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転生者は弟さんになったようです  作者: ぼのぼの日和
第1章 プロローグ
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第5話 クソ国王との謁見

「皆様、目が覚めましたかのう」

 思い出したくもない夢から醒めれば、夢にも出てきたハロルドが再登場してきた。

 いや、少し違うな。俺の知るハロルドはもう少し若かったはずだし、何よりこんな憔悴した顔つきではなかったはずだ。見る限り俺が死んで4,5年経った位だ。その間何度も失敗を重ね英霊召喚に成功したという感じだな。憔悴した表情の中には薄暗い感情がこびりついているようにも見える。おそらくフランツが無理強いして英霊召喚をさせたというところか。ということは大事な孫娘を質とされたか?

「はい…ってさっきまで言葉が通じていなかったはずですが?それとうら若き私の恭介を覗き込むあなたはどこのどなた様なのでしょうか」

 うん、異世界にいきなり連れて来られたにもかかわらず優希姉は平常運行だ。

「私はハロルド=アルトマンと申します。言葉がいきなり通じたことは「異世界言語翻訳」の魔法が貴方たちの体になじんだからでしょう」

 涼しい顔して嘘を混ぜ込んだな。「異世界言語翻訳」なんて魔法はない。これは「英霊召喚」の付随効果だ。

「異世界言語…ってことは俺たち異世界に召喚されたのか!」

「勝手にお呼びしてしまい大変心苦しいとは思っておりますが、『英霊召喚』で異世界より私たちが「トリグラフ」と呼んでいるこの世界に貴方たちを召喚させていただいた次第です」

「異世界召喚キタコレー!」

 そうか、俊樹さんはこういうラノベのような展開に憧れていたんだな。イケメンなのに「キタコレー!」とか残念だな。まぁそんなことはどうでもいいか。

「私どもの勝手な行為であってもお喜び頂ければ幸いでございます。ところで皆様のお名前をお聞きしていいですかな?」

「この世界の名前は、「姓」と「名」はどのような順番でついているのでしょうか?私たちの国では、名前は「姓」の後に「名」つきます。同じ世界でも「名」の後に「姓」が着いたり国により様々ではありますけど」

「あぁ、この世界では大抵の場合ファーストネームが先に来てファミリーネームが後に来ます。王族や貴族の方の中にはミドルネームをお持ちの方もいらっしゃいますが」

 騒ぐ俊樹さんをよそ目に恵美さんとハロルドがしゃべっている。ちなみに俺は絶賛優希姉に可愛がれ中だ!

「そうですか。私の名前はエミ=ミズキ、こっちの騒いでいるのはトシキ=カザミで、こちらの小さいお坊ちゃんがキョウスケ=カガミで、そのお坊ちゃんに引っ付いている変態お姉さんがユキ=カガミです」

「誰が変態じゃごるぁ!」

 さて、優希姉の拘束も解けたことだし、優希姉達がフランツにそそのかされる前に手を打たねば。

「ところでハロルドお爺ちゃん、エーレーショーカンって何?」

 俺はある意図をもってそう切り出す。

「お、お爺ちゃん…『英霊召喚』とは異世界より勇者様を召喚する魔法…つまりあなたたちは勇者なのですよ」

 うむ、さすがハロルド。こちらは「爺」呼ばわりという精神的揺さぶりをかけたのに、最小限の動揺に抑えて質問に答えながら相手を持ち上げて話をそらそうとするとは。だが俺はそんなことで追及の手を緩めるほど柔じゃないぞ。

「『勇者』を召喚するのに、『英霊』召喚なの?勇者と英霊の違いって何なの?」

「恭介、英霊っていうのは昔活躍した英雄たちの魂っていう意味なのよ。…って、何で私たちが『英霊』なんかになるの?!」

 さすが優希姉。俺の意図通り英霊召喚の怪しさに気づいてくれたようだな。

「キョウスケ様、ユキ様。誠に申し訳ございませんが『英霊召喚』が何たるかという知識は国王たるエルリンド陛下様の占有事項なのです。私の身分を以てお答えすることはかないません」

 フランツに丸投げするつもりか?ふん、そう簡単に逃がしてなるものか。

「でもお爺ちゃん、すぐに駆けつけてきたよね?召喚したっていうなら、召喚した人かそのそばにいる人がすぐ行くものだと思うけど、エルリンツ陛下が神儀の間に来た訳じゃない。そばにいた人が様子を見に行くならお爺ちゃんより屈強そうな兵士さんが先に来たほうが安全なのにそれもない。っていうことは英霊召喚したのはお爺ちゃんだよね?何も知らずに召喚なんてできるのかな?僕はできないと思うんだけどなぁ?」

「流石、私の弟!!冴えてるわね!!」

 優希姉、そんなに褒められたら照れるじゃないか。一通り疑問をハロルドに投げかけたところで周りを見ると俺が余程難しい言葉を連呼したせいか、恵美さんは少し驚いた顔をしている。ちなみに俊樹さんは「異世界チートだー、夢のハーレム形成だ」と未だトリップから帰ってきていない。そして最後のハロルドは形勢が不利だと悟ったのか苦笑を浮かべている。だが、俺はそれが単なる苦笑ではないことに気づいていた。

「キョウスケ様としゃべっていると、先代の国王陛下との問答を思い出しますよ…さて、疑問はおありかとは思いますが、エルリンツ陛下がお待ちになっております。経緯は陛下よりお伝えされると思いますから何卒謁見の間まで同行してくだされ」

 まぁ、俺もハロルドを追い詰めるために話したわけじゃないからな。優希姉達に英霊召喚ひいてはフランツへの疑念を抱かせればそれでいいんだし。さて、第2ラウンド(フランツとの謁見)に参るとするか。


 謁見の間では既にこの国の重鎮たちが待っていた。あそこにいるのはアデル辺境伯か、また髪が薄くなったな。頭部装甲の配備が丸わかりだ。反対側には憎きローレンツが立っている。玉座にはフランツ…ん?隣に座っている銀髪美少女は誰だ?フランツの娘、いやフランツの娘があんなにかわいい訳がない。きっと側室に違いない。こんな歳の差のある女の子を侍らすフランツ(ロリコン)なんて滅んでしまえばいいと僕ぁ思う訳ですよ

「勇者一行よ、よくぞ来てくれたな。儂は首を長くして待っておったぞ」

 ふん、お前に長くできる首なぞあるものか。

「国王陛下様。ハロルド様に多少の説明は受けましたが、詳しい内容の説明は受けておりません。何故呼ばれたのか?どのように呼ばれたのか等の説明を求めたいのですが」

 恵美さんの言葉に目を細めるフランツ。おそらく心の中でハロルドのことを罵っているのだろうな。

 そうそう、何人も受け答えすると議論が混乱するということから、ハロルドさんからフランツとしゃべる人間を一人にするよう求められたため、誰がしゃべるのか相談したのだが

 俺:   子供過ぎて×

 俊樹さん:浮つきすぎて、相手に乗せられる可能性があるので×

 優希姉 :神儀の間で国王を見て、生理的に無理なので×

 ということで恵美さんが交渉役になることが決定した。

 恵美さんだってフランツは生理的に無理っぽかったが優希姉に押し切られた形だ。哀れ恵美さん。

「何故呼んだかを語る意味はあると思うが、どのように呼んだか等些事ではないか?」

「いえ、召喚された私たちはどのようにして召喚されて、どのように(・・・・・)帰していただくか(・・・・・・・・)を知る義務があります」

 ここまでは打ち合わせ通り。さてフランツの野郎はどう言い訳するものやら…

「儂としては勇者たちには元の世界には帰らずこの国に永住してほしいところじゃがの。…さて英霊召喚とは異世界にさまよう勇者の魂をこの世界に召喚する魔法じゃ。魂を召喚するがゆえに英霊召喚。帰す時は英霊魔法でつなぎとめていた魂をこの世界から解き放つことであるべき世界に帰ると言われておる」

「『魂を召喚する』とのことですが元の世界で私たちはどうなっているのでしょうか?また魂をこの世界から解き放たれて元の世界に戻ったところでちゃんとした姿に戻れるのでしょうか?

「残念じゃが、そなたらがいた世界、地球、で今そなたらがどのように扱われるかこの世界では知る由もない。つまり、召喚した際に元の世界でどのようになったか、また魂が帰った時に地球側でそなたたちがどのようになったかを確かめる術がない。フランツも言ったとは思うがわしらの勝手で召喚したところ、儂らもそう多くは知っておらぬのだよ。情報を秘匿した前国王がいれば少しはわかったかもしれないが」

 途中まで本当のことを言ったみたいだが、概要は嘘八百だな。が、これ以上突っ込むのは藪蛇になるか。

 そもそも俺にはこの場での発言権がないのだから、追及することもできない。

 まぁ優希姉達は少し疑わし気な目線でフランツを見ているし、今後フランツもそう簡単に好き勝手はできないだろう。


「さて、おぬしの聞きたいことのもう一つ。召喚した理由についても答えよう」

 そういうとフランツは長演説を始めた。本当に長くてうんざりしてしまったが要点をあげるとこういうことだ。「魔王が5年前から生まれ、」「この2,3年で魔王は魔族の軍を強化し多民族の脅威となり」「この国も魔族軍の脅威にされされており」「戦力の大幅な増強および元凶の魔王を討伐するため、古き伝承にある勇者が必要となった」

 うん、これだけのことを話すのにフランツの生い立ちや魔族軍とフランツの激戦などの大スペクタクルな物語は必要なのだろうか?てか魔族軍の激戦のあたりハロルドの笑顔が引きつってたぞ。絶対作り話だろ。

「なんか話を聞くだけで精力をごっそり持ってかれたわ…」

 げっそりした顔でそうつぶやく優希姉。

「さて、おぬしたちが知りたかったことも答えたことじゃし、こちらの知りたいことも答えてもらおうかのう」

 何を聞かれるのか警戒して身構える恵美さん。

「そんなに警戒する必要はないぞ。なに、『エルツァーレンカルテ』でおぬし達の称号を調べるだけじゃよ。本当に勇者が召喚できたのか調べなくてはならぬからのう」

「『エルツァーレンカルテ』?」

 フランツは1枚の紙を取り出す。やはり出てきたかエルツァーレンカルテ。

 こいつは使用した者の本名・種族・性別・年齢・称号などを表示することのできるカードだ。

 また本人が否認しなければ所持するアビリティや能力値も表示する事もできる。

「この紙のことでな。その人の本名・種族・性別・年齢・称号・『能力』を表示できるカードじゃ。結構値の張るものじゃぞ?もちろん今回はこちらが知りたいだけじゃからタダで使っていいものじゃぞ」

 うん、フランツの奴さりげなく『能力』を付け加えてきやがったな。本来この世界の人は能力表示を否認して相手に能力は見せない。この世界でも個人情報とは非常に大事だからな。

 「否認すれば表示しない」ということは、最初に『能力を表示するもの』と誤認させて能力を表示させてしまえばいいだけだ。

 確かに、「能力を表示する」というのは嘘ではない。ミスリードを狙ったか。

「そのカードは能力も表示するのですか?私たちとしてはそこまで付き合いのない方に手の内をあまりあらわにしたくないのですけれど…」

 流石恵美さん、うまくフランツの思惑を外したな。フランツへの疑念を植え付けておいて正解だった。

 慌ててフランツは能力の表示を隠せることを話した。そりゃそうだよな、旅を始めればいつかバレる。

 個人情報に無頓着なら、フランツがミスリードを狙ったことなんて覚えてないだろうけど、「見せたくない」と言っているのを騙して見たらバレた時に発生するデメリットが大きすぎる。

 さらにフランツは確認するのは称号だけでいいと譲歩し、俺たち4人にエルツァーレンカルテが配られた。


 そうそう、この世界では日本で主流なゲームの能力値とは表示が違うんだ。

 日本のゲームでは普通はHPやらMPやら素早さがあるわけだが、この世界にはそんなものはなく、体力・膂力・魔力・精神力になる。

 ・体力 :HPと行動許容量に当たる。HPは生命維持。行動許容量は持久力みたいなもんかな?

 ・膂力 :筋力の基礎。素早さや攻撃力、物理防御に当たる。種族や戦闘スタイルにより割り振られる

 ・魔力 :MPと魔力にあたる。魔法の威力または発動回数に関係する

 ・精神力:魔法防御(抵抗)にあたる。他にも毒などの状態異常の抵抗力が高くなる


 一般的な平均能力は、市民が体力100膂力50魔力15精神耐久力25で、下級兵士でも、魔法士(いわゆる魔法使い)なら体力100膂力50魔力150精神抵抗力100、騎士なら体力200膂力100魔力30精神耐久力70ぐらいだ。

 さて、どんな能力になっているやら。俺的には魔力チートがいいなぁ。



名前:   キョウスケ=カガミ(火神 恭介)

種族:   異世界人(ヒューマン)

性別:   男

年齢:   5歳

称号:   世界を渡るもの、探索者

アビリティ:情報保存アーカイブ)並列思考(グライヘンツァイト)鑑定眼(ベメルケ)情報共有(アンタイル)

体力:   50

膂力:   25

魔力:    0

精神耐久力 10


…へっ?

恭介が勇者なんて誰が言った。

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