第8話 旅立ちの前日
お父さん、お母さんお元気ですか?私がこちらに来たのは新年あけて少しの頃。
確か振り袖姿のお姉さんを見て、「あぁちょっとでもいいから、はだけてくれないかなぁ」と思っていた時期だと思います。
こちらに来てからもう4ヶ月近く経とうとしています。そうそう、4月も過ぎたのでキョウスケ=カガミも6歳になりました。
日本ではゴールデンウィークを過ぎた頃でしょうね。
あぁ父さんはアメリカですからあまり関係ありませんかもしれませんが、日本では季節の変わり目です。
体調など崩されませんよう、どうかお身体はご自愛ください。
そんなことを考えながら、真夏日の王都を歩く俺。
何してるかって?そりゃ僕もむざむざフランツたちに殺されるわけにはいかないからね。
召喚されてからこの4ヶ月で準備を進めていたんだ。
で、明日にはオデッサにむけて出立。その前にこの4ヶ月の仕上げをしないといけないわけですよ。
もちろん、俺が準備したんだ。一つを除いて準備万端と言っていい。
「ねぇ恭介、本当に大丈夫なの?」
来た、一番の不安要素が。
なぜ優希姉が俺に付いてきているか?それはハロルドとの密談の後に起きたある事件によって引き起こされた...
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「ねえねえ恭介、今夜は私と一緒に寝よっか?」
「お断りします」
おいおい、いきなり断ったからってそんな捨てられた子猫のような目で俺を見られても困るんだぜ。
「ぎょう゛ずげ~、あ゛だじの゛ごどぎら゛い゛に゛な゛っ゛だの゛~゛」
あぁ、そんな垂れ目に…って、俺は騙されないぞ!!撥音に濁点が付けれる声ってどんな声だよ!!
「こら、優希。恭介君も困っているでしょう?」
「なぁなぁ恵美、今夜は俺と一緒に寝よっか?」
「俊樹はスライム達と同じ寝床で寝てこい」
恵美さんがせっかく優希姉をなだめようというのに俊樹さんが茶々を入れ、その場がカオスになり始める。
フランツたちはこんなところを盗聴盗撮してるんだよな~、ご苦労なことだ。
…ん?盗聴魔道具の反応がないぞ?監視している人間も呆れて監視をやめたのかな?
「トシキ様、折り入ってお話があります。お部屋にお入りしてもいいでしょうか?」
俺が盗聴の反応がなくなったことに気づいた瞬間、外からそう声上がった。
「こんな深夜に…」
「まさかうちの恭介を狙って…」
「いいよ、入って入って~」
真剣に訝しがる恵美さん、心配する方向がどこかおかしい優希姉。そして能天気な俊樹さん。
いや、俊樹さんの知り合いだからすぐにいいよと言ったんだろうけどさ。
入ってきた少女を見て俺は目を丸くした。おいおい、フランツの側室じゃねえか!
「私エルリンド=ディアナトリナ=スヴァローグが娘アマーリエ第3王女です」
「ええええ!!!!!」
そんな馬鹿な。フランツの娘がこんなに可愛かったとは!
「お坊ちゃん、何でそんなに驚いたのかしら」
「国王陛下と全く似ていらっしゃらなかったので…」
言っちまった。もしかしたら無礼打ちされるかな?だがそれよりも気になることがあるな、こいつがフランツの娘だとすると俊樹さんに近づいた理由は?こんな深夜に部屋に入ってきた理由は?盗聴が止まったこととの関係は?
俺は警戒を最大限まで上げる。
「まぁ、あの父上に似ているといわれるよりそちらの方が嬉しいわ!」
ん?何か予想と違うな。まぁ無礼打ちなんてされたら敵わないからいいことだけど。
「アマーリエ王女様、恭介君とご歓談されている中申し訳ありませんが、今回ご訪問された理由をお聞かせ願えますか?」
さすが恵美さん、脱線しかけた話を素早く戻していくな。
「お伝えしたいことがあって。先ほど立ち聞きをしたのですが、国王陛下はキョウスケさんの暗殺を企てています」
警戒する俺には気づかず、アマーリエ姫はそう切り出した。
「物騒な話ですね。私たちが貴方を信じていい根拠は?」
恵美さんちょっと顔が怖いよ。
「…確かに国王陛下の企てを証明する手立てはありませんわ。ここは信じて…」
「国王陛下の企てが本当だとしてましょう。貴方を信じていい根拠は?」
「それは…私がトシキ様にあんなことやこんなことになる寸前に助けて頂いて御恩を感じているからで」
「それはこちらに手助けする理由ですね、私が聞きたいのは『信じていい根拠』ですよ」
誤魔化すような回答をするアマーリエ姫にそう恵美さんが追及すると、アマーリエ姫は涙を浮かべて「ありませんわ…」と力なく声を振り絞った。
このアマーリエ姫、『信じていい根拠』というものなんて出しようがないことに気づいたんだな。だから最初から誤魔化すような答えだったのだろう。そう考えると彼女はそこまで阿呆ではないかもしれない。
アマーリエ姫が恵美さんに完膚なきまで叩きのめされたのを見かねてか、いつの間にかそばに立っていた亜麻色の長い髪の乙女が口を挟んできた。
「勇者様、今この部屋の盗聴・盗撮の魔道具は無効化しております。もちろんのことながら、ダミーの情報を相手に与えています。もしご不信であれば今からこの部屋の盗聴・盗撮の魔道具を全て掃除したうえでこの部屋を盗聴・盗撮できないようにすることも可能ですが」
そういいながら、隠してある魔道具あるところをすべてを指差していった。隣にいるアマーリエ姫は思わぬ援護射撃に喜んでいるかなと彼女を見てみると、あまり表情は変わらない。彼女、本当に阿呆じゃないかもしれない。だって…
「残念ですけど、あなたが言う『無効化』が本当のことかこちらで判断できませんし、『お掃除」したところで、全ての器具を外してもらえたかどうかも判断できません」
そういうことだ。どこまでいっても俺たちと彼女の関係は「異世界人」と「異世界人を召喚した国の関係者」でしかない。たかだか1,2日の付き合いで「信頼に足る根拠」など提示できるわけないのだ。それにしても恵美さん厳しいな。ここまで厳しい言葉で応じられ、援護射撃した少女も項垂れたか。…もう少し項垂れてくれれば服の中の桃源郷が見えるんだけどなぁ。
「恵美さん、その人たち、嘘ついていないよ」
いつまでも場面を硬直させても意味がないので、俺は口火を開く。
「僕の持っているアビリティは嘘発見器みたいな能力でさ。その人たちが言っていることは嘘じゃないよ。あと、隠された機械を探し出すアビリティも持ってるんだ。今このお姉さんが指差したところ以外におかしな機械があるかチェックしたけど他にはないみたいだから、この人たちが見逃していることも無いよ」
「さすが私の恭介!」
うん、こんなシリアスなシーンでも優希姉はぶれないな。
「で、アマーリエさんのお隣にいるお姉さんはどこのどなたですか?」
そこから、アマーリエさんはクラウディアさんを紹介し、国王たちが企てているハロルド左遷計画、勇者奴隷化計画、俺暗殺計画の3本立てを話してくれた。
「私たちが小間使いされるのはいいとして、恭介君のことは問題ですね。こちらが『保護してくれ』と言った手前、オデッサに行かないという選択肢を選ぶわけにもいきませんし...困りましたね」
「土砂崩れと見せかけて暗殺するなんて、ぬぁんてインチキ!もう、ここは俊樹がカチコミに行ってタマ取ってくるしかないわね!!」
「俺の扱いがひどいな!!」
せっかく恵美さんが真面目に考えても俊樹さんと優希姉でコメディタッチにしてしまう。
「優希さん、私としては我が父上が煮られても焼かれても金的取られても別にかまわないのですが、貴族や軍にしてみれば国王に手を出されては黙っていられません。召喚されてすぐの皆様ではこの国と対立しながら生きていくのは困難ですし、ここはなんとか押しとどまってもらえませんでしょうか?」
アマーリエさん、全体的にはいいこと言っているけど『金的取られても』なんて王女様が口にしていい言葉じゃないぞ!
「ふぅ、仕方ない。私は恭介と一緒に付いていくからね!」
なぜに?!
「恭介の命が危ないのからね!お姉ちゃんが抑止力になって恭介を守る!!」
「…あの、とっても言いづらいのですが、宰相は優希さん共々葬る気満々です」
「「「え…?」」」
ふう、やはりそうだったか。俺の予想した通りとんだ悪役だな、あいつらは。
その後、アマーリエさんから既にローレンツが優希姉達の能力を把握していることと優希姉が俺に付いていく計画を把握していることを教えてくれた。ていうか優希姉、この件が無くても最初から俺に付いてくる気満々だったんかい!事前に知れてよかったわ!!
それにしても優希姉が付いてくることになるとは。こりゃあ計画を少し見直さねばいけないな。何にせよ…
「お姉ちゃん、皆。実を言うとハロルドお爺ちゃんからこんなことを提案されたんだ…」
そうハロルドに責任を押し付け、俺は俺の立てた計画を話し始めた…
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「ここね」
「うん、ここがハロルドさんが言っていた『エルの館』だよ」
緊張した面持ちでドアを開ける。俺はこの家主がある一定条件にあるとき非常に苦手なのだ。
「ちはー、三河屋ですー」
「三河屋、お酒や調味料などを訪問販売する商店。あたしのように出不精な人間にはうってつけの相手」
うわー、やっぱりこいつは面倒だわー。
「あの、弟が冗談を言ってすいません。宮廷にいらっしゃる方からのご紹介を受けてこちらにお伺いしたんですけど…」
あの弟原理主義の優希姉が俺のことで謝った…だと…?
「冗談だとわかって冗談で返事をしたわ。で、誰からの紹介を受けたのかしら?」
ほっとする優希姉。やっぱりこのヤンキー調の『エルメンヒルデ=デューラー』はさすがに怖いのか。それにしてもこいつ5年の間にさらに威圧感増したな。
赤みがかった金髪に碧眼の美人顔なのにその顔のシャープさと化粧の濃さで全てを台無しにしているな。紫のアイシャドーが追加されて更に怖くなったな。
「宮廷魔術師のハロルドさんです」
そういうとエルメンヒルデは怖い顔に怖い表情を浮かべる
「あの爺さんの知り合い?そうか、貴方たちが巷に聞く勇者様ね。…それなら話が早いわ。今すぐ帰って」
あーやっぱそうなるかー。
「どうしてですか?!…私たちはエルメンヒルデさんが私たちにとって必要不可欠になるって聞いてお尋ねしたのに」
「貴方たちがあたしを必要とするかと、あたしが貴方たちを必要とするかには何の因果も存在しないわ。…さぁ諦めてお帰りなさい」
「大森林、アデル、見殺し」
優希姉が肩を落として出て行ってから俺がそう呟くとエルメンヒルデの顔色が変わる。
「爺さんから何か聞いたのかしら?」
「真実は龍の山脈が煌めく時、龍を拝することで開かれるだろう」
「ふうん、『東に坐する神は西に坐する神と交わることは決してない』と爺さんに伝えておいて」
そして夕方になり、俺は優希姉に内緒で再度城下町へ繰り出した。行先は「あそこ」だ。
「あら?てっきり爺さんが出張ってくると思ったのに。陣を用意して損しちゃったじゃない」
「一人に会うのに15人も荒くれを用意するなんて穏やかじゃないですね」
「あの爺さんが一人で来るとは思わなかったもの。しかも王都西門が待ち合わせ場所なら爺さんも援軍を呼びやすい。『圧殺の陣』を引かなきゃこちらも心配だわ。だから15人は妥当な数よ」
予想通りとはいえ、やっぱり物騒だな。
「『東に坐する神は西に坐する神と交わることは決してない』でしたか。この国の有名な伝承で『大切なものを奪われた恨みは奪った当人が思う以上に深い』という意味でしたね。差し詰め、可愛い姪っ子を独り占めしたくせに人質に取られたハロルドさんは許さない、というところですか?」
「なかなか面白い坊やね。そんなに詳しく…」
「あぁ、違いましたね。敬愛する義兄と姉をアデル領での戦いに従軍させた挙句、大森林で見殺しにしたことが許せないんでしたか」
そういった瞬間、怒気が高まる。これは久々に『軍師エルメンヒルデ』の顔が見れるか?
「坊主!!『あたしの領域』に入ってくるんじゃない!」
「そうですね、貴女の能力は広範囲絶対的な能力ではありますが、そういう弱点があるんですよね」
「…それも爺さんから聞いたのか?爺さんが知っているとは思ってなかったけど」
「いえいえ、私はハロルドさんにはしゃべってないですよ?」
「…この坊主と二人で話がしたい。全員陣を解いて好きに帰りな」
そういうと集まっていた荒くれたちは「楽な仕事だったぜ」と口々に帰って行った。
「…さて、坊主。お前はどこまで、いやどうやって知ったんだい?」
「レオンハルト、ドネツクの夜、ベアトリスの不在。…お楽しみ」
お、効果覿面。顔真っ赤じゃん。いやーこういう反応は楽しい奴なんだよねー。
「お、お前!陛下の隠し子だったのか。あの食えないおっさんめ、べらべらべらべら人のプライバシー喋りやがって」
「誰が『食えないおっさん』じゃボケ!」
「へっ?」
「儂はしっかり異世界から召喚されてきておるわ!!まぁその前に異世界転生とやらを体験しておるがの。何ならおぬしの黒歴史総まとめでしゃべってやってもよいのじゃぞ!」
「わーわーわーっ!!!」
あぁくそ!ハロルドとかで止めておくつもりがまさかエルメンヒルデまでしゃべってしまうとは!これで俺の正体を知っているのは3人目じゃないか!てかこの「わーわーわーっ!」の件も久しぶりだな!!
「て、いうことは陛下?」
「今生の陛下はフランツであろうが。まぁおぬしが『陛下』と呼ぶ人間かどうかで言えば、少なくとも『その人物の記憶と能力はある』と答えることになるのう」
「あー、この持って回った言い方。確実に陛下じゃないですか」
その後、俺はエルメンヒルデにも俺の置かれた状況を説明し、今後の協力を求めた。
「陛下も苦労したんだねぇ。で、あの『ユキネエ』の感触をお楽しみだったのかい?…あぁあの子に真実を告げたら陛下がどうなるのか、見てみたいものだわね」
「姉婿との関係、イリス、情報開示」
「あら、知っている人は陛下一人なのよねえ…」
「秘密の手紙、マリアンナ、不慮の事故、開封」
「わーわーわーっ!!!」
ふん、口封じの対抗手段など幾らでも取れるんでな。
さて、こんな単語でなぜエルメンヒルデと会話ができるのかというと、こいつが俺の存命時にこの国の参謀長だったんだ。で、魔族との争いに出陣したとき、俺とエルメンヒルデで暇を見つけては『簡単な意思伝達方法の検討』と題して遊んでおったからだ!!どうだ!中々頭のいい暇つぶしを考えただろう?!
ちなみに何度か出ているレオンハルトはイリスの父親でエルメンヒルデの義兄だ。
エルメンヒルデの姉ベアトリス=デューラーがアルトマン家に嫁いだのだが、このレオンハルトというのがなかなかのイケメンでな…
「まぁ俺たちはお互い脛に傷を持つもの同士だ。仲良くしようじゃないか」
「持ってる情報的にそっちの方が圧倒的に有利じゃないですか!それでさも対等であるかのように宣うとは…この陛下の鬼!悪魔!!」
「俺は手段を選んでられないんでね。修羅にでもなるのさ」
「絶対、修羅になる方向性間違っている…あたしは静かに暮らしたいのに」
こいつやる気ないな。やはり予定通りあの手札を切るか。
「おいおい、本当に静かな暮らしを続けたら後悔するんじゃないかな?」
「え?」
「お前が知っているか定かではないが、ハロルドが北方の魔素だまりの多い地区を拝領したんだよ」
「あの爺さんがどうなろうと関係ないですけど」
「まぁすぐに結論付けるな。…拝領したはいいが、フランツの奴勇者への魔法の教育をハロルドに担当させてな、今領主代行が向かっているのだ」
「ふうん」
「ちなみにな、その領主代行の名前はイリス=アルトマンだ」
俺がイリスの名前を出した瞬間、エルメンヒルデが馬乗りしてきた。
「早くそれを言ってくださいよ!!!!あぁあたしの可愛い姪っ子イリス。今頃ひもじい思いをして泣いていないかしら。あぁ可哀想な姪っ子。待っていてね、お姉さんがすぐに駆けつけてあげるんだから!!」
「せい!」
「あべし!」
ふぅ、途中恍惚な表情を浮かべたエルメンヒルデに、すごい既視感を感じたのは気のせいだろうか。
「エルメンヒルデ、お前は馬鹿か。参謀長だったお前が急に王都から消えてみろ。速攻でフランツが暗殺部隊を差し向けるぞ」
「あたしはイリスがいればそれでいいんですぅ~。暗殺部隊なんてあたしの全方位包囲と調略でちょちょいのちょいですぅ~」
あぁここに優希姉の先達がいた。案外優希姉と仲良くなれそうだ。
それにしてもこいつのイリス愛は恐ろしいな。姪に会えないだけで不機嫌になる女。だから本当は俺自身が直接交渉したくなかったんだけどな。屋敷の問答からわかるように不機嫌な時のエルメンヒルデは最高に面倒くさいのだ。
「俺の威光がある訳じゃないんだ、調略は絶望的だぞ…。まぁいい、俺なら明日には暗殺部隊を差し向けらずにイリスの元へ向かえるように手を打てるが乗るか?」
「対価は?」
「目的地に着くまで参謀として働いてもらう。」
「それじゃあイリスの元に着くのが遅れるじゃないですか!」
「北の地に着くのに移動だけで2ヶ月、途中暗殺部隊から身を守るための調略は1,2週間ぐらいは必要か。ということは襲撃を受ける回数×2週間は余分にかかるな。まぁフランツはしつこさから考えて、お前の計画だと北の地に着くのに半年ぐらいかかるだろうな。途中の都市で足止めを食らうハロルドといい勝負じゃないか?」
「では陛下の案ではそれよりも早く着くと」
「最初はちょっとしんどいけどな。山を越えれば、結構簡単に行くから3,4か月でイリスの元にたどり着けるんじゃないか?」
「陛下、その話乗った!!」
よしよし、これで明日に向けた最後の一駒が揃ったわけだ。
「交渉成立だな。ということでお前には早速明日には王城に来てもらうぞ」
「へ?」
「あぁ、持っていくのは持っていける家財や金貨などの即物的な財産だけにしとけよ。まぁ屋敷はハロルドに命じていつでも売れるように調整しておいた。このあとお前がいつも贔屓にしていた不動産屋が来るよう話はつけてあるからな。売却金額もそこで聞けるだろう。ただ不動産屋も支払いを2,3日後に希望しているから、ハロルドに支払われることになった。お前には先にハロルドから金を渡してくれるらしい。そうそう、持っていくものに服やら食材等旅に必要な用品が無い理由は既に調達済みだからだ。よってその心配はしなくていいし、荷造りにはほとんど時間を取らなくていいぞ。だって明日には目的地に向けて出発するからな。あぁそうだ、大丈夫だと思うが遅れるなよ?」
「えええええええ!」
エルメンヒルデの叫び声が煌めく龍の山脈、つまりは夕陽の落ちる山脈へ向かっていった。
弟想い(ブラコン)と姪想い(めいコン)。混ぜるな、危険。