーターは、身体能力は中の下だが、狂気が上である。
勇敢さのパラメーターが低いマサルでは、勝ち目がないと、そう思った。
店員の方のパラメーターを見ると、コミュニケーション能力は高いが身体能力は低く、犯人に勝てそうにない。
(どうしよう……ここで立ち向かえば勇敢さはかなり上がる。けど、リスクが高すぎる……)
マサルがどうしようかと考えあぐねていると、マサルの横をもの凄いスピードで走り、強盗に一直線に蹴りを入れた御老人。
あまりの一瞬の出来事に、店内の全員が思考を停止している。
「おい、そこの若造! 何をボサァッーとしておる! 早く此奴の手を拘束するのを手伝わんか!!」
御老人にいきなり言われ、慌てて手伝いに入る。
同時に、店員さんが通報し、まもなくして、警察官が到着した。
全てが突然で驚いたが、マサルの勇敢さに経験値がほんの少し上がったのを、日常パラメーターで確認した。
店員さんが御老人にお礼を言っているのが聞こえる。
(結局、今日は災難だったけど、まぁでも、パラメーターが少し上がったからいっか!)
そう思いながら、ふと、興味本意で件の御老人のパラメーターをみて、マサルは愕然とした。
何故なら、その御老人は身体能力、勇敢さ、そして正義感がカンストしていたのだ。
「……超人って本当にいるんだ……」
世界の広さを体感したマサルは、自分の夢のため、またパラメーターを上げるべくいつもの『日常』へと戻って行った。




