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盗賊の逆襲

「本当に良かったのか?」


 翌日、村の中央広場にてファーレンベルクと共にいた俺にヌーアがそう質問した。


「何がですか?」


「いや、頼んだ俺が言うのもなんだが、俺たち村の事情に首を突っ込んでよかったのか?」


「……今更ですね」


 もうすでに巻き込まれている。

 ……というか、ほとんど自分から首を突っ込んだといってもいいだろう。

 そんな状態で今更恐縮されても、といった感じである。


 さて、それはともかく、まずは情報収集だな。

 まず敵の概要を知らないとな。

 

「ヌーアさん。相手の盗賊団ってどのくらいの規模なんです?」


「ヌーアでいい。

 敵の数か。数が多いのは間違いないが…具体的には分からん」


「具体的には分からない?

 それは敵の総数が?」


「ああ。連中はこの辺り一帯を縄張りにしてるんだが、全員で総攻撃をすることなんてまずないからな。

 西の山に根城があるんだが、地の利がある上にいつもかなりの数が籠城しているせいで騎士団の奴らも梃子摺ってやがるんだ」


「近くの、山?」


 ヌーアにそう言われ、俺のおつむに『先手必勝』という単語が過る。


「おい。攻撃を仕掛けようなんて思うなよ?

 連中は根城を改造しまくって砦みたいにしてやがる。

 いくらそいつでも、普通に突っ込めばどうなるか分からんぞ?」


 が、それを見切られたようにヌーアからそう釘を刺された。


「いや、さすがに俺もそこまで無謀じゃないですよ?」


 ファーレンベルクの力だってまだよく分からないのだ。

 一度羽ばたいて盗賊どもを追い払っただけで本陣突撃なんて無謀な真似するわけがない。


 いや、ヌーアに止められなくてもしなかったよ?

 ……たぶん。

 

 それに今の俺の役目は村の中央での待機だ。

 

 獣人たちの中には鼻や耳が効く連中もいるらしいので、見張りはそのグループが担当している。

 ファーレンベルクに乗って上空から監視しようかと思っていたのだが、獣人たちは敵の襲撃を察知するくらいなら任せろと言っていた。


 正直気を張りっぱなしというのもしんどいので、現在俺は絶賛待機中というわけである。


「それにしても、クウヤ。お前相当変わってるな」


 ふと、ヌーアの奴が俺にそんなことを言ってきた。


「何がです?」


「人族が獣人の俺たちに手を貸すってことがだよ」


「それってそんなにおかしなことですか?」


 ヌーアの質問に、俺はそんなふうに返答した。

 が、そんな俺の解答に、ヌーアは突然超が付くほど怪訝な目を向けてきた。

 何というか、こう、手を洗わずにトイレから出てきた奴を見るような目つきだ。


「……俺、なんか変なこと言いました?」


「……お前、自分で言ってて違和感に気が付かないのか?」


 おんや?

 もしかして早速異世界カルチャーショックが発生?

 

 民族の壁は厚い。

 こういうことは早いうちに修正してしまわないと面倒なことになりかねないな。

 

 考えろ。

 こんな時のために漫画や小説の知識をフル活動させるんだ!


「俺は山奥で生まれ育ったんだ。

 だから世間の常識に疎いんだよ」


 王道こそ常道。

 無難な言い訳だが、恐らく悪くはないだろう。


 いや、別に他の言い訳が思いつかなかったわけじゃないのよ?


「そうなのか?

 ならそいつはなんなんだ?」


 そう言って、ヌーアはファーレンベルクを指さした。

 ……さて、どう言い訳しようか?


「……企業秘密で」


 結論。思いつかなかった。


「秘密、か。まあ仕方ないな」


 が、ヌーアの返答は悪いものではなかった。

 多分信頼が-1だが、まあ下手にこじらせるよりはましだろう。


「まあそういうわけで、俺は世間一般常識に疎いんだ。

 獣人族と人族ってのは仲悪いのか?」


 そんな俺の質問に、ヌーアは一言告げた。


「大半の人族は俺たちのことを奴隷としか思っていないもんさ。

 この辺りは税が高いだけだが、少し西の方へ行くと悲惨なもんだぜ」


 そういうと、ヌーアは少し遠い目をしていた。


「獣人が差別されるのが普通なんですか?」


「……そんな質問が出てくるって、お前どこで生まれ育ってんだ?」


 何やらヌーアが俺の方を痛い子を見るような目で見てきた。

 先ほどほど酷い目つきではないが、少々心外である。

 俺はきちんと手を洗うぞ?


「まあ、見ての通り普通の育ち方はしてませんよ」


 そう言って俺は隣で寝転がっているファーレンベルクの咽を撫でた。

 この世界で見れば普通の育ち方はしていないので間違ったことは言っていない。


「まあ、そりゃあ見れば分かる」


「……その返答は酷い」


 そんな会話をしていると、突然ファーレンベルクが何かに気づいたように首を上げた。直後、狼の遠吠えが聞こえてきた。


「敵が来たらしい」


「分かるんですか?」


 ヌーアの一言に俺はそう問い返す。


「俺たち狩人の間では獲物を見つけた時にああやって合図する」


「なるほど」


 そんな方法では獲物に気付かれると思うが、獣人ならばそれもありなのか?

 狼の狩りはそうだと聞くし、もしかして獣じみた身体能力でもあったりするのだろうか?


 そんな疑問を抱きながら、俺はファーレンベルクにまたがる。

 打ち合わせでは獣人族の見張りが山賊を見つけたら知らせるという話だったが、どうやらその方法がこれらしい。


「クウヤ。盗賊どもの相手を頼む」


「了解。ファーレンベルク!」


「クルル」


 俺の指示に、ファーレンベルクは先ほど声の聞こえたほうに向かって飛んでゆく。

 何とも賢くて頼りになる相棒である。


 ファーレンベルクに乗って飛ぶとすぐに敵影が見つかった。

 数は…50くらいか?


 昨日が20弱くらいだったので、かなりの人数が押し寄せてきているように見える。

 ヌーアの話によると、盗賊団は常にかなりの数で籠城しているらしいので、あれでもまだ全軍というわけではないのだろう。


 なるほど。

 ただの盗賊団と呼ぶにはかなり規模が大きすぎるな。


 それに対し、獣人たちは村を取り囲むように見張りを出しているため、相手をするのは2人だけ。

 いくらなんでも心もとない。


「急ぐぞ」


「ピュア!」


 俺の指示にファーレンベルクは大きく羽ばたいて増速する。

 見る見るうちに盗賊たちが近づいていく。


「ヒ!」


「ば、化け物だ!」


 昨日とほとんど変わりない反応をしてくれる盗賊団の皆様。

 ファーレンベルクに指示して爆風を起こしてみたところ、見事に仲良くひっくり返っていた。


 しかし悲鳴を上げずにファーレンベルクの爆風を伏せて回避した盗賊がいて、そいつらが村の方に向かって駆け出していた。


「ヤバイか?」


 その数名の盗賊連中に村の獣人が二人で対峙する。

 援護したいところだが、下手に体当たりでもさせると村人たちの方が危ない可能性がある。

 しかしこのままだと……。


 バキィ!

 

「……え?」


 直後、そんな渇いた音が響くと共に盗賊が吹っ飛んでいた。

 見れば二人の獣人がものすごいスピードで盗賊どもに肉薄し、素手で殴り飛ばしている。

 何やら「腹が減ってなけりゃあお前らなんか問題ねーんだよ!」とか言う叫び声も聞こえる。


「援護は…いらなそうだな」


 なんか二人の獣人が見事に盗賊団の連中をしばき倒していた。

 初めの50人が束になってこられるとやばかっただろうが、ファーレンベルクが掻き乱したおかげで今は一対一の連続となっている。


 そのせいで盗賊団の連中は二人の獣人にいいようにやられているのだ。


 ……身体能力がスゴイな。

 素人目に見ても山賊どもとは動きが違う。

 獣人ってみんなああなんだろうか?


 数分後、屍累々と言った状態を造り上げた二人の獣人の元に降り立った。


「大丈夫でしたか?」


 と声をかけてみると二人ともこちらを向いてニコニコしながらやってきた。


「ああ。あんたが山賊どもを蹴散らしてくれたおかげで、楽に倒せた」


「まあ、あの程度なら正面からぶつかっても倒せたでしょうが」


 ……マジですかい。

 さっき腹が減ってなければどうとか言ってたが……もしかして獣人族ってのは全員あんな身体能力を持ってんのか?


「しかし助力がなければ梃子摺っていたのは間違いないでしょう。

 ありがとうございました」


 と、礼儀正しい方の獣人がそんなことを言って俺に頭を下げてくる。

 いやいや、盗賊を蹴散らしたのはファーレンベルクで、その後各個撃破したのは君たちだから実質俺は何もやっていないに等しいのだが……言わぬが花か?


「こいつらはどうするつもりですか?」


 俺は盗賊どもを指さしてそう質問する。


「あとで村長と相談しますが、おそらく地方軍に引き渡すことになるかと」


 そう言われて俺はなるほどと頷いた。


「なら、こいつらの事は任せても?」


「勿論。恩人にこれ以上の面倒事を押し付けるわけには……」


 事後処理を丸投げしようとする俺に獣人二人が快く応じてくれた……と思った時、村の方から再び遠吠えが上がった。


「あれは?」


「……どうやら村が襲われているようです」


「村が襲われてるだって!?」


 盗賊団はこれで全員じゃなかったってことか!?

 

「クウヤ殿、村をお願いできませんか?」


「…分かりました。こいつらはお願いします」


「お任せを!」


 そう言って俺はファーレンベルクに指示して村の方へ飛んだ。


 さほど離れているわけではなかったので、あっという間に村の中に入れた。


 が。


「うお!?」


 突如、こちらに向けて矢が飛んできた。


「危なッ!」


 とっさにファーレンベルクが体勢を入れ替えて避けてくれたので当たらなかったが、そうでなければ当たっていただろう。

 矢の飛んできた方を確認すると、そこには先ほどの一団と同じくらいの数の山賊団がいた。


「あれは……」


 しかもたちの悪いことに村人を数名人質に取っている。

 おまけにこちらを向いて人質に武器を突きつけている。


「……止まれ、ファーレンベルク」


 俺の指示に従い、ファーレンベルクはその場で羽ばたきながら待機した。


「おいお前、そんなところにいないで降りて来い!」


 人質に武器を突きつけている盗賊が俺に向かってそんなことを言ってきた。

 こちらに見えるように刃物を光らせているのを見て、俺はやむなくファーレンベルクに高度を下げるように指示を出した。


「降りろ!」


 そう怒鳴られて俺はファーレンベルクの背から降りる。


「……珍しい魔物に乗っていやがるな。あれはなんだ?」


「…ファーレンベルクだ」


 レンシアは霊獣と呼んでいたから魔物ではないと思うが、盗賊どもに言っても聞く耳は持たないだろうと思いそのまま名前を教える。


「ファーレンベルク…聞かねー名前だな。高く売れそうだ。やれ!」


 親玉らしいそいつがそんな指示を下すと、周りの連中が一斉にファーレンベルクめがけて弓を構えた。


「な、おい、何やってるんだ! やめろ!」


 おれがそう叫ぶのもむなしく、次から次へと矢が放たれ、ファーレンベルクの体に突き刺さっていく。


「ファーレンベルク!」


「うるせーぞ!」


 騒ぐ俺に盗賊の一人がナイフを突きつけてきたため、俺はやむなく口を噤んで様子を見ることしかできなかった。

 しかししばらくしてその場にいた全員が異変を察知する。

 

 ファーレンベルクの体にはすでに数多くの矢が刺さっている。

 であるにもかかわらずファーレンベルク自体はまるでそよ風を受けているかのように涼しい顔をしているのだ。

 

 ボッ!

 

 そんな音がして、ファーレンベルクの体に刺さっている矢が燃え落ちた。

 その体には矢傷の痕一つ残っておらず、まるでダメージなどないと言わんばかりであった。


「な、なんだこいつは!」


 俺にナイフを突きつけている盗賊がそうまくしたてる。

 ンなこと聞かれてもこっちも驚いて目を丸くしている真っ最中なんだけど……

 

 というかファーレンベルクってあんなに出鱈目な回復力があったのか!?


「テメー! シカトこいてんじゃねーぞ!」


 ファーレンベルクを見ながら驚いている俺に、ナイフを突きつけていた盗賊が拳を振るった。

 頬のあたりを殴られて横転する。


「クウヤ殿!」


「騒ぐな!」


 俺の様子を見て駆け出してきそうになった村人たちを、人質を取っている盗賊が刃物をちらつかせて黙らせる。


「昨日部下共が化け物を見たとか言って半信半疑で来てみたが、こりゃ本物だな。おい! 直接ぶった切ってやれ!」


「……なんでファーレンベルクを殺そうとするんだ」


 起き上がりながら、俺は人質を取っている盗賊にそう問いかける。


「あん? こんな珍しい魔物、売れば高値になるのは間違いねー。ちまちま獣どもから金を巻き上げるよりもよっぽど儲かるってもんだ」


 俺の問いに、盗賊はそんなことを言って返した。

 儲けるために? ファーレンベルクを殺す?

 

「ふざけるな!」


「黙ってろガキ!」


 思わず叫んだ俺を盗賊が殴打する。

 

「クウヤ!」


 そんな俺をみて、近くで様子をうかがっていたヌーアが武器を構えた。


「お? やる気か?

 こいつがどうなってもいいのか?」


 山賊の一人がニヤニヤしながら武器を人質に突きつける。

 人質の表情がこわばるが、それを見てヌーアは目つきを鋭くした。


「これ以上、村の恩人に手を出させてたまるか!」


 ヌーアの一喝に、他の村人たちもそれぞれの得物を構えだす。


「殺すなら殺せ! 恩人たちを見捨てるくらいなら、お前らを道連れにしてやる!」


 それに対し、人質たちもそんなことを口にした。


「そいつは俺たちの恩人だ! 手を出してみろ! お前ら一人残らず皆殺しにしてやる!」


 人質たちに呼応するかのようにヌーアを初めとする獣人族たちが殺気立つ。

 それを見て、人質の獣人たちはお互いの顔を見合わせて頷き、唇をかみしめて目を閉じた。


(なんで…)


 なんで見ず知らずの俺のためにそこまでするのか。

 そう思ったが、もうろうとする意識のせいで体が思うように動いてくれなかった。


 村人たちの気迫に盗賊たちはやや気圧されたようだったが、すぐに陣形を組んで応戦の用意を整えた。


「人質がどうなってもいいんだな!」


「構うか! ただし、お前らも道連れだ!」


「いい度胸だ」


 リーダーらしき人物がそう言うと、人質を取っていた山賊が手にしたサーベルを振り上げる。


「だが分かってんだろうな?

 俺たちは大山賊アバンダスの精鋭だ。

 いくらテメーらでも勝ち目はねーぞ?」


 そうだ。

 ヌーアが俺に山賊どもの襲撃してきた方角を教えてからまだ時間はあまり経っていない。

 にもかかわらず、敵は獣人族の包囲網をあっさりと破ってこんなところまで攻め込んできたのだ。


 恐らくは先ほどの連中はただの搖動で、本命はこっちの精鋭部隊なのだ。


「だから道連れにしてやると言っている」


「いい度胸だな、なら死」


 ね。

 山賊のリーダーらしき男そう言いかけた時、突如飛来した何かがその山賊の側頭部を打ち抜いた。


「なん、グハ!」


 異変に気付いた他の山賊たちも次々に打ち抜かれる。


「走ってください!」


 どこからともなく響いたその声をきき、人質になっていた村人たちが一斉にこちらに走り出す。

 入れ替わるようにヌーアをはじめとした体格のいい村人たちが前に出た。


「くそ、一体、何が」


 こめかみのあたりを押さえながら山賊の一人が起き上がり、あたりを見回した。 

 そして、その視線を止めて一軒の家の屋根を凝視した。

 俺もその視線を追ってみると、その屋根の上に一人の女性が山賊たちに手のひらを向けて佇んでいた。


「お、お前は!」


 何やらありがちなセリフを吐きながら山賊の顔色が悪くなっていく。


「フィナリア様!」


 屋根の上に立っている女性を見て、村長がそんなことを言った。

 ようやくピントの合ってきた視界が、フィナリアと呼ばれた女性の姿を捉える。


 直後、俺は息をのんだ。

 屋根の上から山賊を何かしらの方法で狙撃したであろうその女性は、遠目に見てもはっきりと分かるほどに美しかったからだ。


 艶やかな白銀の長髪を伸ばし、精緻に整った顔立ちをしていて、今盗賊たちを見据える眼は透き通るような碧眼を持っていた。


「……降伏しなさい。

 私がこの場にいる以上、あなたたちに勝ち目はありません」


 人質たちが完全に解放されたのを確認し、フィナリアと呼ばれた女性は屋根から飛び降りる。

 普通であればねんざの一つもしかねないような高さだったのだが、銀髪の女性は足音ひとつ立てずに着地てのけた。


「テメー! 何しにきやがった!」


 フィナリアに、山賊の一人がそう怒鳴る。


「愚問ですね。あなたたちを捕らえるために決まってるでしょう?」


 そんな山賊に、フィナリアと呼ばれた女性はさも涼しげにそう告げる。


「ふざけんな!」


 頭に血が上っているのか、数名の山賊たちが得物を構えて駆け出した。

 それに対し、フィナリアと呼ばれた女性は腰から剣を引き抜いた。

 

「はあぁ!」


 短い叫び声が響き、山賊たちが銀髪の女性とすれ違う。

 直後、山賊たちは糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。


 ……早い。

 たぶん剣で切ったのだろうが、俺の目には全く見えなかった。


「くそっ!」


 悪態をつきながら残った盗賊どもが武器を構える。

 そんな様子を確認し、俺はファーレンベルクを向いた。

 賢いファーレンベルクは、心得たというように小さく頷き、直後、その大きな翼を広げて舞い上がった。


「クソが!」


 盗賊団の一部がそんな声をあげ、獲物を構える。

 それに対し、ファーレンベルクは。


「ピィィィイイイイアアア!!!!!」


 大きく口を開けて威嚇をした。

 耳をつんざくような威嚇に、しかし山賊団の精鋭共はやや怯んだだけで、すぐさまファーレンベルクへと駆けだした。


「させるか!」


 そう叫びながら、ヌーアをはじめとする獣人たちが追いすがる。

 その様子を眺めていた俺の元に村長や人質になっていた村人たちがやってきた。


「大丈夫ですかクウヤ殿!?」


「……何とか」


 そう言って体を起こした俺の目に、さらに別の光景が飛び込んでくる。

 武器や鎧を装備した兵士たちが、ファーベルクを襲撃しようとした山賊どもを逆に取り囲んだのだ。

 

 包囲にはヌーア達も加わっており、さすがの山賊どももその様子に顔色を悪くしている。


「捕らえなさい!」


 フィナリアと呼ばれた女性がそう叫ぶと、兵士たちはいっせいに山賊団に襲い掛かった。


「クソが!」


 それに対し、幾名かの山賊は複数の獣人と兵士を相手取っている。

 

「……あいつら、やるな」


 リーダーらしき奴と、その他数名がなかなか強い。

 おまけにうまく背中を合わせて連携を取っているようで、なかなか攻めきれない様子だった。


 他が次々と捕らえられているため恐らくは時間の問題だろうが、捕縛するのは少し手間取りそうだ。


 チャキリ。


 直後、そんなことを考えていた俺の耳に金属音が響いたかと思うと、フィナリアと呼ばれていた女性騎士が山賊のリーダーめがけて駆け寄った。


「な!?」


 直後、山賊団のリーダーらしき男が驚きに表情を歪める。

 そして、その前方にはいつの間にか先ほどの女性騎士が迫っていた。


「終わりです」


「て、てめぇ!」


 直後、あっという間に距離を詰めた女性騎士の剣が振り抜かれる。

 山賊のリーダーは幾度かその攻撃を捌いて見せたが、数合の後に徐々に手傷を増やし、10合を越えたあたりで深手を負って倒れ伏した。


「拠点防衛戦ならともかく、白兵戦で私に敵うと思いましたか?」


「お、お頭!」


「くそ!」


 残った手練れもその一撃で動揺し、その瞬間にヌーアと他の兵士たちが一撃を叩き込んだ。


「……終わった、みたいだな」


 山賊団の全員が捕縛されたのを見て、俺はドサリと倒れ込む。

 一回殴られただけなのにまだ頭がクラクラする。

 正直言って無茶苦茶痛い。

 

 この世界の連中、力強すぎだろ。


「クウヤ殿! ご無事ですか!?」


 駆け寄ってくる幾名かの獣人族を相手に、俺は片手を上げて。


「な、何とか」


 と、精一杯の強がりを口にした。

異世界に来て早速フルボッコになる主人公。

やっぱりそう簡単に活躍はできませんよね~~~


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非常に励みになっています! これからもよろしくお願いします!

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