第八話 予期せぬフラグ建築
目が乾く。顔に、突風が吹き付けているからだ。走り始めてから3時間弱。早くも息が切れてきている。空は明るくなる気配もなく、むしろ闇色を増しているように思える。30分ほど前から、魔物が近くにいないときはペースを落として省エネモードに移行していたのだが、それでも疲れがたまらないわけじゃない。そして今は全力疾走中。後ろを向けないというか、向いている余裕がないというか、とにかく何がいるのかは確認できないけど、なんか後ろから羽音がするんだよ、羽音が。低い低周波を出しながら、何かがブンブンうなっている。それが恐怖感を煽り、自然とこちらのペースも早くなる。実は小さい頃に植え付けられたトラウマのおかげで蜂が苦手なんだよな...。だから羽音を聞くだけで体が興奮状態というか戦闘状態というか....。あぁ、早く諦めてくれないかなー。俺なんて食べても美味しくないのになー。とは言っても、たぶん連中にとっちゃ人間はおおごちそうなんだろうな....。考えただけで背筋がゾワっとくる。ごちそうといえば、なんだか腹が減ってきたような気が。スタミナが足りないのは空腹ゆえの事なんだろうか。いや、ただ自分の体力がないだけだな。最後に食ったのって、何だっけ。あれ、記憶にないな。何だっけ....。まあ、いいか。てか夢の中で何かを食べるのって可能だろうか。いや、そもそも周辺に食べ物なんてあるのだろうか。魔物を退治して食べる?いや、100%腹壊すよな....。草?おれは草食動物じゃない。他には────、うん、何もないよな...。
あれ、いつの間にか羽音が止んでる。念のためすぐには止まらずに、少し速度を落として後ろを振り返る。が、羽音の正体はどこにも見当たらない。光学迷彩使用───なんてこと、無いだろうな....。
魔物を避けながら走っていたため、ある程度クネクネしながら走ってはいるものの、基本的に大きく進行方向を変えているつもりはない。後はこのままなんとか夜中まで走り抜いて、そして友好的なNPC───じゃない、人と、エンカウン──じゃなくて出会えることを祈るばかりだ。いやその前に、俺の夢に人間という種族が存在していることを祈っておこう───。
それからまた3.4時間ほど経ったときだった───。
体感的に言ってもそろそろ夜が明けていい頃だろうし、あれから2.3回変なのに追っかけられはしたけども、なんとか振り切ることが出来た。ぶっちゃけ気合で走っていればなんとかなった。このままあと少し走り続けていればなんとか朝まで生き延びれるだろうと思っていた。
考えてれば、その「やったか───?」見たいな考え自体がすでにフラグだった。しかしそれに気づいたところでどうすることもできず、ふいに足の力が抜け、立ち止まってしまう。
最初はただの違和感にすぎなかった。しかし「ソレ」は、段々大きくなるにつれ、なにかの影に見えてきた。
まるでてっぺんに木の棒がささった大福のような影。
しかしそんなモノが動けるはずはなく。
ガサガサと音を立てながら近づいてくる「ソレ」は、明らかなほどの殺意を放っていた。
やばい、とか、こわい、といった感情ではなく、「ソレ」の放つ殺意に驚いた。俺は凡人だから、アニメの中の主人公のように殺気など、感じられるはずがないと思っていた。しかし今俺が明確に感じ取っているものは殺気、殺意といった、相手を纏う敵対意識に他ならなかった。ピリピリとした感覚などではなく、相手に睨まれている感じ。もしかしたら、ただの推察なのかもしれない。相手がこっちを見ながら近づいてくる。しかも相手はどうやら友好的モブではない。それらから推測できる、相手の敵意。
段々距離が狭まってくる。大福の真ん中に赤い点がふたつ。大福の両脇にでっかいハサミがそれぞれひとつずつ。なかなか物騒な大福だな......。木の棒は、大福のてっぺんに突き刺さっているわけではなく、大福の後ろからてっぺんに向かって反り立つように伸びている。木の棒というよりはむしろ大福の尻尾。
殺意を放ち、1対のハサミを持つ、尻尾の生えていて、2つの赤い点があるおっきな大福。
とてもじゃないけど食えそうにはないな。そして何より───。
────大福じゃないよね、これ。
よし....書き終えたぞ───。
あけおめ。そしてことよろ。
案の定、クリスマスと正月はイベントの嵐でした。ほんとにどこの運営も聖夜だの謹賀新年だの....。しかもクリスマスプレゼントだーとか、お年玉だーとかいって、この時期のイベント報酬は地味に豪華なものだから、うかつに無視も出来ないですよねー。そしてリアルでも忘年会があったりでなにかと忙しい。小説書かなきゃ、という気持ちだけが空回りしています。
しかし俺は決して逃げないと誓った(個人的に)。だから書き続けますよ?だいぶ投稿
日数が空いてても、ちゃんと更新しますよ?しますからね?
読者に伝えるというよりはむしろ、自分に言い聞かせ.....(ry