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第九話  少年は、とある体質を望みました。

 油断していた────わけではないが、ちょっと危険。あのでっかい大福モドキはおそらく黒色か、それに近い色をしているんだろう。すっかり辺りの闇色に溶け込んでいて、注意して見ないと赤い点以外全く視界に映らない。おそらく俺がヤツに気付く前に、とっくにタゲられていたんだろう。完全に逃げ遅れたな、これは。大福モドキとの距離は残り20m弱といったところ。


 15m。


 10m。



 ・・・。




 いやいやいやいや、傍観してる場合じゃないよ!?さっきから思ってたけど、図体がでかいわりにカサカサセカセカと、こいつだいぶすばしっこい。とっととズラからないと、本当に大福に喰われる。

 180度クイックターン、と同時に全力疾走しようとしたところでのんきにも思い止まる。

 はて、ここでなにも考えなしに逆走してしまって良いのだろうか───。

 いや、逆走はやめておこう。あくまで進路方向は変えない方針でいこう。せっかくここまで走ってきたのに、逆走はしては意味がない。てなわけで、もう一度180度クイックターん────


 

シイィィィッ!


 っ!?

 今大福から変な音がぁぁ...!

 思わず飛び上がった拍子に体勢が崩れ、後ろによろめく。



 ガスッ! 



 っ!!

 直前まで俺がいたところにぶっとい針みたいなモノが突き刺さっている───。そしてゆっくりと地面から抜けていき、大福の上方へと戻っていく。



 シイィィィッ!



 今のは───。

 紛れもない攻撃だった。細かいことは考えずに今すぐにでも走り出したい。というかもうすでに足は地面を踏み込んでいた。

 理性が完全にぶっ飛ぶ寸前、なんとか進路方向だけは制御しようと試みる。大福とは真逆の方向ではなく、大福の右横を駆け抜ける。大福の目が追うのを感じるが、今度こそ何も考えずに全力疾走。走りを邪魔する思考は全て排除して、ただ本能の赴くままに足を動かす。



 幸い、大福の横を通り抜ける際にグッサリやられてバッドエンド、という展開にはならなかった。進路方向も変えずにいられた。しかし後ろからはカサカサと大福が追っかけてくる。まだまだハッピーエンドにはほど遠いようだ。

 ───そろそろ大福に現実逃避するのはやめよう。アレはちゃんと見覚えのあるヤツだ。俺は以前、あんなような形をした生き物をテレビで見たことがある。正面中央に赤い点が2つ付いていたかどうかまでは覚えていないが、左右に大きなハサミ、後ろから上方にかけて生えている、大きく反り立つ長い尻尾。その形はまるでとあるオモチャみた....ゲッホゲッホ──おまけに尻尾の先端は恐ろしくとがっていて、いかにも武器ですって感じ。こいつは見た目高さ3m弱の巨体で、俺の知ってるやつより遥かにデカいが、それでもこれだけの特徴が一致してる生物は他に無い。───世界最古の節足動物、サソリだ。サソリと言えば有名なのが、尻尾の毒攻撃。ちょうどさっきやられたやつだ。尻尾で串刺しにされれば当然、ヤツのディナー(もう朝ご飯かな)になること確定だが、ワンチャンかすっただけでもディナー(朝食?)になるかもしれない。サソリはデカいヤツほど毒が弱いっていう迷信を聞いたことがあるような気がしないでもないけど、盲信ダメ、ゼッタイ。かすり傷から毒が回ってゲームオーバー、というのもある意味テンプレなのだから。




 俺は自分の足に感謝した。今のところ、全力で走っていればサソリに追いつかれずにいられる。それに、一直線に走っているのに他のモンスターと遭遇することもない。サソリが下位のモンスターを寄せ付けないんだろうか。

 でもこっちの体力も永遠に続くわけじゃない。遅かれ早かれ、このままだといずれ追いつかれてディナー(夜食かな?)になってしまう。そろそろ対策を講じないと。




 タイマンを張るつもりはまったくないが、それでも何かしら得物は欲しい。護身程度でもないよりはマシだ。しかし、当たりは一面草原のため、木の棒1本すら落ちていない。

 他に何か使えそうなものは───と、自分の現在の所有物を確認しようとして、初めて自分の格好に気付いた。まさかのパジャマだった。もちろんポッケにはなにもなく、手ぶら。いくらなんでもパジャマは...。夢の中でまでパジャマ姿なのはどうしてだろう。普通夢だったらもう少しちゃんとした装備でも良いはずなのに...。異世界に転移する夢だったらせめて剣の1本くらいは持たせてくれよ...。

 だが、『ただのよれたパジャマ』という装備には、1つだけ利点がある。それはおそらく、他のどんな装備よりも軽いことだ。つまり、この装備をつけたときが一番敏捷力のステータスが高いということ。戦闘するならともかく、走って逃げおおせるだけなら案外この装備のほうが良いのかもしれない。───まあ装甲が紙切れだから《ミッション:ノーダメクリア》以外に生き残る道は無いのだけれど....。







 俺がもし主人公だったなら────。




       勇敢にもサソリ大福に決闘を挑むだろう。






 俺がもし主人公なら────。




 いきなりチート発現、からのサソリ大福ワンパンキル。






 まあ、テンプレだよな...。



               だが俺は────。












 『ただの学生さん』こと俺は、主人公にはなれそうもないので、このまま逃げ続けます。


 矢尽き、刀折れるまで───ではなく、ただ単純にスタミナが無くなるまで...。





               うわぁ...カッコわり。

よしまた1話。

 最近思うのですが、まだ話もよく分からんようなときから、伏線を張りすぎたような...。

 もういっそ、はじめのほうは飛ばして読んで貰って構わないのでは───?


本当に、このままだと回収するのがだいぶ先のことになってしまう。





          ま、ええか(;^_^A

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