第二話 現状(リアル)
夜はゴールデンタイム、とかのたまってネトゲにいそしむ。すると、そのうちイヤホン越しに聞こえてくる、朝刊配達員のバイクのエンジン音。そんな毎日を過ごしていた。俺は"学生さん"の中でも高校生、という職業。だからある程度の成績を取るためにも、授業中に眠ることは出来ない。そして学校が終われば毎日のように課外活動。これがまたスパルタなもので、ひどいときには夜の8時過ぎまで残されることもある。運動部じゃああるまいし──。そう、文化部だ。文化部なんだが...。
弦楽部なんだよな、実は。なんでってか?実はこう見えて、楽器をやってた事がある。小さい頃は、そりゃもう熱心に練習してた覚えがある。物心ついたころには曲なんて1回聴けば引けたっけ。楽しかった。楽しいと思えたんだ、昔は。
話を戻すと、そんな、ハードスケジュールを組んでいる訳だから、必然的に寝不足になっていくんだよな。
特に朝方が一番つらい。眠さに負けて中途半端に30分ぐらい寝てしまった時にはもう、明け方地獄のような気だるさが全身を襲う。ある意味規則正しい生活?なのか?これ。
今日もオールしたため、朝食をとるのにも一苦労だった。なんとかなまくらボディに鞭打って、家を出た。
「────ん。」
──寒さは感じない。けれども肌を冷たくなでるような、凜とした風だった。俺の倦怠魔もいくらか弱まったようだ。
4月22日。そろそろ寒くは無くなってくる頃だが──。
「とりあえず、駅まで歩いてれば、少しは覚醒するかな。」
何気に電車通勤だったりする。けれど、電車の中の可愛い女の子?そんなものが存在するのだろうか。ていうか、まず三次元って可愛い娘はいるのだろうか。量産アイドル系は、顔みんなおんなじに見えるしな.....。などと、ぼーっと考えながら電車に乗り込む。親は、高校生は花咲く青春~とか言っているけど、ちょっとよく分からない。言うなれば永久凍土?花どころかコケすら生えてくる気配はない。
ぼーっとしてると、気付いたら学校についていた。いくら眠気が覚めたとはいえ、寝てないという事実に変わりは無い。暇な時間に何かを真剣に考えられるような体力は、もう残されていないようだ。....いやまだ朝だっての。
「おはよー、おはよー、おはよっ、おはようハヨー、ハヨー.....」
いつも校門前で滑舌の悪い挨拶をひたすら連呼してる教師。学校に大抵1体はいるんじゃないだろうか。普通の人にはただのノイズにしか聞こえないだろうけど、寝不足の俺にはまるで催眠術のような効果を与えてくれやがる。
一限目が終わった。
二限目が終わった。
三限目。
四限目。
あまりにもつまらなさすぎるあまり、授業中にケータイでゲーム。
五。
六。
教室を移動するので、空いた教室のコンセント、ちゃっかり利用させてもらおうか。
六限目及びケータイの充電───終了。
とっとと後片付けをし、終礼をやりすごし、部活。
そしてスパルタ演習が終わればまた家に帰投する。
寝る寸前まで親にいろいろとごたごた言われ、そしてベッドで寝る、ふりをしてネトゲ。朝刊配達員のバイクのエンジン音。
朝食。
登校。
授業。
部活。
帰宅。
説教。
ネトゲ。
なんかの歌の歌詞であったっけか。
敵なんていないリアルで暇つぶしするだけで良いの?
つまんない─
ほんとに。
ぐう正論だ。
現実は、こんなにもモノクロ。希薄。それに気づいたのは、いつ頃からだっけか。気がついたら、分かってしまっていた。
たまにきれい事言ってる連中がいる。
人がこの世に生まれてきた意味?目的?そんな感じの事タラタラと語ってたり、歌ってるのを目にする。
そんなこと言ってる奴らに限って、結局はあいまいな結末にして誤魔化す。答えが分からないからじゃない。答えが「無い」からだ。
だったら何のために──。
なんで───。
なんで、生まれてなんか来たんだろうか。
生まれてなんて来なければ、こんなにも退屈な思いしなくてすんだのに。
唐突に、テレビをつけてみた。
「21日の午前10時半頃殺人事件がありました。犯人は、その後車で──────、警察が──────。」
別に俺には関係ない。
最近多いな...。べつに経験値が貰えるわけでもないのに...。逆に貰えるのなら殺すかって言われると、そうでもないんだけどさ...。
テレビを消し、家の二階へ上がる。正面の扉を開けると、そこは俺の部屋。
「今日はさすがに寝ないとな。そろそろ死ぬ。ガチで。」
夢も何も見なかった。
異世界にいく妄想もしなかった。
ただ、深い眠りに落ちた────。
これはもはや物語ではなくて、但のつまらん日記なのでは──。
ちゃんと好期を与えるつもりではいるのですが、前置き?的なのがちゃんとないと、世界観が分かりづらいかもしれませんので。もう少し辛抱ください。